昔から本を読む事は好きなんでね、いろいろ読むんだけど、中でも好きなのはミステリーだ。推理小説なんて呼ばれるものだけどね。
ミステリ―にも様々なジャンルが有るんだけど、本格、倒叙、クローズド・サークル、社会派、警察、ユーモア・ミステリー・・・まぁ、いろいろ有る。
どのジャンルのミステリーにしても、ラスト、真相が明かされた時、
あ~、そうだったのか!
って、綺麗に騙してくれると快感なのだ。
ミステリーの中でも好きなのは叙述ミステリーというジャンルなんだけど、日本だと折原一が有名だな。
で、今回、読んでみたのは、これまた好きな作家の一人、浦賀和宏の『眠りの牢獄』だ。
けっこう以前から積読になってたんだけど、今日、ちょっと時間が空いたので一気に読んでみた。
って事で、今回の話は浦賀和宏の『眠りの牢獄』の話。
この本、けっこう前なんだけど、本屋で見かけて迷わず買った。
そりゃ買うでしょ、帯にはこんな風に書かれてるんだし・・・。
体験せよ
浦賀トリック
ゆがんだ愛情が絡みあう
予測不可能な結末。
これまで何度も浦賀トリックに「気持ちよく」騙されてるオレとしては、
今度はどうやって騙してくれるのか?
って期待で胸が膨らむだろ。
ここで、ちょっと浦賀和宏の紹介をすると、オレの印象は・・・
平気でタブーを書く作家!
近親相姦やら同性愛、カニバリズム(食人俗)なんかを平気で書いてるし、特定の層(たとえばオタク)への強烈な罵倒なんかもサラリと書いてる。
デビューは19歳の時だけど、凄い才能を持ってる事は間違いない。
この辺りの事は、以前にも書いたな・・・。
で、今回の『眠りの牢獄』の内容だけど、まずは背表紙から軽く引用してみようか。
階段から落ちた恋人・亜矢子は意識不明のまま昏睡状態に陥る。それから五年、浦賀は亜矢子の兄に呼び出され、友人の北澤・吉野と共に階下の地下室に閉じ込められてしまう。解放の条件は彼女を突き落とした人物自身の告白だった。
外部で進行する「代理殺人」の本当の目的とは何か。
驚愕の結末は予測不可能!?
この小説、中盤までは二つの物語が平行する形で進められる。
一つは、亜矢子が階段から転落した時に居合わせた浦賀、北澤、吉野の三人の物語。
地下室に閉じ込められた三人の様子を描いたものだ。
もう一つは、男にフラれた不細工な女の復讐劇。インターネットの掲示板に自分を捨てた男への罵詈雑言を書き連ねていたところ、ある人物から「代理殺人」の提案をされて・・・。
この二つの物語、最初のうちは接点がまるで見えない。
これ、どうやって繋がるんだ?
中盤までは、その一点で物語を牽引してると言ってもいいな。
でね、この「代理殺人」をやろうとする女なんだけど、これが浦賀作品では特徴の・・・
嫌な奴!
浦賀和宏の小説って、たびたび嫌な人間が登場するんだけど、今回も例外じゃなくて、この女が、ホント、気分悪いww
もうね、やってる事はストーカーまがい。
思考なんか、ほとんどキチガイ。
だからね、読んでて思ったぞ・・・
この女が死ねばエエのに!
ってなww
中盤以降、地下室に閉じ込められた三人の物語と、「代理殺人」の物語の繋がりが徐々に見えてくる。
だけど、一番大きな謎、「誰が亜矢子を突き落としたのか?」ってのは謎のままだ。
そうこうしてる内に、地下室の三人の中の一人が首を吊って自殺してしまう。
残った二人は無事に地下室から出る事は出来るのか・・・。
もう、この辺になるとページをめくる手は速い。
さすが浦賀和宏・・・
次から次にページをめくらせる推進力。
この小説もダンプカー並みの推進力を持ってた。
結末まで読んで、
あ~、そういう訳だったのか!
と納得させる伏線もお見事。
今回も綺麗に気持ちよく騙されたな。
そりゃね、オレだってミステリーはけっこうな数を読んでるし、名作と呼ばれてるものはたいてい頭に入ってるから、読んでいてちょっとした違和感は感じる事もある。
あれ、ここの書き方おかしいな・・・
もしかして、これって何かの伏線か!?
なんて感じるんだけどね。
この小説だと、例えば亜矢子のセックスシーン。
ネタバレに繋がるんで、詳しくは書かないけど、このシーンを読んでいて思ったのは、
変わったセックスをするんだなぁ
って思った。
うん、特別変わってるわけじゃないんだけど、普通の描写と違うんだよな。
で、最後にすべての謎が解明された時、このセックスシーンのおかしな書き方にも納得がいった。
なるほど・・・
だから、ああいう書き方しか出来なかったのか!
って納得するわけ。
この辺は、上手いんだよなぁ。
もう一つ、上手いなぁと思わせる伏線を紹介しておこうか。
ネタバレにならない程度にだけど、ちょっと文章を引用・・・。
中学校の卒業式の日、なんと僕は吉野に告白されてしまったのだった。
「吉野がそんな趣味だとは知らなかったよ」
と僕はうまくはぐらかそうとした。だけど吉野は真剣だった。とても真剣な眼差しで僕のことを見つめていた。その視線が痛くて、僕は顔を背けた。
断るしかなかった。
オレなんか、ここを読んで、思ったからな・・・。
おっ!
これって、ゲイ要素のある小説か!?
それならそれで、別な意味で嬉しいけどww
この部分の描写も結末を読んでしまえば、
上手い!
としか言えない。
こういう小さなところから読者の先入観を作者の望む方向へ誘導していくんだよな。
作品のインパクトで言えば、『彼女は存在しない』や『こわれもの』に及ばないけど、一気読みさせる推進力は充分に持ってる小説だった。いやぁ、今回も浦賀作品・・・
堪能したぞ!
浦賀作品以外で、ラストのインパクトが強烈な小説を二つだけ紹介しておこうか。
まずは我孫子武丸の『殺戮にいたる病』だ。
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ラストを読んだ時、さすがのオレもベッドから飛び起きた超傑作。
エログロなんか全然平気、って人には、絶対的にオススメ。
これは100年先にも残したいミステリーだと思ってるww
もう一つは、これは、今じゃ定番と言っても良いと思うけど、歌野晶午の『葉桜の季節に君を想うということ』だ。
- 作者: 歌野晶午
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なんと言っても、主人公の成瀬将虎が魅力的。
この小説のラストもすごいインパクトだけど、ラストが綺麗なんだよな。
思いもかけない方法で騙されてるんだけど、綺麗な結末で読後感も申し分ない。
う~ん、他にも貫井徳郎の『慟哭』とか綾辻行人の『十角館の殺人』とかいろいろ有るけど、こんなもん、全部紹介してたらキリがない(泣)
今回はミステリーで綺麗に騙されるのは・・・
気持ちイイ!
って話だ。
いつものバイト君の下書きチェック
バイト君:この『眠りの牢獄』は☆いくつなんですか?
う~ん、☆3個半だな
バイト君:褒めてるわりに点数が辛いww
仕方ないだろ
我孫子さんやら折原さんの上質なミステリ―を読んでると、どうしても基準が上がってしまうのだわ
バイト君:まぁ、本を読む事は良いことです^^
エラソーに言うな!
近頃は大学生でも本を読まない人間が増えてる
お前も、最近は読んでないだろ!
バイト君:それ、昨日の面接の子でしょ!ww
あんなの論外だわ!
趣味欄に読書って書いてるから、どんな本を読むのか聞いたら・・・
ヤンマガって・・・
あれは漫画だろ~が!
バイト君:あれにはウケましたww
いつから漫画を読む事が読書になったんだ!?(怒)
バイト君:だから・・・
なんで僕に怒るんですか!
・・・・・・
いつかも書いてるけど・・・
オレは本を読まない子は好きじゃない!
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