【読書】皮肉の効いた傑作短篇集/筒井康隆の『最後の喫煙者』を堪能!って話

高校生の頃、星新一や筒井康隆を読んでる友達が多かった。
あの頃はオレの周りには星新一派、筒井康隆派が居て、それぞれに自分の贔屓の作家がいかに凄い小説を書いてるかを話してた(他には小松左京派とか少数ながら平井和正派やら眉村卓派なんかも居たww)
で、オレはというと中立・・・。
面白そうな本はとりあえず読んでみるってスタイルだったけど、筒井康隆も当時はかなり読んでた。
折しも筒井康隆原作『時をかける少女』が原田知世主演で公開された頃で、あの頃が一番筒井康隆が読まれていた時代じゃないかと思ってる。

って事で、今回は久々に読んだ筒井康隆の話を簡単に書いてみようか。

 

 

筒井康隆は間口の広い小説家でSF、ミステリー、エッセイ、評論と様々な作品を発表してる小説家。
近年だと断筆宣言、それに続く断筆解除なんかでも話題になってた。
まぁ、小説以外でもいろいろと話題を提供してくれる人だけど、今回、一冊の本を衝動買いした。
なにかと言うと、これ・・・。

本屋をブラブラしてる時に見つけた一冊。
何に惹かれたかというと、もちろんタイトルww
オレは自他ともに認める愛煙家。昨今は喫煙者には肩身の狭い世の中だけど、このタイトルは気になり過ぎる。
自選短篇集なのでいろいろな作品が収録されてるけど、目次を見る限りオレが高校生の頃に読んだ小説もいくつか収録されてる。
まっ、今から数十年前に読んだ小説、細かな部分までは憶えてないし久々に筒井康隆の短編を読むのも悪くない。
さっそく一気に読了したぞ。

 

この短篇集の副題は「自選ドタバタ傑作集」となってるけど、どういう文庫本なのかを背表紙の紹介文から引用すると、

ドタバタとは手足がケイレンし、血液が逆流し、脳が耳からこぼれるほど笑ってしまう芸術表現のことである。健康ファシズムが暴走し、喫煙者が国家的弾圧を受けるようになっても、おれは喫い続ける。地上最後のスモーカーとなった小説家の闘い「最後の喫煙者」。
究極のエロ・グロ・ナンセンスが炸裂するスプラッター・コメディ「問題外科」。ツツイ中毒必至の自選爆笑傑作集第一弾。

この傑作集には9篇の短篇が収められてるけど、たしかに最初の「急流」から大爆笑ww
そりゃ本を読んでクスッと笑う事はあるけど、今回のようにゲラゲラと声を出して笑う事は稀。
で、筒井康隆が凄いのは、ゲラゲラ笑わせるだけじゃなくて、短い短篇の中にも・・・

皮肉をブチこんでる!ww

「最後の喫煙者」なんか昭和62年発表の作品だけど、すでに健康ファシズムの出現を予見した秀作(最近は有名のアニメの喫煙シーンにクレームを入れた団体も居たしww)

『風立ちぬ』喫煙シーンへの禁煙学会の苦言に批判殺到!「日本刀使う時代劇もNG?」

「老境のターザン」では自然保護への、「こぶ天才」では加熱する受験戦争・教育熱への皮肉が描かれていて、筒井康隆の技の切れ味が鋭い。
ただ笑わせるだけならナンセンスでくだらない小説に成り下がるところを、巧妙に皮肉を入れてる事でゲラゲラ笑うだけじゃなく、読後にニヤリとさせる後味の良さ。

 

そうそう、後味といえば「ヤマザキ」は一風変わった短篇。
豊臣秀吉の中国大返しを扱った短篇だけど、これは高校生の頃に読んでいて再読。
ラストが「一読しただけじゃよく解からない」結末だけど、当時、この短篇を読んだ友達がしきりに「理解できない」って言ってたのを思い出した。
あらためて読んでみたけど、う~ん、これは「そういう小説」だと読者の方が開き直って読む必要があるかもww
どういう話なのかを詳しく書くとネタバレになるので書かないけど・・・。
高校生の時以来の再読といえば「万延元年のラグビー」も爆笑した。
こちらは桜田門外の変で大老・井伊直弼が暗殺された事件後を描いたもの。江戸時代に何でラグビー?と思うかもしれないけど、こちらも爆笑必至の短編(数十年ぶりに読んで腹を抱えて笑ったww)
こちらはタイトルからも分かる通り大江健三郎の『万延元年のフットボール』と混同されがちだけど、まぁ、オマージュでも何でもないんだろうなww
いつかも書いたけど、難しい言葉を並べ立てて人間だの社会だの世界だのを描く小説よりも、誰でもわかる言葉で誰でもわかるように書かれてる小説の方がオレの好み。

この短篇集はナンセンスだけで終わってないところがミソ。
現実世界を極端にデフォルメしてナンセンス化した後、強烈な皮肉を効かせてる。
ゲラゲラ笑った後、ふとニヤリとさせられる短篇集だった。

ナンセンスと皮肉が・・・

絶妙のバランス!

難しい本でもないし短編だし、一気に読んだけど大満足した。
で、うちのバイト連中にも貸してあげたんだけど、高評価とそこそこの評価、半々だったな。
やっぱり「ヤマザキ」のラストの話題、というか説明が無い部分がバイト連中の間で話題になってたけど、この手の筒井康隆の小説に細かな説明を求めちゃいけない。
「ヤマザキ」のラストで秀吉も言ってるからな。

だが、よく聞け。
あいにく『説明』はないのじゃ。
説明は、何もないのじゃ。

肌で感じるのが筒井作品。
小難しい小説じゃあるまいし、肌で感じるのが筒井ワールドだと再認識した一冊。

 

 

新人バイト君の下書きチェック

バイト君
バイト君

これ、面白いですね

マサト
マサト

だろ!?
高校の頃、むっちゃ人気作家だったのだわ

バイト君
バイト君

売れてたんですか?

マサト
マサト

当たり前!
本屋に行くとズラ~ッと並んでたわ
今でいうと東野圭吾と宮部みゆきww

 

バイト君
バイト君

・・・・・・

 

今回は筒井康隆のドタバタ系の短篇集を読んだけど、最初にも書いた通り筒井康隆は間口の広い作家。
ミステリ―の『ロートレック荘事件』は記憶に残る推理小説の傑作だし、『現代語裏辞典』は皮肉とユーモアを織り交ぜながら物事の本質を突いてるし(ビアスの『悪魔の辞典』のパロディ)、SF、ショートショートにも傑作が多い。
ジャズピアニストの山下洋輔やタモリとの交友も有名で、たしか『ジャズ大名』っていうレコードも出してたような気がする(もう杯盤だろうけど)
今回、ゲラゲラ笑った後、じわじわと効いてくる皮肉にニヤリとさせられ、最後にふと高校時代の事を思い出してちょっとしんみりしてしまったww
また、何か筒井康隆を再読しようかと思案中・・・。

 

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