オレが中学生・高校生の頃、1970~80年代だけど、あの頃は田舎町の小さな本屋にも筒井康隆とか星新一の文庫本がズラリと並んでた。どこの本屋に行っても必ず置いてあるのが筒井康隆とか星新一(今の時代だと東野圭吾とかww)だったけど、読書好きな子は競って筒井康隆とか星新一を読んでた。どちらも当時の日本を代表する人気作家だけど、オレの周りではいつのまにか筒井康隆派と星新一派に別れてたww
星新一のポップな感覚のショートショートを好むか筒井康隆のシュールな作風を好むかの違いだったように思う。で、オレはどちら側だったかというと中立ww
星新一も読むし筒井康隆も読む(たまに平井和正とか小松左京)ってスタイル。いつのまにか好みの本もミステリ―やらノンフィクションに移ったので星新一や筒井康隆を読む機会は減っていったんだけど・・・。
そんなオレが数十年ぶりに筒井康隆の小説を読んだ。
って事で、今回は筒井康隆の『旅のラゴス』を読んでの感想を簡単に書いてみようか。
この本のタイトルは聞いた事があった。
出版されたのはかなり古くて1986年、中高生の時なら買っていたかもしれないけど出版当時は他のジャンルの小説に夢中になってた頃。今さら筒井康隆でもないだろ・・・って感じで頭の中のメモ帳に留めておくだけ(このメモ帳、すぐに忘れるww)
そんなオレが数十年の時を経て『旅のラゴス』の名前を聞いたのはつい最近。
ちょっと調べものをしてた時にこんな文章を目にした。
スタジオジブリが『旅のラゴス』をアニメ化
これはちょっと衝撃だったな。
筒井康隆の作風とジブリの作風、なんかミスマッチ。
だけど、わざわざアニメ化するって事は相当な面白さなんじゃないか。
いろいろ疑問が頭に浮かぶけど、このアニメ化って話・・・
デマ!ww
wikiに詳しく書かれてるけど、この現象は・・・
新潮文庫版は刊行以来、毎年3,000から4,000冊売れるロングセラーだったが、2014年頃より増刷10万冊を超えるヒットになった。出版社の新潮社は原因不明の謎のヒットと呼んでいる。この現象は『日本経済新聞』(2015年4月15日)にも取り上げられた。
新潮社の編集者の調査によれば、Twitterで広まっていた「スタジオジブリが『旅のラゴス』のアニメ化を筒井康隆に持ちかけたが、筒井が断った」というデマが発端で、そのデマを元に書店でポップに立てた人がいて、それをきっかけに売れ始めたという。筒井本人はアニメ化は歓迎とコメントしている。
なんとも迷惑なデマだけど、日経も取り上げるぐらいだからかなり売れたんだろうな。
ていうかTwitterでデマが拡散するってちょっと怖いけどww
とは言っても、これだけ騒がれた『旅のラゴス』、俄然興味が湧いてきた。
デマが発端とはいえ売れてる事に間違いないし、amazonの評価を確認してみても概ね高評価が並んでる。
さっそくamazonでお取り寄せだ。
さすがamazon、翌日には届けられた。
数十年ぶりに読む筒井康隆、なんていうか表紙がすでにジブリの雰囲気ww
噂は根も葉もないデマなので、まさかカバーのデザイナーがジブリの雰囲気を意識してるわけないけど、なんとなくジブリ風・・・。
読み始める前にいつものように背表紙の紹介文を確認してみた。
北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か? 異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。
超能力とか出てくるみたいだし、どうやらSF・・・。
人間の一生と文明の消長をかっちりと構築してるって書かれてるけど、どんな話なんだろ。
ワクワクしながら読み始めたぞ。
面白いか面白くないか、いつものように先に結論を書くと・・・
面白い!
ここに描かれてる「この世界」ってのが未来なのか過去なのかも明らかにされてないし、そもそも地球なのか他の星なのかも明らかじゃないけど、背表紙の紹介文に書かれてる通り文明の消長と一人の男の一生を描いて読む者をグイグイ引っ張る推進力のある小説。
なるほどな、これならジブリでアニメ化しても面白いかもな。
ただ、筒井康隆とジブリの作風、ちょっとミスマッチじゃないかって書いたけど、この小説でも筒井康隆らしさが出てる。
例えば・・・
簡単に人が死ぬ!ww
まぁ、筒井康隆のドライさなんだけど。
この人の小説って、善と悪、明と暗を書き分けながら、どちらにも加担しない、時には悪が勝ち善が負けたり、変に感情移入させない、感情移入する隙を与えない。そういうドライさはこの小説でも健在。
この小説には恋愛も織り込まれてるし、冒険小説の要素もある。また文明の在り方とか人間の精神の進化にも触れられていて、なかなか奥が深い娯楽小説。
充分に面白く読める娯楽小説(もちろん、いろいろな示唆に富んでる)わけだけど、う~ん、面白いからと言って、じゃぁ、この小説を好きかと言うと微妙。
その辺を少し書いてみようか。
うん、この小説は面白い。
冒険小説としても読めるし、恋愛小説の匂いもする。軽めの文明論としても読めるかもしれない。
だけど、好きかと言うと「?」となる・・・。
この小説を読んで思い出した映画があるんだけど、何だかアレと雰囲気が似てるんだよな。
もちろんストーリーは全然違うんだけど、どうしてもあの映画を思い出してしまう。
何かと言うと・・・
フォレスト・ガンプ!ww
この映画は知ってる人も多いだろうけど、人より知能指数は劣るけど純真な心を持ち、心ない人から嘲笑されても、それ以上に良き心を持つ周囲の人々の協力を受けて数々の成功を収め、同時に幸福を周囲にもたらしていく男の半生を描いた映画。
ラゴスの知能は遅れていないし(むしろ他より高い)、舞台設定も全然異なってるけど、どうにもこうにも思い出させてしまう。
何がそうさせるのか・・・
ラゴスの運の強さ!ww
映画『フォレスト・ガンプ』でも主人公の運の強さが際立っていたけど、『旅のラゴス』でも主人公は相当な運の持ち主(二回ほど奴隷になったけど)
この辺りが素直に好きな小説と言えない理由。
一時期、感動ポルノって言葉が流行ったけど(『フォレスト・ガンプ』公開当時)、オレはそういう感動ポルノは嫌いなので、やっぱりこの映画も好きになれなかった。良い映画だとは思ってるけど。
『旅のラゴス』は涙を誘うような感動モノじゃないし、主人公のラゴスには何の障害もないけど、あの強運はどうしても『フォレスト・ガンプ』を思い出してしまうww
そういえば何処かのレビューで、ラゴスの強運は「ご都合主義」って書いて☆1個にしてたものがあった。
まっ、オレの中では☆4個。
たしかにジブリでアニメ化されても違和感はなさそうな小説だし、人生を賭けて旅をする勤勉な男のドラマを読んだ気分。
いつものバイト君の下書きチェック

ジブリは嫌いじゃなかったです?

嫌いだぞ

嫌いなのに読んだんですか?

あれは噂だろ
アニメ化されてないから読んだのだわ^^

・・・・・・

アニメ化されてたら、たとえ筒井康隆でも読んでないわ

で、読んだ結果は
アニメ化されても違和感ない小説とww

うむ、何となくジブリが好きそうな話だった

それで星が-1個なんですかww

・・・・・・
痛い所を突かれたww
言われてみれば、う~ん、たしかにそうかもしれないな。
ジブリに似合いそうな小説って事で、本能的に好きになれないのかも・・・。
良い小説だとは思ってるんだけど、なるほど、好きになれない原因がわかった(『フォレスト・ガンプ』はあまり関係なさそうww)












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