【読書】全ページ伏線!?伊坂幸太郎の『ホワイトラビット』を堪能!って話

「海よりも壮大な光景がある。それは空だ。空よりも壮大な光景がある。それは」

「宇宙か?」

「それは人の魂の内部」彼女は笑う。

「人の心は、海や空よりも壮大なんだよ。その壮大な頭の中が経験する、一生って、とてつもなく大きいと思わない?」

伊坂幸太郎の『ホワイトラビット』の中に登場する父娘の会話だけど、いやぁ、伊坂節は健在だな。軽妙な語り口の中に人生の本質をさりげなく忍ばせてくる。
これはヴィクトル・ユゴーの『レ・ミゼラブル』の中の話を娘が父親に話して聞かせてるシーンだけど、伊坂幸太郎が書くと小難しい話もすんなりと頭に入ってくる(すんなりし過ぎて素通りしそうなぐらいww)

って事で、今回は久しぶりに読んだ伊坂幸太郎の小説『ホワイトラビット』の感想を簡単に書いてみようか。

 

 

このブログでも何度か書いてるけど、伊坂幸太郎の魅力は何といっても洒落た会話と伏線の回収。
作品には殺し屋とか泥棒とか、まぁ、ロクでもない人間も出てくるけど、彼らは凄く魅力的に描かれてる。会話文がずば抜けて洒落てるから、登場人物たちに嫌な気持ちを抱くことが無い。
そこへもってきて予想のつかない伏線の回収。バラバラのパズルだった物語に最後の1ピースをはめる事で見えてくる別な世界。伊坂マジックと呼ばれるのも大いに納得。

で、今回の『ホワイトラビット』、最初はこの本を買う予定じゃなかった。
他の本を買うために本屋へ行ったわけだけど、平積みされてるオススメのコーナーにこの本が積まれてた。
帯に書かれてる文を見て目が釘付けになったぞ。
これ・・・。

全ページ伏線!?

一文字たりとも
読み飛ばせない!

本屋にはよく行くし、新刊本に帯が付いてるのは見慣れてるけど、これほど目を惹く帯は珍しいな。

全ページが伏線ってどんな話なんだろ?

俄然興味が湧いてきた。予定を変更してこの本を買う事にした。一文字たりとも読み飛ばせないって書かれてるし、集中して読まなきゃ・・・。
さっそ読んでみた。

 

文庫本で350ページ、一晩で一気読み。
いつも通り、先に読後の感想を一言で書くと・・・

伊坂節、健在!

面白い!

人生の本質、世の中の不条理、そんなものを皮肉の利いた会話でわかりやすく表現しながら、二重三重に編み込まれた物語を綺麗にまとめてる。
物語全体に伏線が配置されていて、それを回収する技も見事(まぁ、全ページ伏線ってのは言い過ぎな気がするけどww)
伊坂幸太郎が仙台を舞台にした小説を数多く書いてる事は有名で、この小説の舞台も仙台。しかも伊坂作品には何度か登場してる黒澤も登場。この黒澤、本業は泥棒、副業は探偵という変わった人物だけど、今作では重要な役回りで登場してくるから黒澤ファンなら狂喜するかもww
この『ホワイトラビット』、どういう話なのかを文庫本の背表紙の紹介文から引用しておくと、

兎田孝則は焦っていた。新妻が誘拐され、今にも殺されそうで、だから銃を持った。母子は怯えていた。眼前に銃を突き付けられ、自由を奪われ、さらに家族には秘密があった。連鎖は止まらない。ある男は夜空のオリオン座の神秘を語り、警察は特殊部隊 SIT を突入させる。軽やかに、鮮やかに。「白兎事件」は加速する。誰も知らない結末に向けて。驚きとスリルに満ちた、伊坂マジックの最先端!

仙台で起きる立て籠もり事件を軸にして、立て籠もり犯の視点、人質の視点、警察の視点で物語は展開。これだけならまだしもその他の人間の視点も挟まれていて複雑な構成になってる。
そこへもってきて、時間軸が前後に行ったり来たりするからややこしいww
ややこしいだけに、ラストでそれが綺麗に回収された時の爽快感は格別とも言える。

 

この小説はヴィクトル・ユゴーの『レ・ミゼラブル』とオリオン座の話が多く出てきて、『レ・ミゼラブル』の中の文章だとか大まかな話の流れも紹介されてる。オリオン座にまつわる神話の話も上手くストーリーに組み込んでいて面白い。
面白いといえば、伊坂作品には魅力的な人物が数多く登場するけど、冒頭のこんな会話で早くも小説世界に引き込まれた。

「あっ、そういえばこの間、あれ読み終わったんですよ」今村が言う。

「何だ」

「『レ・ミゼラブル』っすよ。前に親分に薦めてもらったので」

「俺は映画で観ただけだけどな。だって、あれ、長いだろ」

「そうなんすよ」今村が拳を振り回さんばかりに力説した。「何冊もあったんすよ。五年かかりました」

泥棒をなりわいとしてるくせに、薦められたからといって五年もかけて『レ・ミゼラブル』を読むとか、この今村って若者は真面目なのか不真面目なのかww
こういう会話で人物の性格を描写していくのも伊坂幸太郎の上手いところだな、
もちろん『レ・ミゼラブル』を未読の人、ギリシア神話のオリオン座の話を知らなくても何の問題もなく楽しめる。

立て籠もり事件なんだから、当然、警察に包囲されるわけで、物語の見どころは「犯人はどうやって包囲網から脱出するのか?」って事になる。
この辺りのアイデアも意表を突いてた。意外過ぎる展開に、途中、「えっ!?」と声が出たし(誉め言葉だぞ)
場所も複数、時間軸は前後に行ったり来たり・・・上手く読者をミスリードしてる。
そりゃ、冷静に考えれば、この小説で書かれてるような方法は不可能だろうし、荒唐無稽の域と言えなくもないけど・・・

全然、OK!

だって・・・

伊坂幸太郎が書いてるんだから!

伊坂幸太郎の小説に写実性を求めちゃいけない。『砂漠』とか『重力ピエロ』のようにわりと写実的に書かれてるものも多いけど、伊坂作品の醍醐味は写実性じゃなくて「軽妙な会話に忍び込ませてる真理というか皮肉というかペーソス」。
誰もが楽しめる文体・文章で魅力的な登場人物がサラリと「物事の本質」を述べてるのが一番の魅力。
某大作家のように「簡単なテーマを誰も使わないような言葉を並べ立てて難しく書いてる小説」よりよっぽど為になると思ってる(某大作家ってのは言わないでおこうかww)
細々とストーリーに沿って書くとネタバレの危険もあるし(ネタバレは未読の人の楽しみを奪うと思ってる)、伏線やらトリックについて書くとそれこそネタバレになるので書かない。
今回、久々に伊坂幸太郎を読んだけど、やっぱり面白いな。
満足した一冊だった。

今作で重要な役回りを演じる黒澤だけど、これまでの伊坂作品には『ラッシュライフ』『重力ピエロ』『フィッシュストーリー』『首折り男のための協奏曲』に登場してる。どれも独立した小説なので、どこから読んでも伊坂ワールドを堪能できるはず。
本業は泥棒、副業は探偵の黒澤、今度はどの小説に出てくるのか楽しみでもあるな。
今度、暇な時にでも伊坂幸太郎の小説に出てくるお気に入りの名言集でもまとめてみようかと考えてる。

 

 

いつものバイト君の下書きチェック

バイト君
バイト君

さすが伊坂ファン、堪能されたようで

マサト
マサト

ファンじゃなくても楽しめるわ^^

バイト君
バイト君

伊坂さんの小説、いくつか映画にもなってますよね

マサト
マサト

うむ
全部観たわ^^

バイト君
バイト君

で、嫌いな大作家って誰なんです?ww

マサト
マサト

内緒!

バイト君
バイト君

だいたい判りますけどww
いつも言ってるし・・・

マサト
マサト

・・・・・・

バイト君
バイト君

ノーベル賞受賞のあの人でしょww

マサト
マサト

・・・・・・

 

誤解されないように言っておくけど、ノーベル賞って事からカズオ・イシグロと誤解されたら困るww

カズオ・イシグロは好きだからな!

そうなると川端康成と大江健三郎の二人しか残らないなww

 

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