オレが高校生の頃、社会科には「倫理・社会」って授業があった。それを略して「倫社」って呼んでたっけ。「現代国語」を「現国」って言ってたのと同じノリだな。
この「倫理・社会」、今では「倫理」って授業になってるんだけど、学習してる内容はオレが高校生の頃に習ったものと大差ない。
受験科目に世界史と地理を選択(当時の共通一次試験は5教科7科目必須)してたオレには全く関係のない授業だったけど、倫社で赤点を取るわけにもいかず(赤点だと卒業させてくれない)実存主義だのイデア論だの囚人のジレンマだの・・・テスト前に一夜漬けで頭に叩き込んだもんだ(泣)
で、当時の授業で印象に残ってるのがニーチェ。
彼の有名な言葉があるでしょ・・・
神は死んだ!
欧米人のくせに凄い事を言うなぁ、と思ったもんだ。欧米人はみんなキリスト教徒だと思ってたしww
まっ、受験で選択してない科目だし、掘り下げて勉強したわけでもないんで、その言葉の意味するところなんか考えた事もない。ただ、テスト前の一夜漬けで言葉を覚えただけ。
で、先日だけど、本屋をブラブラしてて面白そうな本を見つけた。
それが、これ・・・。
いたこニーチェ!
凄いタイトルだから思わず手に取ってしまった。
いたこってってのはアレだろ、青森の恐山で死んだ人の霊を呼んで生きてる人と会話させる人の事だろ(口寄せと言うらしい)。
テレビで観た事あるけど、なかなか興味深いものではあった。
タイトルから推理して、ニーチェの霊を呼ぶような感じか?と勝手に解釈。何だか面白そうなので買ってみた。
って事で、今回は『いたこニーチェ』を読んだ感想をチャッチャと書いてみようか。
いつものように読後の感想を先に書くと、この本・・・
くそ面白い!
怒涛の一気読みだった。
オレに一気読みさせる推進力は相当なもの。
書いてある事にいちいち納得させられるし、知らなかった事も解りやすく噛み砕いて書かれていて読みやすい。
目次をざっと眺めただけでも、なんだか魅力的な文章が並んでる。
- 論理は非力である
- キリスト教は邪教である
- 哲学は妄想にすぎない
- 《真の世界》など存在しない
- 日本国憲法は呪われている
- 権力への意思
- 《畜群》が牛耳る世界
- 神は死んだ
- プラトンの罠
- 動物と超人のあいだ
- ツァラトゥストラは何を語るか
等々、刺激的な文言。
キリスト教は邪教だとか日本の憲法は呪われているとか、読み始める前から気になるじゃないかww
じゃぁ、この本が小難しい哲学入門の本かというと否。
むしろ柔らかすぎるぐらいだぞww
どういう内容なのか背表紙に書かれてる紹介文から引用すると・・・
仕事も恋愛もカネもつかみきれない、人生含み損だらけのサラリーマン・吉田の前に、ある日突然、ニーチェがいたこに乗り移って現れた。ニーチェの教育を受けるうちに、吉田の世界を見る目が変わり始め・・・。驚くほど面白くて簡単な、小説で読む哲学入門。
背表紙の紹介文には、面白くもない内容を褒めちぎってる詐欺まがいのものも多いけど、この本は正真正銘、紹介されているとおり面白い。
高校の時の「倫社」の授業ではニーチェが何を言わんとしていたのかチンプンカンプンだったけど、この『いたこニーチェ』を読んで凡そわかってきた。
この文庫本一冊にニーチェの思想のエッセンスが詰め込まれてる。
詰め込まれてると言うか・・・
凝縮されてる!
しかも読みやすい。
どこにでも居そうなサラリーマンを主人公にして面白おかしく書かれてるけど、書かれてる内容は刺激に満ちたもの。
印象に残ってるフレーズをいくつか引用してみようか。
世界の主体はオレである。
世界を変える責任はオレにある。
これ、冒頭に書かれてる文章だけど、カッコイイだろww
「オレ一人が変わったって世の中は変わらないだろ」
「本当にそう思う?」
「うん}
「価値判断が倒錯しているんだな。それが、お前ら一派の特徴だ。価値判断の主体は世界じゃなくてお前だろ。わかるかな、わからないだろうな」
吉田&いたこ役の友人の会話だけど、この辺りはオレも「?」な部分が多かった。
何となくニーチェの言いたい事はわかるような気はするけど・・・って感じかww
「原因があって結果がある。それはわかるかね?」
「はい」
「でも、お前ら哲学者は結果を原因の前に置くわけだ」
「と言いますと・・・}
「《普遍的心理》や《神》といったもっとも空っぽの概念を一番はじめに置く。そしてそれを前提に議論を進めるわけだ。お前ら哲学者はコロナーロと一緒。前後がひっくり返っている異常体質者なんだ」
「異常体質・・・」
「結局、すべては体質の問題に過ぎぬ。お前の体質がお前の世界をつくっておるのだ!」
吉田とニーチェの会話だけど、ここら辺まで来ると具体的にニーチェの思想に触れて来る。
従来の哲学者との違いを簡単に述べてるんだけど、こうやって書いてくれるとオレでも読みやすいww
「それにしても田中という男は無邪気だな。教養俗物の典型だ。市街地に絨毯爆撃を加えて一般市民を大量虐殺した上に、核兵器による人類史上最悪のホロコーストを行ったアメリカが、憲法だけはすばらしいものを与えてくれたと本気で信じてるの?」
ニーチェの思想の話がなんと我が国の憲法の話に脱線ww
吉田の友人の言葉だけど、日本国憲法にはユダヤ-キリスト教の呪いがかけられているそうで、この辺りの話もすこぶる面白い。
「多種多様な葉っぱをひとことで説明するために《葉》という概念が生まれた」
「それで?」
「一番大切なのは、《葉》という概念に完全に一致する《葉》が現実世界に存在しないことだ」
「そうそう、たしかそんな話だった」
「同じように《普遍的真理》は存在しない。要するに、誰にとっても真理になるようなものはありえないんだ。現実には《個別の真理》が存在するだけだ」
「《普遍的真理》も《葉》という概念も、人間の頭の中にしか存在しないと・・・」
「そういうことだ。解釈の数だけ真理は存在する」
ここも印象深いな。
普遍的真理は有るのか無いのかを「葉」を例にしてわかりやすく書いてるんだけど、こうして書かれてるとスッと飲みこめる。
って感じで、非常に読みやすく書かれてるのが『いたこニーチェ』。
ニーチェを語る上で重要なキーワード「善悪の彼岸」、「超人」、「畜群」、「権力への意思」なんかも簡潔にわかりやすく書かれてるし、まさにニーチェの思想のエッセンスが凝縮されてる一冊。
もう一つ、痛快な点があるんだけど、政治家や評論家が実名で登場してる(数は少ないけどな)。
例えば旧社会党の土井たか子委員長。これが、何て言うか・・・諸悪の根源、物分かりの悪いババア扱いww
実に痛快だったぞ。
いつものバイト君の下書きチェック

やけに褒めまくってるww

高校の頃、倫社で苦労したからな
これはニーチェ入門には最適な本だろ

まぁ、大哲学者のニーチェを文庫一冊に凝縮してるなら凄いですけど・・・

文庫一冊、わずか275頁だからな、たいしたもんだ

憲法の話とか、ちょっと政治的な匂いもしますけど・・・

そこが良いんだろ~が!
アホみたいな左巻きじゃないのが一番の高ポイントだ^^

・・・・・・
巷には訳の分からない自己啓発本なんかも溢れてるし、そういう本が入れ替わり立ち替わり毎年のベストセラーの上位を占めてる。
どれが本物なのか区別がつかないけど、《普遍的真理》は存在しない、あるのは《個別の真理》だけだって思えば、そういう本を読む事の無意味さに気が付くww
かなり以前、ベストセラーになった『夢をかなえるゾウ』も読んだけど、今じゃあの本を読んでる人は数えるほどだろうし、あそこに書かれている事をすべて実践してる人もほとんど居ないんじゃないか?ww
普遍的真理は存在しない!
要は本に書かれてる内容が本人に合うかどうか。
合うなら「その自己啓発本は良書」だし、合ってないなら「ただのゴミ」ww
そこに在るのは個別の真理だけ!
って事だな。







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