【詩集】思へば遠く来たもんだ・・・。中原中也の詩が心に刺さる!って話

普段から本はよく読むし、気になった本はちょくちょく買うもんだから自宅の積読はいつまで経っても減らない。なるべく積読から処理して本を買わないようにしてるけど、気分によってはすぐにでも読んでみたくなる本がある(これを発作と呼んでるww)
先日もいきなり発作がやって来た。
何を読みたくなったかというと・・・

詩集!ww

小説やら評論、ハウツー物はあれこれ読むけど、詩なんて高校生の頃にヘッセの詩集を読んで以来手を出してない。
何が原因で詩集を読みたくなったのか自分でも判らないけど(歳のせいか?)、読みたいんだから何か買って来なきゃいけない。
で、誰の詩集を読むか・・・
答えはすぐに出た。

中原中也!

30歳で夭折した超有名な詩人。
よし、数十年ぶりに詩を読んでみようじゃないか。

って事で、今回は中原中也の詩集を読んだ話を書いてみようか。

 

 

高校生の時だっけな、たしか現国の教科書に中原中也の詩が載ってた。
掲載されてたのは「サーカス」だったか「汚れつちまつた悲しみに・・・」だったか定かじゃないけど、授業で使われたのは覚えてる。
その時の授業で読んだ詩に何を感じたのか、今となってはまるっきり覚えてもいないし、その時の感情も想像できないけど、一つだけ確かな事は・・・

中原中也って男前やん!

って思ったことww
教科書に写真が載ってたわけだけど、その写真を見て、「へ~、この人が作った詩なのか」って妙に感心した事はたしか。
この写真だけどね。

1925年(大正14年)に18歳で上京した際、ファンだった仏の詩人ランボーの帽子姿で、銀座の写真館で撮影。
出典:wikipedia

現国の先生は「同じ山口県人として中原中也ぐらい読んでおけ」って言ってたけど、うん、この歳になって初めて詩集を買ったww

中原中也って人は、山口県の生まれ、医者の家庭の長男として生まれたけど、親の期待に沿うことなく学校は入学・退学の繰り返し。京都の立命館中学に在校してた時に3歳上の女優と同棲(この時、中也は17歳!)。やがて上京するもこの女優を巡って小林秀雄と三角関係になる。後に遠縁の女性と結婚して子供を授かるけど、その子は2歳の時に小児結核で死んでしまう。その翌年、中也も結核性脳膜炎で30年の人生を閉じるわけだけど、う~ん、初めて親元を離れて京都で暮らしてた17歳の時に同棲したり、小林秀雄と三角関係になったり、子供を失くしたり・・・なかなか濃い人生。
ダダイズムに傾倒した時期もあったようで、誰かに充てた書簡にはダダイスト中也の署名もしてる。ダダイズムってのは既存の価値観とか常識を否定する攻撃的な芸術運動だけど、はたして中也の詩はどんなのだろうか。
ワクワクしながら本屋で買ってきたのが、これ・・・。

集英社文庫の『中原中也詩集』
詩集のコーナーなんて初めてゆっくり覗いてみたけど、中原中也の詩集だけでも各出版社からいろいろ出てるんだな(ちょっと驚いたww)
まぁ、いろいろ出てると言っても生涯で二つの詩集しか出してない中原中也なのでどこの出版社も中身はほぼ同じはず(掲載順が違うぐらい)。

 

今回、じっくりと味わいながら詩を読んでみたかったので声に出して読んだ。
ダダイズムに傾倒してた中原中也、その詩を読んでの感想は・・・

ピュア!

教科書で習った中原中也の人生からして、もっと激しい、何かに突き動かされるような、躍動するような詩が多いのかと思ったら、その反対。
なんていうか言葉に透明感があって優しい。
透明感だけのスカスカの言葉じゃない、中也の詩には「悲しみ」とか「生きること」とか「もどかしさ」が表現されてた。
まぁ、詩なんてものは読む人によって受け取り方は違うだろうし、同じ人が読んでも読んだ時期や年代によって受け取り方は違うはず。今回、オレはたまたま透明感のある言葉に「生きること」とか「悲しみ」とか「もどかしさ」を感じたけど、この先、何年か経って読み返せばまた違う感想を抱くかもしれない。

一冊を通して読んで、さすがに「サーカス」とか「汚れつちまつた悲しみに・・・」は胸に残る名詩だと思うけど、オレの心に一番刺さったのは「頑是ない歌」
ちょっと長いけど全文を書き写してみようか。

~頑是ない歌~

思えば遠く来たもんだ
十二の冬のあの夕べ
港の空に鳴り響いた
汽笛の湯気は今いずこ

雲の間に月はゐて
それな汽笛を耳にすると
竦然として身をすくめ
月はその時空にゐた

それから何年経つたことか
汽笛の湯気を茫然と
眼で追ひかなしくなつてゐた
あの頃の俺はいまいづこ

今では女房子供持ち
思えば遠く来たもんだ
此の先まだまだ何時までか
生きてゆくのであらうけど

生きてゆくのであらうけど
遠く経て来た日や夜の
あんまりこんなにこひしゆては
なんだか自信が持てないよ

さりとて生きてゆく限り
結局我ン張る僕の性質
と思へばなんだか我ながら
いたはしいよなものですよ

考えてみればそれはまあ
結局我ン張るのだとして
昔恋しい時もあり そして
どうにかやつてはゆくのでせう

考へてみれば簡単だ
畢竟意志の問題だ
なんとかやるより仕方もない
やりさへすればよいのだと

思ふけれどもそれもそれ
十二の冬のあの夕べ
港の空に鳴り響いた
汽笛の湯気は今いづこ

いやぁ、これは刺さったな・・・。
この詩は10代や20代じゃ実感が湧かないかもしれない。だけど、オレぐらいの歳の人には刺さるんじゃないか。
12歳の冬の夕べを思い出しながら、現在の自分と対比させて「思えば遠く来たもんだ」と謳ってる。ここに描かれる情景は諦めなのか、前向きな姿勢なのか、それこそ読む人によって違うだろうけど、この詩の通奏低音は優しさ。
この歳になってしみじみと詩の世界が胸に染み入ってきた(泣)

 

中原中也が生涯で残した詩集は『山羊の歌』『在りし日の歌』の二つ。
この文庫にはその二つの詩集から精選された詩が収められてるけど「頑是ない歌」の他にも心に刺さる詩がいくつかあった。
「生ひ立ちの歌」は幼年時、少年時、17~19,20~22、23,24と、中也のそれぞれの時代に降る雪がむちゃくちゃ上手い描写。真綿のようだった雪が霙になり、それが霰になり、やがて雹になり、とうとう吹雪になって・・・。最後には「いとしめやかになりました・・・」
何とも言えない気分になる。
「春日狂想」なんて初っ端からぶっ飛ぶ書き出し。「愛するものが死んだ時には、自殺しなけあなりません。」
いきなりこんな風に断定されると、声に出して出して読んでいても「えっ!?」と急停止ww
「骨」という詩も強烈な余韻を残す一篇だった。中也の視点は生を突き抜けてあの世に行っちゃってる。最初に読んだ時はちょっと気味悪く感じたけど、何度か声に出して読むと不思議な事に暖かな余韻を感じるようになってしまった。
この詩集には中也の心象風景(「生きること」「悲しみ」「もどかしさ」)が凝縮されていて、非常に満足度が高かった。

そうそう、一番心に刺さった「頑是ない歌」だけど、明らかにこの詩をモチーフにした曲を海援隊が唄ってる。
1978年リリースの『思えば遠くへ来たもんだ』って曲だけど、当時は中原中也なんて知らなかったし、なんだか地味な曲だと思ってた(そこそこヒットした曲)。
曲タイトルもそうだし、歌詞の中にも「今では女房子供持ち」と中也の詩と被る部分もある。
詩集を読んだ後で聴いてみると、この曲もちょっとイメージが違ってくるから不思議ww

満足度が高かった詩集だし、心に刺さった詩はいくつも有ったけど、う~ん、この詩集、満点じゃないんだよなぁ。
何が不満かというと二点・・・。
有名な「月夜の浜辺」が収録されてない。幼い子を亡くした二か月後に詠んだという有名な詩で、浜辺で拾ったボタンを通して心情を露わにしたもの。中原中也を読んだ事の無いオレでも知ってる超有名な詩なのに、これが収録されてないのはちょっと減点。
で、最大の減点材料は何かと言うと、巻末の鑑賞記を書いてるのが秋元康。

これはアカンわ!ww

せっかくの中原中也の詩集が空中分解しそう。
amazonのレビューでもどなたかが書いてたけど、「読後感が台無し、秋元康の鑑賞は読まない事をお勧めします」・・・。

読んでしまった!(泣)

う~ん、中身は同じ詩なんだし、他の出版社の中原中也詩集を買えば良かった(わりと真剣ww)
まっ、中也自身の詩はまぎれもなく一級品なんだけどな。

 

 

いつものバイト君の下書きチェック

バイト君
バイト君

中原中也ですか・・・

マサト
マサト

ぁんだよ!?

バイト君
バイト君

いや、似合わないものを読んでるなとww

マサト
マサト

・・・・・・

バイト君
バイト君

そもそも中也に限らず詩とか読みそうなイメージじゃないでしょww

マサト
マサト

アホか!
わしは詩的な人間だわ^^

バイト君
バイト君

・・・・・・

マサト
マサト

・・・・・・

バイト君
バイト君

○○系の本しか読まないイメージ・・・
エロ本だけどww

マサト
マサト

・・・・・・

 

ったく、人の事を何だと思ってやがるんだ。
そりゃエロ本も読むけど、郷土の偉人の詩ぐらいは読むわ(この歳になってからだけど)
でも、まぁ、この歳だからこそ感じ取れた詩の息遣いもあるし、うん、これは高校生の頃に読んでも感じ取れなかっただろうな。
もちろん、その時(高校生)にしか感じ取れないものも有るんだけど・・・。

詩は読む人の年代や環境で受け止め方は違ってくると思ってる。

 

【読書】夏目漱石の『坊っちゃん』は歳を重ねて読むと景色が違って見える!って話
夏目漱石の『坊っちゃん』を再読。もう何度も読んでる小説だけど、これほど読むたびに読後感の違う小説も少ないんじゃないか。歳をとると共にいろいろ感じ方も変わって『坊っちゃん』の懐の深さに驚かされる。ただの勧善懲悪じゃない、理想と現実を描いた傑作。
【読書】ゲイ視点で読む村上春樹~『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』
久しぶりに村上春樹を読んだ。「色彩を~」だけど、いやぁ、驚いたな。何が驚いたって、ゲイ小説のような描写が...。まぁ、ここら辺は物語の本質には直接関係してこないんだけど。この小説のテーマは「生きるとはどういう事か?」を問いかけてるんじゃないか。
表紙買い!またまた太宰 治の『人間失格』を読んだ!って話
ブラリと入った本屋で表紙買いをしてしまった。太宰治の『人間失格』だ。好みのイラストだったので、ついつい購入・・・それも二冊も(泣)せっかく買ったんだし読んだぞ。これまでに10回は読んでるけどww 読書なんて、読む時期とか年齢によって、感じ方も変わるだろ。って事で、この歳になって感じた事なんかを書いてみた。読みごたえある...
【読書】笑いと涙の中に突き抜けた感性が光る/歌人・穂村弘のエッセイ『世界音痴』にハマッた!って話
歌人・穂村弘さんのエッセイを読んだ。笑いと涙の自虐的エッセイだけど、所々にハッとさせられる突き抜けた感性が表れていて、さすが歌人と思わせる内容。同年代という事もあって、ウンウンと頷くところ、それは無いわとドン引きするところ等、楽しめた一冊。
「砂の女」は人間存在の意味を問う大傑作。
安部公房の「砂の女」を再読してみた。中学生の時以来だから、数十年ぶりだな。あの頃は見えなかったモノが見えてきたって感じだ。さすが、20世紀、日本文学の到達点だ。
『わたしを離さないで』は、不思議な磁力を持つ小説だった!
今年(2017)のノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ。受賞のニュースを聞くまで、この小説家の事は知らなかったんだけど、遅ればせながら読んでみた。現時点での代表作の呼び声高い『わたしを離さないで』だ。この小説、不思議な磁力で読者を引き込む。テーマはかなり難しいものだと思うけど、作者は答えを明示することなく、読者に解...
その場所は近くて遠い・・・『読書する人だけがたどり着ける場所』を読んだ!って話
その場所はどこに有るのか、その場所に何があるのか、読書する人だけがたどり着ける場所がある。そんな事は考えたことは無かったけど、なるほど、たしかに本を読む人と読まない人では話してて何か違う気がする。斉藤孝先生の本を読んで思った事を書いてみる。

 

コメント

リンク

にほんブログ村 オヤジ日記ブログ 戦うオヤジへ

f:id:masa10t:20181113062414j:plain