【読書】これは広げすぎた風呂敷/いろいろ中途半端な『煙か土か食い物』

久しぶりにメフィスト賞の受賞作を読んだ。
メフィスト賞といえば乾くるみ浦賀和宏殊能将之等々、オレも愛読してる小説家も受賞してる公募文学新人賞。
このメフィスト賞、腰が抜けるような凄い小説が受賞してる反面、顔をしかめるような超絶駄作(蘇部健一『六枚のとんかつ』)が受賞していたり、なかなか一筋縄ではいかない文学賞ww
受賞作の出来・不出来の差が大きいってのが、この賞に関してのオレの勝手なイメージ。

はたして舞城王太郎『煙か土か食い物』はオレにどんな感想を抱かせるのか・・・
かなり期待を持って読み始めた。

って事で、今回は第19回メフィスト賞の受賞作『煙か土か食い物』を読んでの感想を軽く書いてみようか。

 

 

気分的にハラハラドキドキするような小説を読みたかったので、ネットであれこれ検索。
そこで引っかかったのが舞城王太郎『煙か土か食い物』・・・。

まいじょう?

おうたろう?

この作者の事は全然知らなかった(どうやら覆面作家らしい)
初めて聞く名前だけど、ネットでの評判は概ね好評のようだ。
レビューには「一気に読んだ」「スピード感が凄い」等々の誉め言葉も並んでるし、さすがに気になってきた。中でもオレの目を惹いたのは「圧倒的な文体」という言葉。

圧倒的な文体!?

どんなんだろ?

これは気になり過ぎる。
そんな訳で読んでみることにした・・・。
この小説がどんな小説なのか知らない人も居るかもなので、文庫本の裏表紙に書かれてる紹介文を引用しておくと、

腕利きの救命外科医・奈津川四郎に凶報が届く。連続主婦殴打生き埋め事件の被害者におふくろが? ヘイヘイヘイ、復讐は俺に任せろマザファッカー! 故郷に戻った四郎を待つ血と暴力に彩られた凄絶なドラマ。破格の物語世界とスピード感あふれる文体で著者が衝撃デビューを飾った第19回メフィスト賞受賞作。

うん、たしかに面白そうな予感がする。
さっそく読み始めて、オレも一気に読み終えた。
ただ、一気に読み終えたからと言って、オレが気に入ってるかどうかは別問題。

 

この小説、たしかに「ある意味では圧倒的な文体」と言えるかもしれないな。
「ほとんど改行をしてない」文章はたしかに圧倒的(目で追うのが疲れるww)
ページを開くと、ほとんど真っ黒に見える部分も多いし・・・。
それともう一点、米国から帰国した敏腕外科医が主人公なだけに、彼の言葉の中にところどころ英語が出てくる。
それは良いんだけど、英文をわざわざカタカナで書いてる。
例えばこういうもの・・・

マリックダズントワナゴートゥージェイル。

こんなもんカタカタナで書かれても読みにくいだけww
普通なら

Malick doesn’t wanna go to jail.

と書くところだろ。
マリックダズントワナゴートゥージェイルなんて書かれても読みにくいったらないww
まぁ、何か作者の意図が有ってそいういう書き方をしてるんだろうけど、読んでいて疲れる文体はたしかに圧倒的ともいえる。

 

文体云々は置いといて、オレ自身の率直な感想を一言で言えば・・・

中途半端!

だって、肝心な謎の肝はほとんど解明されてないし。
展開の早さ、一気に読ませるスピード感は認めるけど、読んだ後で頭の中に残るのは「?」のマークだらけww
この小説、大まかな分類をするとミステリーに分類されると思うけど、ミステリーとして読むと平均以下だと思ってる(あくまでオレの感想ww)
ちょっと理由を挙げてみようか。
福井県で連続主婦殴打生き埋め事件が発生。後頭部を殴られて生き埋めにされる事件が連続して発生してるわけだけど、主人公の母親もその被害者の一人。

犯人は誰?

動機は?

螺旋図形の謎だとか、ドラエモンの謎点字のサイン等々、いろいろと謎が提示されるんだけど、この主人公がいとも簡単に謎を解いてしまう。
簡単に解くというよりも・・・

ほとんどヒラメキ!ww

謎自体のデキは良いのに、何の根拠も流れもなく、いきなり謎の答えが閃くんだから世界の名探偵もビックリだろ。
外科医じゃなくて探偵にでもなった方が良さそうな感じさえ受ける。
なんの脈絡もなく、いきなり答えが閃くんだから凄すぎる(ぬいぐるみの謎だけは他人の知恵を借りてたけど)

 

凄いのは名探偵顔負けの閃きだけじゃない。
この主人公、格闘技も相当なもので、襲ってきたヤクザ(複数)を反対に病院送りにする腕前。
ゴロツキ連中に襲われる場面、映画『ボーン・コレクター』『ハンニバル』に作中で触れているけど、なるほど、この映画を観てる人にはオマージュが感じられるかもだけど、観てない人にはただの強すぎる外科医にしか思えないかも。
謎は次々と解くし、格闘技も強すぎる主人公・・・

スーパーマンか!?ww

まっ、この主人公にもウィークポイントはあって、それは何かというと家族。
この家族ってのが、また複雑なんだけど、あまり詳しく書くとネタバレになるので書かない。
この小説の感想は「中途半端な小説」だと思ってるけど、何が中途半端かというと・・・

風呂敷を広げすぎて

回収しきれてない!

と思ってる。
もう少しだけ理由を書いてみようか。

この小説では長々と主人公の家族の事も書かれてるし(国会議員の父、東大出の長男、失踪してる次男、小説家の三男)、主人公の高校時代の友達も出てくる。
ロクでもない家族の歴史も延々と語られてるし、何十年も前に起こった密室での首つり自殺についても書かれてる。
主人公家族のロクでもない想い出、高校時代の兄弟の狂乱ぶり、政敵からの襲撃、祖父の自殺の謎・・・あれこれと書かれてるけど・・・

そもそも・・・

連続主婦殴打生き埋め事件

犯人の動機・目的は何なんだ?

これがクリアにされてないのがオレの好みじゃない。
事件の実行犯は判明するし、それなりの結末を迎えてはいるけど、この実行犯の動機があやふや。
黒幕の存在も匂わせてるけど、その黒幕の目的には触れられていない。
数十年前の密室での祖父の自殺についても中途半端。
ミステリ―の分野では「密室もの」は人気ジャンルだけど、これもほとんど手品なのような仕掛けで強引に解決してる(もはやイリュージョンかも)
主人公を襲ってきた連中の目的もハッキリわからない・・・。
いろんな謎を提示して読者を惹きつける内容は凄いとは思うけど、ミステリーとしては大いに不満。
風呂敷を広げるだけ広げて、回収してない印象の小説だった。

 

まっ、ほぼ改行のない文章、英文をカタカナで書いてる手法、たしかに「ある意味では圧倒的」ではあった。
興味深い謎、早い展開、家族の物語、スピード感は一気に読ませる推進力は有るけど、やっぱり中途半端な印象しか残らなかった。
何でもかんでもすぐに閃く主人公、オレにはスーパーマンに見えてしまった(ケンカも強いしww)

 

 

いつものバイト君の下書きチェック

バイト君
バイト君

案外と辛口ww

マサト
マサト

正直な感想だわ

バイト君
バイト君

メフィスト賞の受賞作でしょ?

マサト
マサト

あれは当たりハズレが多い

バイト君
バイト君

乾くるみとかは褒めてたのに

マサト
マサト

まぁ、推進力だけはある小説だったな

バイト君
バイト君

・・・・・・

マサト
マサト

ミステリ―としては☆2個

バイト君
バイト君

たったの2個ww

マサト
マサト

だから正直な感想だっての!

バイト君
バイト君

・・・・・・

 

これから先、よほどの評判作でもない限りこの作者の小説は読まないだろうな。
いつかも書いたけど、近頃は文学賞が多すぎ。
〇〇賞だとか△△賞・・・、まぁ、出版社も本を売るのが仕事だし、いろいろ話題を作って売りたいんだろうけど。
ミステリ―の新人賞といえば江戸川乱歩賞ってのが有名だけど、あれの受賞者って「甲子園の優勝投手」みたいなもんだと思ってるぞ。
注目はされるけど、誰もが大成するわけじゃない。

 

【読書】久しぶりに本格ミステリ―/有栖川有栖の『孤島パズル』を堪能!って話
8年ぶりに有栖川有栖を読んだ。デビュー二作目『孤島パズル』。久しぶりの本格ミステリ―だったけど、クローズド・サークル、密室殺人、アリバイ崩し、ダイイング・メッセージ等の要素が詰め込まれた、まさに正統派の推理小説だった。読んで大満足の一冊!
【読書】浦賀和宏さんが41歳の若さで逝去/積読の中から『彼女のため生まれた』を読んでご冥福を祈る!って話
好きな作家、浦賀和宏さんが41歳の若さで亡くなられたそうだ。オレが知ったのは亡くなってから1年後...。ご冥福を祈る意味でも何か一冊読んでおこう。積読の中から『彼女のため生まれた』を引っ張り出してきて読了。どんでん返しの連続に大満足した話。
あまり知られてないけど面白いミステリーを紹介してみる!って話
あまり有名じゃないけど、なかなか面白いミステリ―をいくつか紹介してみる。定番の「十角館の殺人」やら「葉桜の季節に君を想うということ」以外にも、面白いミステリーはたくさん有るって話。
「六枚のとんかつ」・・・不愉快きわまりない本だった。
実にくだらない本を読んでしまった。「六枚のとんかつ」だ。メフィスト賞の受賞作ってことなので読んでみたけど、小学生の作文レベル。これを選んだ選考委員の神経を疑う・・・。
「その女アレックス」は、予想をはるかに超える結末だった!
「その女アレックス」を読んでみた。これ、かなり面白い小説だった。意外な結末も好感。たまには、こういう終わり方のミステリーも良いな!
【読書】折原一の技が冴えまくる『ポストカプセル』~15年前の手紙が届いたら~
15年前に出された手紙が届いたら・・・今回はそんなポストカプセルを題材にした折原一の傑作について書いてみた。15年も経てば手紙を出した方も「手紙を出した事」を忘れてるし、受け取った方も何が何だか分からず困惑。そんな騒動を描いた折原マジック。

 

コメント

リンク

にほんブログ村 オヤジ日記ブログ 戦うオヤジへ

にほんブログ村 グルメブログへ

にほんブログ村 競馬ブログ 競馬予想へ

f:id:masa10t:20181113062414j:plain
error: 右クリックできません