【読書】ワクワクしながら読んだけど後半で尻すぼみだった『証し』/背表紙の紹介文はアテにならない!って話

近年は出版業界もいろいろな賞を作って本を売る事に熱心。メフィスト賞本屋大賞ぐらいなら知ってる人も多いだろうけど、その他、聞いた事もないような賞が乱立してて、オレなんかどれを読もうか迷ってしまう。
もっとも〇〇賞を獲ったからと言って、それがオレの好みに合うかどうかは別問題。
さらに言えば本屋大賞なんて著者とか出版社の事前運動もあるらしいじゃないか・・・。そりゃ本屋大賞を受賞ともなれば売り上げ増は約束されたようなもんだけど・・・。〇〇賞受賞なんて帯に書かれてる本だって、何でこんなのが受賞なんだ?って思った本は多い。
そんな訳であまり評判になってない本、出版社もお金をかけて宣伝していない本、そういう本も読むようにしてる。そんな中にキラリと光る良作が眠ってる事もあるし・・・。
この前、本屋の片隅で矢口敦子の『証し』を手に取ってみた。背表紙の紹介文を読んでみると、なかなか面白そうな一冊。

って事で、今回は『証し』を読んでみての感想を簡単に書いてみようか。

本屋の目立つ場所に平積みされてる本は〇〇大賞受賞とか△△ベストワンなんてPOPが飾られてるし帯にもデカデカと宣伝文句が並んでる。
何度も騙された経験があるから、そういう場所はとりあえずスルー(よほど気になってる本は買うけど)。オレが向かうのはあまり知られてない作家、聞いた事もないような小説が並んでる「その他大勢」のコーナーww
この『証し』ってタイトル、何となく気になったから手に取ってみた。
背表紙の紹介文には、

過去に金のために卵子を売った木綿子と、不妊に悩みその卵子を買った絹恵。二人の「子供」である十六歳の恵哉が、一家四人惨殺事件の嫌疑をかけられ自殺した時に、彼女達は出会う。息子の無実を信じる木綿子は真犯人探しに乗り出すが、絹恵は懐疑的だった・・・。犯人が現場に残した「VS」の謎が解けた時、二人は恵哉の心の叫びを知る。長篇ミステリ―。

って書かれてる。
卵子を売るとか買うとか、これは一昔前に騒がれた代理母とか試験管ベビーを扱ったものかもしれない。それに殺人事件が絡んで、しかも犯人は自殺して・・・素直に思ったぞ。

面白そう!

買ってみることにした。
面白そうなので積読になる前にさっさと読んでしまおう。
読んでみた・・・。

で、読んでみた感想なんだけど、なるほどな、なかなか疾走感のある展開で面白い。
たしかに面白いんだけど、それは・・・

途中まで!ww

まぁ、面白いのは途中というか後半の入り口ぐらいまでだな。
これね、途中までは読者を引っ張る推進力が有る。一家四人惨殺事件の真犯人は誰か、本当に恵哉が犯人なのか、自殺した原因は何か、二人の母親の関係はどうなるのか、VSの意味は何か、密室で見つかった死体(私立探偵)は他殺なのか自殺なのか・・・等々、いろいろ興味が尽きない。この小説がどんな着地を見せるのか読み進んでると、だんだんとおかしな方向に進んで行くんだよな。このおかしな方向ってのがオレの好みじゃない。

 

普段はネタバレしないように書くのがオレのスタイルだけど、今回はちょっとネタバレしながら細かく書いていこう。
一家四人惨殺事件の容疑をかけられた高校生の恵哉だけど、これね、犯行の動機が弱いよなぁ。自殺の原因は自分の出生の秘密を知ったからと思われるけど(この辺りの伏線は上手い)、子供を含めて四人も殺す動機が何だか無理やり感。ここに書かれてる理由で四人も殺したとなると、それこそキ〇ガイの類だろ。
これについては卵子を売った方の母親(木綿子)もラストで人を殺すんだけど、作中にこんな台詞がある。「ほらね。私は恵哉の母親よ。恵哉の人を殺す遺伝子は私譲り・・・」
上手いと言えば上手いけど、何かしっくりこない結末。
卵子を売った方の母親(木綿子)が雇った探偵が密室で死体となって発見される部分。密室で死体っていうと本格推理。犯人はどうやって密室に密室に入り込んで不可能とも思える殺人が出来たのか・・・その辺りを推理するのが「本格モノ」と呼ばれるミステリー。この辺りもワクワクしながら読んでたんだけどな。ただでさえ試験管ベビーのややこしい話なのに本格ミステリ―の要素も加わるなんて面白いに決まってる。で、結論なんだけど、この私立探偵、自殺だったww
いや、自殺でも良いんだけど・・・

死ぬ理由が謎!ww

直前まで意気揚々と恵哉の友人関係を調査してたのに何で自ら死ぬんだ?
これ、理由も書かれてないし読んでいて頭の中に「?」が乱舞したww
この辺りから物語はおかしな方向へ進み始めてたわけだけど・・・。
ラストなんか何が何だかって感じ。本格推理小説なんかだと最後の場面で関係者を一堂に集めて犯人を名指しするってのが昔からの定番だけど、この小説でも恵哉の同級生を集めて糾弾してる。この場面はいただけない。せっかく重いテーマの小説かと思って読み進めて来たのに、最後は散弾銃をぶっ放すドタバタ。そもそも男子高校生が中年のオバサンに抵抗できないのか、その辺りも無理やり物語をまとめにかかってるようで好みじゃない。

 

最初は不妊とか試験管ベビーとか代理母とか、そういう重いテーマにミステリ―を絡めた小説だと思ってた(途中までは物語もそういう感じで進んでた)けど、最後は尻すぼみになってちょっとストレスの残る小説。
死体に残されたVSの謎だって、パソコンのキーボードを使う人なら容易に想像がつくかもしれない。似たような謎かけは有ったと記憶してる。
不妊治療とか卵子提供とか精子バンクとか、そういうものが良い悪いは別にして、重いテーマをはらんだ設定で読者を惹き込む題材だけど、う~ん、最後は2時間ドラマの結末みたいになってしまってる。
出生の秘密を知った段階で自殺してるならともかく、警察に追いかけられてマンションから飛び降りってのもな。言い換えると、警察にバレなかったら生き続けてたって事になるんだろうか。

食材は良いのに料理人が上手く作れなかったって印象の小説だった。
そうそう、フォローする訳じゃないけど作者・矢口敦子の他の小説『償い』はけっこう読ませるミステリ―だった。こちらもクセのある人物が出てくるけど、最後まで一気に読ませる推進力のある小説。

いつものバイト君の下書きチェック

バイト君
バイト君

テーマは重そう・・・

マサト
マサト

これ、途中までは面白いんだけどなぁ
現実に有りそうな展開だし・・・

バイト君
バイト君

途中からダメ?

マサト
マサト

うむ・・・
なんか現実離れしてるし・・・

バイト君
バイト君

☆何個ですか?ww

マサト
マサト

まぁ、3個ってところか・・・

バイト君
バイト君

・・・・・・

 

ミステリ―なら最後には全部の謎を綺麗に解いて欲しいと思ってる。
背表紙に書かれてる「恵哉の心の叫び」って何だったんだろ・・・。
ちょっと辻褄の合わないとろが在るのは小説の性質上仕方ないけど、う~ん、この『証し』はオレの許容範囲を超えてた。
まっ、これに懲りずにこれからも本屋の片隅に並んでる本を手に取ってみる・・・。

 

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