【読書】ゲイ視点で読む村上春樹~『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』

小説家、村上春樹の熱烈なファンの事をハルキストと呼ぶそうだけど、ファンが居ればアンチも居るのが世の常・・・。
村上春樹の小説のことを「翻訳みたいな文章」だとか「中身がない」なんて言う声も良く聞く。
で、オレはどうかと言うと、まったくのニュートラル。作品によって好き嫌いはあるし、良いと思うものは好き好みじゃないものは嫌い、と言う立場。
ハルキストのように村上春樹の作品を何でもかんでも崇め奉るっていう事はしないww

単純だろ!ww

で、先日、久しぶりに村上春樹を読んだ。
読んだのは、これ・・・。

文春文庫から出てる『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』だ。
なんとも長いタイトルだけど、この小説・・・

面白かった!

色々と考えさせる部分もあるんだけど、驚いたのが「ゲイ小説」のような匂いがした事。
もちろん全編を通して「その匂い」がするわけじゃない。前半の一部分に「その匂い」が色濃く出てるだけなんだけど、これがなかなか読ませる描写。
村上春樹が書いてるんだから、そりゃ当然だけどエロ小説じゃないし、「生きるとは」というテーマに向き合ってる小説(もちろん読む人によって答えは違うはず)。

って事で、今回はバイセクシャルのオレが「ゲイ視点」で村上春樹の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を読んだ感想を書いてみようか。




この小説、テーマは何かと言うと・・・読後、俺が勝手に思ってるんだけど「生きるとは何か?」って事に向き合おうとしてる小説じゃないかと思ってる。
序盤の部分、主人公の多崎つくると恋人の会話でこんな台詞が出rてくるんだけどね。

「限定された目的は人生を簡潔にする」

この短い台詞にこの小説のエッセンスが詰まってると言っても良いような気がしてるんだけどね。
簡単にストーリーの流れを文庫本の背表紙から引用しておくと、

多崎つくるは鉄道の駅をつくっている。名古屋での高校時代、四人の男女の親友と完璧な調和を成す関係を結んでいたが、大学時代のある日突然、四人から絶縁を申し渡された。理由も告げられずに。死の淵を一時さ迷い、漂うように生きてきたつくるは、新しい年上の恋人・沙羅に促され、あの時何が起きたのか探り始めるのだった。

というような流れ。
男三人、女二人の高校生のグループ。親友と言っても良い五人のグループから突然はじき出された主人公が、16年後、あの時の理由を聞くために高校時代の仲間を一人々々訪ねる・・・。
うん、物語はそんな単純なものじゃない。
どうして主人公がはじき出されたのか、その理由は早い段階で明らかにされる。
肝心なのは、

生きるとはどういう事か?

を問うてる点だ。
村上春樹の作品らしく恋人との会話、下級生の男友達との会話、再会した同級生との会話の中に、それとなく紛れ込ませてるのがこの問いかけ。

 

 

じゃぁ、そろそろゲイ視点でこの小説をみていくとしようか。
親友と思ってたグループからはじき出された主人公は半年もの間、死ぬことだけを考えて生活していたけど、どうにか死の誘惑を断ち切って大学に復帰。そこで知り合ったのが同じ大学に通う後輩の灰田。
この辺り、小説の前半だしまだまだ主人公がグループから追放された理由は明らかにされてない。
週末には主人公の部屋に泊まりに来たり、音楽の事を語り合ったり・・・後輩の灰田と仲良く過ごす主人公の描写がしばらく続くわけだけど、これね、LGBTの人だったら感じるかもしれないな。妙に文章がウェットなんだよね。しかも仲が良すぎる。通常の男同士の仲が良いってのは違うような雰囲気なのだ。
ハッキリとした描写が有るわけでもないのに思ってしまったぞ。

この二人、ゲイ的な資質があるんじゃないか?

その時点では主人公がグループから排除された原因は明らかにされてないし、オレはこんな想像をしてた。

主人公のゲイ志向が悟られて排除されたのかな?

まぁ、これはまったくの見当違いだったんだけど、後輩・灰田の出てくる部分は相変わらずウェットな文章。

で、唐突にゲイ的な描写が炸裂・・・。
夜遅くまで灰田の父親の話をした後、主人公と灰田はそれぞれの寝床へ・・・。
この主人公、高校時代の仲良しグループの中の女の子を夢に見て夢精する事もあったんだけど、この日も夢の中にその女の子が登場してくる。
ここの夢の描写はなまめかしくて、主人公はこれまでと同じように射精してしまうんだけど・・・

しかし射精を実際に受け止めたのは、シロではなく、なぜか灰田だった。気が付いたとき女たちはもう姿を消し、灰田がそこにいた。射精の瞬間、彼は素早く身をかがめてつくるのペニスを口に含み、シーツを汚さないように、吐き出される精液を受けた。射精は激しく、精液の量はずいぶん多かった。灰田は何度にもわたる射精を辛抱強く引き受け、一段落したところで、あとをきれいに舌で舐めてとった。彼はそういう作業に手慣れているようだった。少なくともつくるにはそう感じられた。

いやぁ、ぶったまげたな。
いつもの夢精かと思ったら、まさか後輩の口・・・。

主人公もこれが夢なのか現実なのか判断できずに、そのまま朝を迎えるんだけど、これは現実なんだよね。
主人公は「自分にゲイ的な資質があるんじゃないか。それを察した同級生が自分を排除したんじゃないか」と悩んでみたり。
灰田の口に射精するなんて夢は、それこそゲイじゃなければそんな夢は見るわけないし・・・。
これは現実に起こった事で、よって灰田がゲイだってのは読者には確かな事実として提示されるんだけど、残念なのは灰田はそのまま姿を消してしまう。大学も休学して二度と主人公の前に現われない。
この辺りはオレとしては残念。

もっと主人公と灰田の描写をみたい!ww

週末ごとに泊まりに来ていた灰田と哲学やら音楽の話をしてたかと思うと、いきなり口内射精だぞ。いわゆる夜這いだし・・・。さすが村上春樹が書くだけ有って、そこらへんのエロ小説よりもエロいww
オレなんかこの部分を読んでいて、

勃起したぞ!ww

この灰田の台詞で印象に残るものがあるんだけど、

「限定して興味を持てる対象がこの人生でひとつでも見つかれば、それはもう立派な達成じゃないですか」

ここでも限定という言葉が使われてる。
最初に引用した「限定した目的」、そしてここで言う「限定して興味を持てる対象」
う~ん、人生を生き抜く上で必要な事なのかもしれないな。

 

物語はいよいよ中盤へ入るんだけど、恋人の沙羅に促されて、かつての同級生をたずねる主人公、それぞれが懸命に生きてるんだけど、主人公がグループから排除された理由はあっけなく明かされる。
まぁ、この小説はミステリーじゃないし、こんな謎解きに主眼を置いてるわけもないから、この理由云々は大して重要じゃない(主人公にとっては理不尽きわまりないものだけど)。

で、ゲイ視点でみて納得できないのが、主人公を追放した時の女性二人の行動。
主人公を含めて五人のグループだけど、主人公を除くと男二人、女二人・・・。この女性二人の行動に引きずられる形で残りの男性二人も主人公を追放するんだけど、オレの感覚だと納得できないと言うより・・・

許せない!ww

ネタバレはしない方針なんで、いつも感想文を書く時には物語の肝になる部分には触れないようにしてるけど、う~ん、主人公を追放した時に女性二人の行動なぁ・・・ゲイ的な視点でみれば「許せない」って思うんじゃないだろうか。
ノーマルというかストレートというかノンケというか、まぁ、そういう男性なら「こういう女性」「こういう理由」「そういう態度」に引きずられる事も有るかもしれないけど、ゲイの人では少数派だと思うぞ。

少なくともオレは違う!ww

仲良しグループに、もしもこんな女性が居たら嫌悪する。
こちらの方からグループを出て行くけどな。

 

 

まぁ、村上春樹がわざわざそんな人間関係の機微を書くわけもないし、この小説のテーマは「生きるとは何か?」だと思ってるんで、高校時代の人間関係だの何だの、そういうチマチマしたものは小説の付属品でしかない。

個性(色彩)を持たない事に悩んでる主人公が、いかに「生きる」かを描いた再生の物語だ。

恋人・沙羅の台詞でこんなものが有るんだけどね。

記憶をどこかにうまく隠せたとしても、深いところにしっかり沈めたとしても、それがもたらした歴史を消すことはできない。

主人公・多崎つくるが新しい一歩を踏み出す再生の物語だな。



いつものバイト君の下書きチェック

バイト君
バイト君

これはなかなか深そう

マサト
マサト

いろいろ考えさせられる小説だったな

バイト君
バイト君

そのわりにゲイ描写の部分に筆を割いてるww

マサト
マサト

あそこは興奮したのだ^^

バイト君
バイト君

・・・・・・

マサト
マサト

何度も読み返したぞ^^

バイト君
バイト君

・・・・・・

マサト
マサト

〇〇〇ーもしてしまった・・・

バイト君
バイト君

・・・・・・

マサト
マサト

・・・・・・

バイト君
バイト君

死ね!ww

マサト
マサト

・・・・・・

 

この小説、ちょっとした遊び心もあって、主人公・田崎つくる以外の主な登場人物には名前に色が付いてる。同級生のグループのメンバーの名前は赤松、青海、白根、黒埜、そして大学時代の友達には灰田・・・。たしかに途中から姿を消した灰田はグレーな存在と言っても良いかもしれない。

そうそう、主人公が元の同級生を一人々々訪ねていくんだけど、ある男友達と会った時、その男友達がまさかのカミングアウトww

こっちがゲイだったの?

ちょっとしたサプライズだった。

 

正しい言葉はなぜかいつも遅れてあとからやってくる。

 

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