【読書】話題の『三体』を読んでみた。これは語り継がれるSFなのか、それとも一過性のブームで終わるのか?って話

以前から気になってた本を読んだ。
中国のSF作家、劉慈欣の『三体』。ネットでも相当な評判になってたし、いくつかのテレビ番組でも紹介されたようで、本屋に行くと目立つ場所に平積みされてる。オバマ元大統領やFacebookのCEOや有名な映画監督が絶賛したとかで日本でもかなりの売れ行きだとか。
これだけの話題作、読んでみたいとは思ってたけど、売ってるのはハードカバー(税込み2,090円)。
この値段はオレにとってはちょっと冒険ww
話題になってるからといって、それがオレにとって満足できるモノとは限らないし・・・。買ってはみたもののそれが駄作だったら大損だろww
そんな訳でしばらく待ってたんだけどね。
何を待つかって・・・

文庫化!ww

基本的に文庫本しか買わないオレは滅多な事ではハードカバーを買わないんだけど、う~ん、待っててもなかなか文庫化される気配がない。
そうこうしてるうちにシリーズの第二作、第三作が出版。
もう待ってられない。思い切ってハードカバーを買って読んでみた。
はたして評判通りの傑作なのか、それとも一過性のブームで終わるような小説なのか・・・。

って事で、今回は劉慈欣の『三体』を読んでみての感想を簡単に書いてみようか。

 

 

この『三体』だけど、買ってきてすぐに読んだわけじゃない。
ただでさえ積読が溜まってるのに、けっこうなページ数のハードカバーが追加されたわけで、積み上げられた積読の山をみると読書欲が萎えるww
ここは気分が盛り上がるのを待つことに・・・。
いくつかの積読を消化したところで、やっと『三体』を読めるぐらいに心身ともに充実。
あらためて手に取ってみる。

帯に書かれてる紹介文は絶賛の嵐だな。

現代中国 最大の衝撃作、

ついに日本上陸

なんて書かれてるし、

驚天動地の人類史網羅SF

なんて言葉も・・・。
まぁ、帯に書かれてる紹介文が100%正直じゃない事は誰でも知ってるけど、ここまで堂々と書かれてるとさすがにワクワクしてくる。
ハードカーバーで430ページ、読み始めた。
で、読んだ後の率直な感想だけど・・・

大変でした!ww

これ、誉め言葉だからな。
何が大変って430ページを二日で読み終えるのは大変って事。
言い換えれば「それだけ一気に読ませる推進力」のある小説。
じゃぁ、一気読みさせるほどの小説、これが後世に語り継がれる小説になりそうかというと、オレの感覚では・・・

微妙!

どちらかというと、10年、20年先には「あ~、そんな小説もあったな」と言われる可能性の方が高いような気もしてる。
以下、軽くネタバレになるけど想うところを書いてみようか。

 

この小説、面白くないのかと訊かれれば、オレは迷わず「面白い」と答える。
冒頭の文化大革命(いわゆる文革)の時代の描写なんか、およそSF的じゃないけど50年前の混沌とした中国の様子が凄い迫力で描写されてる。
第二部からの現代を描いた章ではスケール感が凄い。「三体」というVRゲームの内部、そこで繰り広げられる物語もサラリと人類の文明史を追いながら知的好奇心をくすぐる。
450年後に地球にやってくる三体星人(三体文明)に対処するために現代の地球人が準備する事は・・・。
もうね、何もかもがスケールがデカくて飽きさせない展開。
VRゲームの中で描かれる人列コンピューターなんて、よくぞこんな事を考えついたと思ってしまうし、三体星人が地球侵略に向けて開始する陽子を使ったプロジェクト(智子プロジェクト)も面白い。
とにかくスケールは壮大。
それなりに説得力のある科学的背景も書かれてるし、SF小説としての観点からも十分に水準以上だとは思ってる。
じゃぁ、どうしてこの小説が後世に語り継がれるかどうか微妙だと思うのかって事だけど・・・

人間の描写がペラペラ!

これ、あくまでもオレ個人の感想だからな。
この小説は信者も多そうなのであまり悪くは言いたくないけど、他の名作と呼ばれてるSF小説と比べると何だか人間の内面が描き切れてないような・・・。
魅力的な登場人物も出てくるんだけど(警察官の史強とか引きこもりの数学者の魏成)、いかんせんそれぞれのエピソードが中途半端に描かれ過ぎ。主人公と言っても良い汪森にしても同じでイマイチ掴みどころがない(オレの読解力のせいもあるけどww)
まぁ、SF小説なので人間の内面は重視してないのかもしれないけど、じゃぁ、この小説に思想なり哲学があるかというと、う~ん、これも微妙ww
『星を継ぐもの』『幼年期の終わり』のような哲学というか思想は感じられないし、『華氏451度』のような皮肉・風刺も見当たらない。『夏への扉』を読んだ後のような清々しさも感じられない。
スケールだけなら相当なものだし、VRゲームを絡ませて描写する三体文明の成り立ちも秀逸、だけど地球に住む人間の内面描写がオレには満足できないww
そこに思想なり哲学的なものもオレには見いだせなかった・・・。
面白いんだけど、う~ん、やっぱり後世に語り継がれるかどうかとなると「?」と思ってしまう。今でも語り継がれてる名作って、どれも哲学的だったり風刺が利いてたりするものが多いからな(もっとも、この小説はスケールのデカさだけで後世に語り継がれるかもしれないけど)
思うんだけど、この小説って・・・

劇画調!ww

面白い劇画(漫画)は一気に読めるし、それこそ読者をグイグイ引っ張る推進力も有るけど、それが後世に語り継がれるかどうかは別問題。
この小説はハリウッドの映画会社が喜びそうな小説だと思ってる(実際にNetflixがドラマシリーズの製作を発表したらしい)

劇画調といえば、この小説、後半になるとトンデモSFの様相も帯びてきた。
ナノ素材で出来た髪の毛よりも細いワイヤーでパナマ運河を通行するタンカーをスライスだもんなww
50cmの間隔で張ったワイヤーで運河を通行中のタンカーをスライスするとか・・・

それこそ漫画!

だと思ってる。
原文が悪いのか訳文が悪いのかしらないけど、あっさりとタンカーがスライスされるんで読んでいて逆に驚いたぞ。
こんな場面、めったにお目にかかれる描写じゃないのに、もっと丁寧に描いて欲しかったww
とは言え、一気読みさせる面白さはあるし、オレも面白い小説だとは思うけど・・・
もう続編は読まない気がする。
SFと言えども何か心に響くものがないと、なかなか次を読もうとは思わない。

 

 

いつものバイト君の下書きチェック

バイト君
バイト君

お気に召さなかったようでww

マサト
マサト

気に入ってるぞ
退屈させないストーリーだからな

バイト君
バイト君

だけど、後世には語り継がれないと・・・

マサト
マサト

少なくともオレの心に響かないからな

バイト君
バイト君

・・・・・・

マサト
マサト

そもそも同じ話を欧米の作家が書いてたら
ここまで売れたかどうか

バイト君
バイト君

と言うと?

マサト
マサト

中国人作家が書いたっていう珍しさもあって売れたんじゃないのか

バイト君
バイト君

・・・・・・

 

いつかの記事でも書いたけど、SF小説ってのは勢いのある国の作家の本がよく売れる。
今の世の中、中国の勢いは誰も否定しないだろ。これまで珍しかった中国SFでこれだけスケールの大きな小説が出たら、そりゃ売れるのも納得。
まぁ、売れたからと言って、オバマ元大統領が絶賛したから、Facebookの誰それが褒めたから・・・それでその小説が後世に語り継がれるほどの名作かどうかは30年先にならないと答えは判らない。
てか、この小説のラスト、こんな描写がある。

西の地平線の向こうでは、雲海の中へゆっくりと沈む夕日が、まるで溶けていくように見えた。雲とひとつになった太陽の光が、空の大きな一画を壮大な血の赤で染める。
「これが、人類の落日━」文潔は静かにつぶやいた。

落日を招いたのは・・・

お前のせいだろ!ww

まさか冒頭の文化大革命の話がこういう形で繋がるとは。
超短絡的な視点でみれば、この小説は思想とか哲学どころか「一人の女の復讐劇」と捉えることが出来るかもww

 

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