【読書】淡々とした筆致で描く小さなドラマ/『遺品整理屋は聞いた!遺品が語る真実』が問いかけるもの

孤独死や無縁社会って言葉を聞くようになって久しいけど、オレの子供の頃には想像もできなかった言葉だな。
孤独死や孤立死を生み出す時代に変わったって事だろうけど、時代の変化に合わせて、その時代のニーズに応える仕事が仕事が生まれるのは必然な事だと思ってる。
例えば遺品整理の仕事・・・。

って事で、今回は遺品整理にまつわる本を読んだので軽く感想を書いてみようか。

 

 

遺品の整理をする仕事がある事は何となく知ってた。
たまにそういう広告も見かけるし、いつだったかNHKの番組で特集された事もあったし・・・。
だけど、そういう仕事がある事は知っていても、なかなか正面から向き合う気にはなれなかったのも正直なところ。

オレには関係ない!

まだまだ先の話!

そんな風に思うようにして目を背けてた。
そんなオレが遺品整理の本を読んでみようかと思ったキッカケは、さだまさし『アントキノイノチ』を読んだから。
遺品整理の会社で働く若者の成長物語だけど、著者のさだまさしが実際に遺品整理の会社に取材して書いたという長編小説。

【読書】じわりと泣ける/さだまさしの描く優しい世界『アントキノイノチ』

遺品整理業って孤独死した人の部屋に行って掃除するだけの仕事かと思ってたら、これが大きな間違いで、そこには孤独死した人のそれぞれのドラマ、遺族の想い、仕事で遺品整理する人の想い・・・いろいろな想いが凝縮されてる事を知った。
『アントキノイノチ』を読んで遺品整理業(特殊清掃とも言うらしい)に俄然興味が出てきた。
そこで読んだのが、こちら・・・

200頁に満たない新書だけど、書かれてる内容はいろいろ考えさせられる。
作り物の小説(フィクション)にない迫力を感じさせる本だった。

 

著者の吉田太一氏は、2002年に「天国へのお引越し」をキャッチフレーズとした日本初の遺品整理専門会社「キーパーズ」を設立した方で、NHKの番組に出演したりさだまさし『アントキノイノチ』のモデルになった方。
その著者がこれまでに経験した何百何千という遺品整理の現場を記した本書、まさに実話だけが持つ迫力に満ちてる。
この本を読むまではオレの中で孤独死のイメージは、「一人暮らしの老人が心臓発作とか脳溢血で誰にも看取られず部屋で亡くなる」ってイメージだった。
まぁ、そういう例もあるだろうけど、この本に書かれてる現場は自殺だとか死後何週間も経過して発見された部屋(知らなかったんだけど、自殺の場合なんかでも警察は遺体を運び出すまでは行うけど、部屋の掃除はしないそう)
孤独死した人がみんな綺麗に亡くなってるわけもなく、死後何週間も経って発見された部屋の惨状は読んでいて背中がゾッとするような・・・。
ゴミ屋敷と化した部屋、ボコボコに潰された冷蔵庫、殴り書きされたノート等々、部屋に残された遺品に故人の人生を想像してみる著者。どんなに辛い人生でも、苦しい人生でも、その遺品の中に故人のドラマを見出そうとする優しさが感じられる。

 

にわかには信じられないけど、今の日本で餓死する人が相当数居ることに驚いた。
遺品整理に赴いた著者が目にしたのは「かじられた雑誌」・・・。これにはオレも言葉を失ったぞ(泣)
そういえば以前、おにぎり食べたいって書き残して男性が餓死した事件があったけど、あれは決してレアなケースじゃないんだな。

「オニギリ食べたい」餓死者まで出た「非情都市」北九州

餓死はともかく、自殺した現場の清掃の様子もいくつか書かれてるけど、日本では毎年3万人前後が自殺で亡くなってる。
一口に3万人って言うけど、これって1日にすると毎日80人が自殺してるって事になる。

毎日80人!

日本は先進国だけど、餓死者は居る、毎日80人が自殺する国って・・・

どうなんだ!?(泣)

そんな事を考えさせられた。

遺品整理に赴いて部屋の清掃をしながら、故人の人生に想いを寄せる著者の優しさが溢れた本だけど、遺品の一つ一つにドラマを見出そうとする優しさは素晴らしい。
遺品にドラマが有るように、故人その人にもドラマはある。
さだまさし『主人公』で唄ってるように、

小さな物語でも

自分の人生の中では

誰もがみな主人公♪

遺品整理という仕事を淡々とした筆致で描きながら、優しさに溢れてる一冊だった。
世の中、こういう優しい人が増えれば良いと思ってる。
そうなれば年間に3万人が自殺するようなこともなくなるんじゃないか。

 

 

いつものバイト君の下書きチェック

バイト君
バイト君

日本で餓死する人が居るんですか!?

マサト
マサト

居るそうだわ(泣)

バイト君
バイト君

自殺する人が3万人?

マサト
マサト

最近は減ってはいるけど、それでも2万人超

バイト君
バイト君

・・・・・・

マサト
マサト

・・・・・・

バイト君
バイト君

日本は大丈夫ですか?

マサト
マサト

未来はお前らの肩にかかってるww

バイト君
バイト君

・・・・・・

 

遺品整理業って、ただ単に部屋の掃除をして遺品を箱詰めするだけじゃない事を知った。
この本の帯には、

遺品整理とは故人の人生に光を当て直す“考古学”だ!

って書かれてる。
なるほどな、いつ何が起こるかわからないし、オレも身の回りのモノは整理しておいた方が良いかも(光を当てられると恥ずかしいww)
う~ん、いろいろ考えさせられた一冊だった。

 

【読書】じわりと泣ける/さだまさしの描く優しい世界『アントキノイノチ』
10年近く積読の山の中に埋もれていた『アントキノイノチ』を読了。映画化もされたさだまさしの小説だけど、読もう読もうと思ってるうちに10年...。さすが評判になってただけあって、なかなか泣かせる小説だった。こんなに良い本なら早く読めば良かった。
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