推理小説は好きなのでよく読むけど、推理小説の中でも特に好きなのが叙述トリックと呼ばれてるもの。
結末できれいに騙してくれると、すっごく快感だ。
あ~、そう来たかぁ・・・
って、作者の腕前に惚れ惚れしてしまう。
映画でも同じで、サスペンスやらアクションもので、最後に大どんでん返しなんかが有ると、
うぉぉぉっ!
そうだったのか!
って唸ってしまう。
で、今回の映画だけど、まさに唸らされた映画。
いつものようにAmazonプライム・ビデオで面白そうな映画を物色してたんだけど、主演男優に惹かれて観てみた。
この映画だ・・・。
『手紙は憶えている』って映画。
主演はアカデミー賞助演男優賞を『人生はビギナーズ』で受賞してるクリストファー・プラマー。
最近、彼の出演してる映画『偽りの忠誠』を観たばかりだけど、ヴィルヘルム2世を演じてる役が妙に印象に残ってたんで、今回も彼の出演作を観たってわけ。
この人、1929年生まれだから、もうかなりの歳だけど、映画『サウンド・オブ・ミュージック』のトラップ大佐って言った方が分かりやすいかも・・・。
トラップ大佐を演じてた時は若手の二枚目俳優だけど、さすがに1965年製作の映画と2015年製作のこの映画を比べると老けてるww
まぁ、50年も経ってるんだから当たり前だけど・・・。
てか、50年も第一線で活躍してるってのは凄い。
って事で、今回の話はクリストファー・プラマー主演の『手紙は憶えている』の話でも書いてみようか。
この映画で主人公を演じてるクリストファー・プラマー、彼が演じてる役柄は・・・
認知症の老人!
何の予備知識もなく観たんだけど、冒頭の老人ホームの描写では、これって家族愛とかの映画かな?って思ったぞ。
だって、主人公が認知症だし、とてもじゃないけど血なまぐさい話になるとは思わなかったからな。
ストーリーをwikiさんから軽く引用すると・・・
ゼヴは今年90歳で、ニューヨークの介護施設で暮らしている。最近は認知症が進行し、最愛の妻、ルースが死んだことさえ忘れてしまうようになっていた。
ある日、ゼヴは友人のマックスから1通の手紙を託される。
2人はアウシュビッツ収容所からの生還者で、ナチスに大切な家族を殺されていた。その手紙には2人の家族を殺したナチスの兵士に関する情報が記されていた。その兵士の名はオットー・ヴァリッシュといい、現在は”ルディ・コランダー”という偽名を使って暮らしているという。コランダーと名乗る人物は4人にまで絞り込まれていた。
体が不自由なマックスに代わりゼヴは復讐を決意、1通の手紙とかすかな記憶だけを頼りに、単身オットー・ヴァリッシュを探しに旅に出る。
ってストーリーだ。
復讐する相手はルディ・コランダー。
同姓同名の人物は四人。
誰が復讐するべき相手なのか、ゼヴは一人ずつ訪ねて行く・・・。
老人ホームをタクシーで出発するゼヴ、それを2階の窓から見下ろすマックス。
今思うと、この時のマックスの表情が、ラストのどんでん返しを暗示してるんだよな。
まぁ、初見だったんで、そんな事は想像も出来なかったけど・・・。
ネタバレするのは、これから観ようって人に失礼だし、オレの映画記事はいつもネタバレしない方向で書いてるんだけど、もう少しネタバレ無しで映画の流れを書いてみようか。
ルディ・コランダーを一人ずつ訪ねる旅に出たゼヴ。
この辺りはロードムービーのような趣きもあるけど、なにしろゼヴは認知症。
ふとした事で、自分が何をやってるのか解らなくなる。
どうして列車に乗ってるのか、どうしてこの街にに居るのか・・・。
そのたびにマックスから渡された手紙を読み返しては、自分の目的を思い出す。
家族を殺された復讐・・・
手紙に書かれた指示通りに行動するゼヴは、銃器店でピストルを手に入れると、一人目のルディ・コランダーを訪ねる。
認知症で歩く事さえままならない老人が、無事に目的を達せられるのか?
もう、映画の興味はここに集約されてる。
一人目のルディ・コランダー・・・。
向き合う二人。
彼は自分が元ナチスだった事を認めるが、アウシュビッツの事は何も知らなかったと言う。
戦争中はアフリカ戦線に居て、国のために戦ったのだ、と言うばかり。
アフリカに居た証拠を見せられて一人目のルディ・コランダーは別人だと悟る。
ゼヴの目的の相手はアウシュビッツのブロック責任者。アフリカ戦線とは縁もゆかりも無いはず。すごすごと引き下がるゼヴ・・・。
ホテルからマックスに電話をかけて、一人目は別人だった事を告げる。
二人目のルディ・コランダー・・・。
病院を訪れたゼヴはベッドに横たわる今にも死にそうなルディ・コランダーに尋ねる。
アウシュビッツに居た事はあるか?
ベッドの上のルディ・コランダーは弱々しく頷く。
こいつが家族を殺した犯人だ!
銃を向けるゼヴにベッドの病人は震えながら腕を見せる。
そこには囚人に彫られていた入れ墨。
同性愛を理由にアウシュビッツに収容されていた男だった。
ゼヴも自分の腕の入れ墨を病人に見せて、泣きながら許しを請う。
もうね、この辺りまで来ると、最後はどうなるのか興味津々。
弱々しい老人のゼヴが、上手く目的を達してくれる事を祈るばかりだ。
三人目のルディ・コランダー・・・。
一軒の家を訪ねると、息子を名乗る警官が現れる。
父親のルディ・コランダーはすでに他界してると言う。
父親の遺品(ナチスの品物)を自慢気に見せながら、ゆっくりしてい行けと言う警官。
ゼヴの事を父親の古い友人だとカン違いしてるわけだ。
警官の話から、このルディ・コランダーも目的の人物じゃない事を知ったゼヴは帰ろうとするんだけど・・・。
警官がゼヴの腕に彫られたアウシュビッツの入れ墨を見てしまう。
お前はユダヤ人だったのか!
俺をだましやがって!
逆上する警官。
父親の影響からか、反ユダヤ主義に凝り固まってる警官。
ゼヴに向かって攻撃してきた。
身を守るために警官を撃ち殺してしまうゼヴ・・・。
さぁ、残るのは一人だけ。
映画もクライマックスに向けて盛り上がってきてるぞ。
こんなもん普通に考えれば、
四人目はさすがに目的の相手だろ。
どうやって決着をつけるんだろ?
って思うだろうけど・・・。
ネタバレになるんで四人目については書かないけど、オレは見事に騙された。
折原一の叙述トリックみたいに、見事などんでん返し。
考えてみれば、主人公が認知症ってのが、このトリックを行う上での重要な要素なんだよなぁ。
こうやって書くと、ほとんどネタバレしてるような、ネタバレギリギリのような気もするww
伏線も上手い具合に張ってあって、マックスのセリフで・・・
アウシュビッツの責任者の顔を知ってるのは、私とゼヴ、二人だけだ。
ってセリフね。
このセリフは上手いな。
「真実を述べているけど核心に触れてない」ってセリフ。
観終わったから言えるんだけど、ウソを言ってないセリフだけに、このセリフの上手さは際立つ。
認知症のせいで、朝、目覚めるたびに目的も何もかも忘れてしまう主人公だけど、マックスから託された手紙を読むたびに自分の目的を思い出す。
で、一番上手いと思うのが映画のタイトルだ。
原題は『Remember』。
日本語で言うと・・・
思い出せ!
って事になる。
うん、目覚めるたびにいろいろ忘れてる認知症の主人公・・・。
たしかに「思い出せ」ってタイトルは直截的で分かりやすい。
だけど、この「思い出せ」ってタイトル、二重の意味が持たされてる。
このタイトルは上手すぎる!
他にどんな意味かってのは観ればわかるけど、いやぁ、期待しないで観た映画が良い意味で期待を裏切ってくれると嬉しいな。
この映画、オレの中では☆5個!
いつものバイト君の下書きチェック

珍しく☆5個ww

見事に騙されたからな^^

このタイトル、他にどんな意味が有るんですか?

観ればわかる^^
上手いタイトルだぞ^^

教えてくれないんですか?

当たり前だ!
オレはネタバレしない主義だ^^

・・・・・・
邦題の『手紙は憶えている』ってのも、考えようによっては上手いネーミングかもな。
手紙=マックスと考えれば、実によく出来たタイトルだ。
これ以上書くと、ほとんどネタバレになるんで止めとこう。
推理小説でも映画でも、どうにか犯人を当ててやろう、って感じでやたらアラ探しをするような人(自称マニア)も居るけど、そんな読書や映画鑑賞は楽しくないと思ってるぞ。
自然に観てて目についたのなら良いけど、目を皿のように開けてアラ探しするのはスマートじゃないと思ってる。
これは手品でも言えるな。
何とかタネを見破ってやろうと鬼の形相で手品を見る人も多いけど、全然、スマートじゃないww
娯楽なんだから楽しむ事が一番だ。





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