【読書】貫井徳郎『我が心の底の光』を一気読み。やっぱり貫井徳郎にハズレ無し!って話

本はよく読むけどハウツー本を含めて3~4時間で一気読みする事は滅多にない。
読書以外にもやる事は多いし、本を読む事だけに時間を取っていられない。そんな訳で、オレが一気読みするのは「よほど夢中になった本」って事なんだけど、久しぶりに一気読みさせられた本に出会った。
これ・・・。

貫井徳郎『我が心の底の光』だ。
彼の小説はいろいろ読んでるけど、どれも水準以上の小説だし(ほぼ一気読みになる面白さ)、それこそ「読んで損はない作家」の一人だと思ってる。
貫井徳郎といえば現在の日本を代表する推理小説家だけど、その作風は暗くてジメジメした作風、なんて言うか「梅雨空を思わせるような小説」が多い(村上春樹とは正反対ww)。作品はミステリーが多いけど、パズルを解くような「あり得ない」トリックを使う事もないし(こういう作品も好きだけど)、どちらかと言えば松本清張のような「社会派」に近い。つまち現実の世界で起こりうる事件を題材にしてるんだけど、これが凄く推進力のある小説ばかりでたいていは一気読みになってしまうのだ。

デビュー作の『慟哭』はまさに驚天動地、衝撃のラストだったけど、それ以来のファン。
その彼の本を久々に一気読みしたので、今回は『我が心の底の光』について書いてみようか。



この小説、大きくジャンルわけすると推理小説になるんだけど、誰かが殺されて犯人を捜すスタイルじゃない。主人公の14歳から29歳までを追いながら、彼の「行動の目的」を探る物語だ。

どうして、こういう行動をするんだ?

と読者に考えさせる推理小説。
で、この主人公なんだけど、これが筆舌に尽くしがたいほどの悲惨な少年期をすごしてる。そこに触れる前に文庫本の背表紙に書かれた説明文を読んでみると、

母は死に、父は人を殺した・・・。五歳で伯父夫婦に引き取られた峰岸晄は、中華料理店を手伝いながら豊かさとは無縁の少年時代を過ごしていた。心に鍵をかけ、他者との接触を拒み続ける晄を待ち受けていたのは、学校での陰湿ないじめ。だが唯一、同級生の木下怜菜だけは救いの手を差し伸べようとする。数年後、社会に出た晄は、まったき孤独の中で遂にある計画を実行へと移していく。生きることに強い執着を抱きながらも、普通の人生を捨てた晄。その真っ暗な心の底に挿す一筋の光とは?衝撃のラストが心を抉る傑作長編。

って書かれてる。
母親が死んで、父親は人殺し・・・伯父夫婦に引き取られるんだけど、これがもう最悪な環境(泣)
とても嫌な描写が続くんだけど、ページをめくる手が止まらない(これが貫井徳郎の技!)。とてもじゃないけど、普通の人間だったら耐えられないような環境なんだけど、主人公の晄は「生きるため」に自らの心を閉ざして生活してるわけだ。

本書は六章で構成されていて、それぞれ14歳、16歳、19歳、21歳。25歳、29歳の主人公を描いてる。各章で少しずつ幼年期の事が書かれてるんだけど、これがまた想像を超える状況。
正視できないような状況なんだけど、5歳の主人公が置かれた状況は・・・

ネグレクト!

今どき児童虐待は毎日のようにニュースになってるし、そんなニュースを耳にしない日の方が少ないけど、この小説の主人も虐待を受けてる。
あれだよ、虐待って言っても殴る蹴るだけが虐待じゃない、この主人公が受けていた虐待はネグレクト
ネグレクトって何かというと・・・

育児放棄!

この母親が、またロクでもない女で幼い主人公を部屋に残して遊び回ってるわけなんだけど、この環境が主人公に与えた身体的・精神的影響は計り知れない。
物語の中で、ところどころ繰り返される幼い日の記憶なんだけど、あまりの惨さに背筋が寒くなるような感じだった。
この辺りを読んでいて思い出したのが、以前、記事にも書いたけど柳楽優弥が主演して大評判になった映画『誰も知らない』

映画「誰も知らない」はスゴイ迫力だった・・・。

この映画を観た時も凄まじいネグレクトに衝撃を受けたけど、うん、この映画の内容をそのまま小説に移し替えたような情景。
16歳、高校生の時にはパソコンをだまし取り、19歳、サラ金会社に入社した後はえげつない取り立て・・・。
普通に生活してるとお目にかかれないような描写の波状攻撃だ。

 

 

幼年期の体験、伯父夫婦のもとでの惨めな生活が主人公の心に暗い影を落としてる事は容易に察しがつくんだけど、読んでいて謎なのは・・・主人公の行動。
たとえば・・・
21歳の時、詐欺師と組んで不動産屋をハメる。
25歳の時、小料理屋の女将にストーカーまがいの嫌がらせをして男と関係を持たせる。
29歳の時、テニスクラブに出入りして会員のカバンからUSBメモリを盗み出す。

どうしてそんな事をやってるのか、最初のうちは解らない。
ただ、歯切れの良い文章に乗って読み進めるだけだ。まぁ、オレだって丸っきりのバカじゃないから、薄々は感づくぞ。

これ、復讐してるんじゃ?

だけど、ここでまた新しい疑問が湧いてくる・・・

復讐だとしたら、主人公とどんな関係があるんだ?

ここら辺はネタバレになるから書かないけど、なるほど、上手い具合にまとめてる。
自ら心を閉ざす事で自分に降りかかる苦痛をやり過ごしていた主人公だけど、彼の行動・・・オレ的にはけっこう説得力のある解答だった。

 

300頁を超える小説なんで、いろいろな人物が登場するんだけど、主人公の心を開かせようとする人物も現れる。たとえば25歳の章に出てくる同年代の男だ。主人公が小料理屋の女将をハメるために雇った男だけど、仕事が終わった後、男にこんな事を言わせてる。

よかった。過去に縛られて生きてても、辛いだけだからな。だから晄も、自由に生きればいいんだよ。おれみたいにさ

それに対して肯定的な返事をする主人公。
だけど、やはりというか・・・この男との唯一の繋がりであった携帯、そこに届いたメッセージを読んだ後、「五秒後」に消去。そして携帯も初期化して処分してしまう。
この「五秒後」ってのがなんか深いな。
消去ボタンの上に指を置いて五秒間考えたって事だろ、返事をする消去するか。
そして、普通の生活に戻る事を諦めた・・・。

 

 

最後の章で明らかになるのは、各章で登場した不動産屋、小料理屋の女将、テニスクラブの会員と主人公との関係。

なるほどね、そういう関係だったのか・・・

納得できる解答だった。
というか、この関係にも驚いたんだけど、もっと驚いたのが・・・

復讐の動機!

なるほどなぁ、この動機はアリかもな。
多分、人によっては理解できない動機かもしれないし、また別な人たちにとっては充分に理解できる動機だと思う。オレは理解できる側の人間だww
この動機が理解できる、できない・・・ってのはこの物語の本質じゃないけど、うん、世の中の「ある一定数の人」には理解される動機だと思う。

父親の殺人を除いては他に誰かが死ぬわけじゃないし、淡々と主人公の14~29歳を追った小説。
いやぁ、さすが貫井徳郎、今回も堪能させてもらった。




いつものバイト君の下書きチェック

バイト君
バイト君

さすが母校の先輩の事は褒めてるww

マサト
マサト

それは関係ない、作品を褒めてるのだ^^

バイト君
バイト君

これ、推理小説なんですか?

マサト
マサト

もちろんだ
分類するとホワイダニットになるぞ

バイト君
バイト君

ホワイダニット

マサト
マサト

犯行にいたる動機の謎を追うミステリーだ^^

バイト君
バイト君

さすが推理マニアww

マサト
マサト

お前も読め!

バイト君
バイト君

嫌です!

マサト
マサト

・・・・・・

バイト君
バイト君

僕がミステリーを読んでたら、すぐにネタバレするくせに・・・

マサト
マサト

・・・・・・

 

推理小説の分類方法はいろいろ有るけど、例えば王道の犯人当てはフーダニット、アリバイ崩しや犯行方法を推理するハウダニットなんて分け方も有名。

好きなジャンルを追い続けるのも読書の楽しみの一つだ。

 

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