幸若舞「敦盛」の一節だっけか「人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻の如くなり」ってのが有るけど、それぐらいの歳まで生きてくるとさすがにいろいろ経験してる。それこそ酸いも甘いもわかるってやつだけど、最近、特に思うようになったのが、
日本はおかしくなってるんじゃないか!?
って事。
オレが子供の頃じゃ考えられないような事件なんかが日常の茶飯事でワイドショーを賑わせてるし、テレビや新聞で取り上げられなくても「?」と感じるような出来事はたくさんある。
何でこんな風になったんだろ?って考えるまでもないんだけど、答えは簡単。
昔と今じゃ人間が違う!ww
もちろん生物学的に人間が変わったって意味じゃない。中身が変わってきてるって事。中身というか価値観というか物の考え方だな。昔の考え方や行動が全て正しいとは言わないけど、全て間違ってるとも思ってない。
って事で、今回は池波正太郎の名エッセイ『男の作法』の話を簡単に書いてみようか。
世の中には名エッセイと呼ばれるものが有るけど、今回の『男の作法』もその中の一つ。團伊玖磨の『パイプのけむり』シリーズに匹敵するエッセイだと思ってる。
うちの仕事場では大学生のアルバイトを数人使ってるけど、彼らが大学を卒業する時には必ずこの本をプレゼントしてる。ここに描かれてるような粋な生き方をして欲しいと思って渡してるわけ。これまでにも何だかんだで30冊以上を買ってきてはプレゼントしてるんだけど、『男の作法』ってどういう本かというと・・・
これ・・・。
普通の文庫本!ww
200頁をちょっと超えるぐらいの本だけど、これがなかなか読ませる内容。
この単行本が出たのは昭和56年、文庫になったのが昭和59年なんだけど、奥付を見てみると・・・
令和2年の段階で101刷!
昭和に発表された本が平成の時代も読み継がれて101刷だぞ。すぐに忘れられる作品も多いのに、これだけ版を重ねるって事は人気の証。101刷なんて漱石とか太宰クラスだろww
で、この本を久しぶりに再読したんだけど、う~ん、やっぱり良いな。
どういう内容が書かれてるのか文庫本の背表紙から引用すると、
てんぷら屋に行くときは腹をすかして行って、親の敵にでも会ったように揚げるそばからかぶりつくように食べなきゃ・・・。勘定、人事、組織、勝負、結婚、ネクタイ、日記、贈り物、小遣い、家具、酒、月給袋など百般にわたって、豊富な人生経験を持つ著者が、時代を超えた“男の常識”を語り、さりげなく“男の生き方”を説く。本書を一読すれば、あなたはもう、どこに出ても恥ずかしくない!
まさに粋な男になるための教科書的なエッセイ。
中身もさることながら、文体もちょっと独特なのがこのエッセイ。
普通、エッセイというと何かの雑誌に連載した文章だとか、単行本のために書き下ろしたとか、まぁ、そういうものを指すと思うんだけど、このエッセイはちょっと違ってる。作者・池波正太郎が友人の佐藤隆介氏に語ったものを佐藤氏が筆記、その原稿に手を入れたものが本書。
書きおろしってのはよく有るけど、これは・・・
語りおろし!ww
なので文章は超口語体。普通に会話してるような文章だけど、語ってる内容が深いから退屈しない。読みやすい文章、読む者に何かを気づかせるような深い内容、まさに名エッセイと言っても良い出来ばえ(じゃなかったら、こんなに版を重ねないだろ)。
で、作者自身が前書きで書いてるんだけど、この本の中で私が語っていることは、かつては「男の常識」とされていたことばかりです。しかし、それは所詮、私の時代の常識であり、現代の男たちには恐らく実行不可能でありましょう。昭和56年の執筆当時、すでに「現代の男たちには実行不可能」と半ば諦めのような気持ちを吐露してるんだけど、昭和56年でそんな状況なんだから令和の時代、今の若い男たちがこの本を読んでどう感じるかは・・・。
まぁ、そんな事を嘆いても仕方ない。
ここに書かれてる作者の考え方、ライフスタイルは時代を超えてカッコイイと思ってる(オレはな!)
生まれた時から携帯電話やパソコンに囲まれて育ってきた若い人には時代遅れと思われるかもしれないけど、ここに描かれてるのは「本当にカッコイイ男」の生活スタイル。
別のブログでも書いたけど、今は「恥を恥とも感じない時代」だろ。バブル期を経て拝金主義みたいのが蔓延って、目先の欲、目先の損得で動く人間が増えたけど、時代を超えてカッコイイのはそういう人じゃない。
そんな事を思い出させてくれるのが『男の作法』。
口語体で書かれた非情に読みやすい文章だし、それぞれのテーマも簡潔に述べられているのでいちいち内容の説明はしないけど、寿司屋での振る舞い(回らない寿司屋)から始まって食事のマナー、ネクタイの選び方、仕事や組織、親子、夫婦等々、いろいろな事に話が及んで飽きない一冊。
一気読みするのもよし、目次を見て気になるところから読むのもよし、傍に置いておけばちょっとカッコよくなった気分になれるかもww
この本の中で何度か出てくるんだけど「自分は、死ぬところに向かって生きているんだ・・・」という作者の哲学。じゃぁ、どうやってカッコよく生きようか、そんな事を考えるキッカケになるかもしれない。
もう一つ、印象に残るのが「人間とか人生とかの味わいというものは、理屈では決められない中間色にあるんだ。つまり白と黒の間の取りなしに。その最も肝心な部分をそっくり捨てちゃって、白か黒かだけですべてを決めてしまう時代だからね、いまは」という文章。
自分でも自覚してるけどオレも白か黒で決めたがる方だ。善い事、悪い事、いろいろするのが人間。簡単には白黒で決められないと自省の念に駆られるなww
同居人の下書きチェック

この本、面白い?^^

面白いけど、女が読むと面白くないかもな

なんで!?

男目線で書かれてるからだ
女が読むと、多少、不愉快に感じる部分もあるかもww

ちょっと興味あるのだわ!

止めとけ・・・
不愉快な気分になって八つ当たりされたら困るww

・・・・・・
タイトルが『男の作法』ってなってる通り、ところどころ男目線で書かれてる部分がある。神経過敏な女性ならギャースカ文句を言いそうな箇所も・・・。
まぁ、作者もそういう女性に読まれる事を期待してないだろうけどww
やっぱり男が求めるのは度量の大きい女性、京塚昌子のような肝っ玉母さんだろ。
考えてみたら今の時代、あんな女性はめっきり減ったな。減ったというか・・・
絶滅危惧種!ww
話が脱線したけど、このエッセイが時代を超えて読み継がれてる名著なのは間違いない。











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