2021年のアカデミー賞が発表された。
まぁ、アカデミー賞を獲ったからといって、その映画がオレの好みに合うとは限らないし、映画館で観るかAmazonプライム・ビデオで配信されるのを待つか迷うところだけど、主演女優賞がフランシス・マクドーマンドと聞いて映画館で観る事にした。
この人、今回で主演女優賞は3回目だろ。前回は『ファーゴ』で警察署長を演じての受賞だったけど、今回はどんな演技なのか気になる。アカデミー主演女優賞なんて1回でも獲るのは難しいのに3回目だからな。どんな映画でどんな演技をしてるのか気になる。
そんな訳で仕事の合間を縫って映画館へ行ってきた。
って事で、今回はアカデミー作品賞/監督賞/主演女優賞の3部門でオスカーを受賞した『ノマドランド』を観てきた話を書いてみようか。
アカデミー主演女優賞を3回ってのは相当なものでフランシス・マクドーマンドが単独2位。最多の4回受賞は大好きな女優キャサリン・ヘプバーン。
彼女についての話は別の記事で書いた通りだけど、オレの中では理想の女性像ww
話が脱線しかけた・・・。
今回はフランシス・マクドーマンドの話だった。
軌道修正して『ノマドランド』の感想を書こう・・・。
映画館のロビーには平日の昼間なのにけっこうな人が居た。上映時間になったので『ノマドランド』のスクリーンに向かうと中はガラガラ。オレを含めて5人ぐらいしか居ない。
他の人は『シン・エヴァンゲリオン』を観に来てる人らしいww
まっ、ガラガラの方が密にならなくて精神的にちょっと安心(予約席は全席が間引きされて販売中)。
さっ、いよいよ上映開始・・・。
観終わっての感想を先に書くと・・・
詩を読んだような気分!
この記事を読んでる人は多分『ノマドランド』がどういう映画なのかあらかじめ予備知識を持ってる人だろうし、観終わった人も居るかもしれない。
なので、細かくストーリーを追う事はしないけど、wikiから概略だけを引用しておくと、
本作の主人公、ファーンも「現代のノマド」の1人である。ファーンはネバダ州のエンパイアで臨時教員をやっていたが、工場の閉鎖で街の経済が大打撃を受け、そのあおりで彼女も家を手放す羽目になった。途方に暮れたファーンだったが、自家用車に最低限の家財道具を積み込み、日雇いの職を求めて全米各地を流浪する旅に出た。その過程で、ファーンは同じ境遇の人々と交流を深めていくのだった。
本作はそんなファーンの姿を通して、「現代のノマド」の実像を描き出していく。
一昔前はノマドワーカーなんていう言葉が流行ったりしたけど、この映画で描かれているのはそういう生易しいものじゃない。
主人公は不況のあおりを受けて自家用車に家財道具を詰め込んでアメリカ中を転々としてる高齢者。ノマドワーカーって言葉からイメージする自由な場所で働く、自由な時間に働くという姿とはほど遠い。
Amazonの配送センター、どこかの工場、レストランのキッチン・・・生きるために必死で仕事を探してる姿はアメリカの格差社会の現実を見せられてるような気分になる。
アメリカ中を旅しながら、同じように悩み苦しんでる人と交流する姿を描いてるんだけど、これはまさにロードムービー。
ロードムービーでありながら、どこかドキュメンタリー色が色濃く出されていて、悪い言い方をするとNHKの特集を観てるようなww
じゃぁ、この映画に登場する人たち、つまりキャンピングカーで生活してる人たちが自分の境遇を悲観してるかというと否。
むしろ誇りをもって生活してるように見える。仕事が途切れると新しい仕事を求めて新しい土地へ旅する生活、今の日本人のモノサシだとなかなか理解できない感覚かもしれないけど、何となくこういう生活も在りうるって事は理解は出来る(理解はするけど、自分がやりたいかどうかは別問題)。
主人公が街で教え子に会った時の会話で、子供に訊かれるシーンがあるんだけど・・・
先生はホームレスになったの?
違うわ
ハウスレスよ
それは違うの?
別物よ
なんか誇りをもって生きてる姿が清々しくさえある。
姉の家を訪ねた主人公、姉の夫にこんな台詞を言ってる。
貯金をはたいて、
借金をして、
家を買って、
それが幸せなの?
開き直りとも取れるし達観してるとも言えるし、これは簡単には答えは出ない。
この映画はハッピーエンドではないし、かと言ってバッドエンドでもない。
一人の高齢女性を淡々と描いてるロードムービー。
ハラハラドキドキするようなシーンもないし、ただ淡々と物語は進んで行く。この淡々とした展開ってのが・・・
何気に良い!
誰もがドラマチックな人生を送るわけじゃないけど、その人には「その人だけのドラマ」が有るわけで、この映画はそのドラマの一場面を切り取って映画にしてる。
ドキュメンタリー風な味付けなのに観た後は詩を読んだ気分。
『ファーゴ』では溌溂とした警察署長を演じてたフランシス・マクドーマンドが今作では高齢者を好演。まぁ、『ファーゴ』は1996年の映画だからあれから25年・・・。
お婆ちゃんの役をを演じてもおかしくはないな。
今回のアカデミー主演女優賞も納得の演技だった。
詩を読んだような気分にさせる映画だからといって、オレがもろ手を挙げて☆5個にするかというと答えはNo。
演技は凄いし上手いと思うけど、映画としてのデキはオレの好みとはちょっとズレる。はっきりとハッピーエンドでもなく、バッドエンドでもなく、なんだかモヤモヤ感の残るラストだし、この映画を観て勇気づけられたとかもないし・・・。それが良いって言う人も居るだろうけど。
一番の原因は観終わった後の心の状態かもしれない。
詩を読んだような気分なんだけど、この詩ってのは「明るい詩じゃない」から。
どんよりとモヤをかけられたような、何とも言えない気分になった(そういう気分になる詩って有るでしょ)
まっ、去年の作品賞受賞作『パラサイト』よりは全然良い。
あの映画は観て不愉快な気分になったしww
いつものバイト君の下書きチェック

キャンピングカーで生活してる人の話ですか?

そういう人たちの交流を描いてるわ^^

ドキュメンタリー?

じゃないけど、その色は出てるな
原作はノンフィクションだし

お金払って映画館で観る価値はありました?

まぁ、損した気分にはならないぞ

それは良かった^^

・・・・・・

去年は『パラサイト』で激怒してましたからねww

・・・・・・
この映画はジェシカ・ブルーダーが2017年に発表したノンフィクション『ノマド: 漂流する高齢労働者たち』を原作としているそうだけど、アメリカではこうしてキャンピングカーで生活しながら日雇いのような仕事をしてる人が多いんだろうか。
日本ではキャンピングカーブームとか言ってたけど、そういうのを買う人って月に数回とか多くても毎週末とかの使用だろ。『ノマドランド』の登場人物たちのように何年も住み続けるって人はほとんど居ないと思う。
良い悪いは別にしてキャンピングカーで何年も生活する人が居るってのは、アメリカの懐の深さなのかもしれないな。
この生き方がすきなのは
最後の“さよなら”がないんだ
何百人と出会ったが
一度も“さよなら”とは・・・
私はただ
“また路上で会おう”と
実際そうなる
また会える
だから 私は信じていられる
また会おう
希望は、路上にある






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