伊坂幸太郎の書く小説が好きだ。
もちろん現代の日本を代表する人気作家だし、伊坂幸太郎のファンは日本中に数えきれないぐらい居るけど、オレだってその中の一人。
彼の小説はいろいろ読んでるし、映画化されたものは全部観てる。
伊坂幸太郎のどこが好きかって、難しいテーマを解りやすく書いてる点。普通の作家ならクドクドと難解な言葉で書きそうなテーマでも、軽妙な文体、お洒落な会話で面白おかしく書いてるからな。しかも随所に張り巡らされた伏線、これが最後に回収される時の快感ww
うん、イメージとしては村上春樹をもっと読みやすくした作家ってところか(何となく文体も似てるし)。
で、最近の事だけど無性に伊坂幸太郎の小説を読みたくなった。
ここんとこロクなニュースが無いし(新型コロナウイルス等々)、こういう時は伊坂幸太郎の小説を読んで晴れ晴れとした気分になりたい。
そんな訳で彼の小説を一冊買ってきた。
って事で、今回は伊坂幸太郎の『残り全部バケーション』を読んだ感想を書いてみようか。
伊坂幸太郎と言えば『重力ピエロ』とか『砂漠』。
オレも『砂漠』は大好きだし、あの小説の中に出てくる西嶋君の名言、「その気になればね、砂漠に雪を降らすことだって、余裕でできるんですよ」は一生忘れる事のないぐらいのインパクトを受けた。
その辺りの事はブクログにも記録してるんだけどね。
今回の『残り全部バケーション』も印象深いセリフがいろいろ出て来たぞ。
物語の展開、張り巡らされた伏線、魅力的な登場人物・・・
さすが伊坂幸太郎!
と思わせる小説だった。
買ってきたのは、文庫本・・・
小説の中身を気に入ると、表紙まで良く見えるから不思議ww
さっ、そろそろ本題に入ろうか・・・。
この小説がどんな内容なのかを書くには、文庫本の背表紙に書かれてる紹介文を引用しよう。
こんな文章で紹介されてる・・・
当たり屋、強請りはお手のもの。あくどい仕事で生計を立てる岡田と溝口。ある日、岡田が先輩の溝口に足を洗いたいと打ち明けたところ、条件として“適当な携帯番号の相手と友達になること”を提示される。デタラメな番号で繋がった相手は離婚寸前の男。
かくして岡田は解散間際の一家と共にドライブすることに。
その出会いは偶然か、必然か。裏切りと友情で結ばれる裏稼業コンビの物語。
この紹介文を読んだだけでワクワクする。
伊坂幸太郎の小説には殺し屋だとか詐欺師だとか、まぁ、ロクな仕事をしてない人物も出てくるけど、今回も裏稼業に精を出してる二人・・・。
ただね、伊坂作品に共通して言える事だけど、こういう人物たちが魅力的に書かれてる。
魅力的というか・・・
憎めない人物!
いつのまにか感情移入してる事もしばしば、しまいにはページをめくりながら応援したりww
この『残り全部バケーション』もそんな気分にさせてくれた一冊。
この小説、厳密に言うと連作短編集だ。
五章で構成されてるけど、それぞれが別の媒体で別の時期に発表されたもの(最終章だけは書きおろし)。
共通の登場人物が存在するとはいえ、最終章できれいにまとめてみせるのは伊坂幸太郎の技だな。
それぞれの短編の繋がり、読み終わって気が付く伏線・・・お見事としか言いようがない。
各章の内容をアレコレ書くのは不毛な行為だし、こういうものは実際に手に取って読んでもらうのが一番なので細かな事は書かないけど、大団円を迎える最終章は読みごたえあったな。魅力的な登場人物、クスッと笑いを誘うような情景、読者に希望を抱かせる最後の一行・・・伊坂幸太郎の技が冴えまくってる。
今回も印象に残るセリフが有ったので、少しだけ紹介しておこう。
過去のことばっかり見てると、意味ないですよ。
車だって、ずっとバックミラー見てたら、危ないじゃないですか。
事故りますよ。進行方向をしっかり見て、運転しないと。
来た道なんて、時々確認するくらいがちょうどいいですよ。
岡田君が離婚寸前の男に言う言葉だけど、う~ん、いろいろ考えてしまうような言葉だ。
「昔、俺の親父が言ってたのを思い出すぜ。『子供作るより、友達作るほうがはるかに難しい』ってな」
溝口が岡田君に言うセリフだけど、これもなかなかww
子育ても出来ないくせに簡単に子供を産む人間が多い世の中だからな・・・。
母がふと、「さっき、岡田さんが言っていた言葉、よかったよね」と漏らした。
「どの言葉?」
「レバーをドライブに入れておけば勝手に前に進む、って」
わたしは、彼女の横顔に目をやる。
「なんか、気が楽にならない?気負わなくたって、自然と前には進んでいくんだよ」
解散目前の母と娘の会話だけど、肩の力を抜くことの大切さをこうしてとぼけた会話でさりげなく表現してる。伊坂幸太郎の小説は、急にこういう核心に触れる言葉が出てくるからボサ~ッと読んでられないww
「まあ、理論上だけのことみたいですけどね。世の中のことは何でも、理論上はうまくいくんですよ」
岡田君が当たり屋の被害者に言う言葉だ。普通なら当たり屋とその被害者がノホホンと会話なんかしないだろうけど、そういう状況を創り出してしまう伊坂マジックは凄いな。もちろん、この言葉も深い・・・。
「おまえたちな、子供二人で粋がるのもいいけどな、現実を見ろっての。いいか、夢ばかり見ててもどうにもなんねえぞ。俺の知り合いは、そのうち電話も持ち歩く時代が来るぞ、なんて言って息巻いてるけど、そんなの夢物語で現実味がねえ。電話を持ち歩いてどうすんだって話だ。だろ?『もしもし、山田さんのお宅ですか?』って訊いたら、『いえ、今、家ではなく歩いております』とか答えるのかよ。おかしいだろうが。そんなに急用なんてねえよ。外で電話で喋るくらいなら、直接会いに行くっつうの。電話を持ち歩くなんて夢を見るよりは、自分の周囲の現実を見ねえと駄目だ。おまえたちの前に現われてくるのは、現実だからな」
これも深いなぁ。
子供時代の岡田君にアルバイトの青年が言うんだけど、誰もがスマホを持ち歩く現代人には胸に刺さる言葉。
たしかに現実を見ないでスマホに振り回されてるような人もチラホラ・・・。
溝口さんが口を開く。「その時は、どこかでずっとバケーションでも満喫してやるよ。俺の人生、残りは夏休みだ。宿題なしでな」
最終章の土壇場での溝口の言葉だけど、“宿題なしでな”って一言に溝口の性格というか人間性が凝縮。日々の生活に追われて息を切らしてる現代人には、残りの人生が全部バケーションなんて羨ましい限りだけど、たまにはバケーションを取る事も大事、って言われてるような気がするww
って事で、伊坂幸太郎の連作短編集『残り全部バケーション』を一気読みしたんだけど、オレの感想は・・・
大満足!
この興奮があるから読書は止められない。
まぁ、老眼が進んできたし、昔に比べたら量は減ってきたけどな(涙)
同居人の下書きチェック

これ、面白そうなのだわ^^

お前には無理だろ・・・

何で!?(怒)
読んでみたいのだわ!

お前、どんな本でも3ページで眠くなるやんか

・・・・・・

漫画だって1巻を読めないし・・・

・・・・・・

お前は絵本でちょうどいいわww

・・・・・・
オレなんか相当な数の本を読むけど、うちの同居人は本を読まない。
なにしろ最後に読んだのが高校時代に読んだ檀一雄って言うんだから恐ろしい(泣)
何年前だよ!
何年というか〇十年のレベルだろ。
そうそう、伊坂幸太郎を読んだ事の無い人のために、マサトがオススメの伊坂作品をいくつか挙げておこう。『砂漠』、『重力ピエロ』、『死神の精度』・・・この辺りを読めば伊坂ワールドの魅力にどっぷりとハマるかもだ。





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