これは他人事じゃない!高齢化社会の日本が抱える介護問題に鋭く迫る『ロスト・ケア』を読んでの感想

ふと立ち寄った本屋で面白そうな本を見つけた。
ミステリ―の棚をブラブラ歩いてたんだけど、平積みされた本の表紙に大きく書かれたタイトル・・・。
気になるタイトルなので手に取って背表紙を読んでみたけど、なかなか面白う。
それが、この本・・・。

葉真中 顕の『ロスト・ケア』

聞いた事の名前の作者だし、そういう作家が平積みされていると気になる。
まぁ、聞いた事のない名前なのは当たり前で、この作者は新人らしい・・・。

どんな小説なのか読んでやろうじゃないか!

って事で、さっそく購入して読んでみた。
今回は葉真中 顕のデビュー作『ロスト・ケア』を読んでの感想を書いてみようか。




この小説がどういう小説なのかは、まずは背表紙に書かれてる紹介文を引用してみよう。

戦後犯罪史に残る凶悪犯に降された死刑判決。その報を知ったとき、正義を信じる検察官・大友の耳の奥に響く痛ましい叫び━悔い改めろ!
介護現場にあふれる悲鳴、社会システムがもたらす歪み、善悪の意味・・・。
原題を生きる誰しもが逃れられないテーマに、圧倒的リアリティと緻密な構成力で迫る!全選考委員絶賛のもと放たれた、日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。

って書かれてる。
選考委員の全員が絶賛なんて書いてたら、そりゃ気になるだろww
本の内容は介護関係をテーマにしてるようだし、「社会派ミステリー」と呼べそうな内容なのは読む前に理解した。
現実離れした「本格ミステリ―」「密室もの」も面白いけど、リアリティの面では「社会派ミステリー」にはかなわない。

帰宅後、読み始めたんだけど一気読みしたぞ。
一気読みするぐらいだから、それだけの推進力のある内容だし、面白く読んだ事は間違いない。
じゃぁ、オレの中での評価は何点かというと・・・

75点!ww

これね、すっごく惜しいんだよなぁ。
ネタバレしない事がオレのブログでの作法なので、極力ネタバレしない方向で感想をまとめてみよう。

 

 

読んでいて感じるのは濃密なリアリティ
現代の日本は少子高齢化が進んでるし、介護問題も我々日本人には大きな課題となってるけど、その介護問題に正面から斬り込んでるのはかなり好感。
蛇足だけどオレも介護関係の資格は持ってるし、資格を得るためにそういう現場で研修を受けた事も有るけど、たしかに大きな声じゃ言えないような事が現場では日常茶飯事のように起きてる。その点を正面から描いてるのはすごい勇気。
まぁ、そういう話は以前にもブログで書いてるけど・・・。

オレは・・・親を介護施設には入れない!って話

介護問題を描きながら一定の水準のミステリーとして仕上げてるのは、この作者の力量のなせる業。
そこは素直に認めるんだけど、じゃぁ、純粋に謎解きのミステリーとしてはどうだろうか・・・。

 

 

この点については賛否有りそうだけど、この小説、早々と犯人が誰か書かれてる。
なにしろ小説の冒頭は犯人が死刑判決を受けるシーンだ(犯人の名前は明かされてない)。
で、読み進めていくうちに読者は誘導されてる・・・

この人が犯人なんだろ!?

様々な介護現場での悲惨な状況を見せられて、犯人も何となく見えてくる。
ただ、動機がどうもハッキリしない。
どういう結末になるかのか読み進めると、まさかの展開に・・・。
思ってた人物は犯人じゃなかったわけだけど、
これって・・・

叙述トリック!

さすがに犯人がハッキリと明かされる場面では「おっ!」となったけど、う~ん、これのインパクトというか衝撃度の面では物足りないんだよなぁ。
一定の水準ではあるけど、叙述トリックの名手、折原一と比べるとちょっと物足りない。
登場人物が少ないってのが、この小説では弱点になってて、たしかに登場人物が少ないと頭の中では整理しやすいし読みやすいいけど、フェアなミステリーを書くとなると、この少ない登場人物たちの中から犯人を作らないといけない訳で、どうしても読者に与えるインパクトは弱くなりがち。
オレなんか単細胞だから真犯人を知って、「へ~、そうだったのかぁ」と感心はしたけど、ミステリーを読み込んでるマニアだと早々に気が付くかもしれないな。

 

もう一点、動機の面が弱いような気がする。
介護現場の描写はかなりリアリティに富んでるのに、肝心かなめの動機面が弱いので物語にどっぷりと入り込めなかった。
とは言うものの、現実の世界ではこういう事件も起きてるわけだし、一概に「理解出来ない動機」と切り捨てるわけにもいかないけど・・・。

相模原施設19人殺害事件、植松被告に死刑判決

もう少し減点材料を書いておくと、全てが明らかになった後の描写が冗長すぎるww
文庫本で353~378頁、実に25頁も割いてるんだけど、これだけ冗長だと余韻もなにもないな。
叙述トリックの出来がもう一つ動機の面で普通の人には理解されにくそうラストの冗長さ・・・これが減点材料。
まっ、人によってはこういう作品が好きな人も居るだろうし、あくまでもオレ個人の感想だけどね。

ただ、物事の闇に鋭く斬り込んでいくリアリティのある描写他人事じゃないと思わせる推進力のある筆は、次回作も読んでみたいと思わせるのに充分。
暇が出来たら読んでみるつもりだ。



同居人の下書きチェック

同居人
同居人

結局、この本はどんな本なのか教えて!^^

マサト
マサト

読めばいいだろ・・・

同居人
同居人

先にあらすじを知ってる方が頭に入るのだわ^^

マサト
マサト

・・・・・・

同居人
同居人

はよ教えて!

マサト
マサト

介護を必要とする老人が、次々に自然死に見せかけられて殺されるんだけどな

同居人
同居人

それで?

マサト
マサト

悲惨な介護の現状が書かれていて、なかなか重い文章なのだ

同居人
同居人

それで?

マサト
マサト

お前、全部、聞き出すつもりか!?

同居人
同居人

途中は良いのだわ
犯人は誰か教えて!^^

マサト
マサト

・・・・・・

 

まぁ、読んでおいて損はない一冊。
特に介護と直面してるような人は読んでおくと良いだろうな。
ミステリ―としてよりも、実際の介護現場を少しでも知ると言う意味においては良いと思う。

実際に介護の資格を持ってるオレが言うんだけど、ここに書かれてる事は誇張でも何でもない。

 

オレは・・・親を介護施設には入れない!って話
自分の親は介護施設には入れたくない。ヘルパー二級を持ってるけど、3週間だけ介護施設で働いてみて分かった事。立派な建物でゴテゴテと飾り付けていても、介護は中の職員次第で、どうにでも室が変わる。あくまでも個人の意見なんでね、他の人がどうかは知らないけど・・・。
オレが死んだら葬式は必要ない・・・最近は直葬ってのが増えてるらしいぞ!って話
最近は通夜も葬儀も行わず直接火葬場に遺体を運搬する直葬ってのが増えてるらしい。全体の3割にも及ぶそうだけど、オレも自分が死んだ後は直葬で良いと思ってる。その前に一つ希望が有るんだけど、それは「献体」。自分の身体を医学の発展のため役立てて欲しい。
『わたしを離さないで』は、不思議な磁力を持つ小説だった!
今年(2017)のノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ。受賞のニュースを聞くまで、この小説家の事は知らなかったんだけど、遅ればせながら読んでみた。現時点での代表作の呼び声高い『わたしを離さないで』だ。この小説、不思議な磁力で読者を引き込む。テーマはかなり難しいものだと思うけど、作者は答えを明示することなく、読者に解...
【読書】村上春樹の『中国行きのスロウ・ボート』を古本で再読!古本は一味違うぞ!って話
村上春樹の最初の短編集を古本屋で見つけた。昭和63年の四刷で110円。令和の時代に昭和時代の村上春樹の文庫本を見つけるとは...。ジャズの名曲をタイトルにしたこの本の中身は、うん、村上春樹らしい文章。好き嫌いは分かれるだろうけどオレは好き。
母親を引き取って一緒に暮らす事にした。これは老老介護の始まりか!?ww
母親と一緒に暮らす事にした。これまで好き勝手に生きてきたけど、さすがに年老いた母親を一人で置いておくわけにはいかない。かと言って、介護施設に入れるなんてオレは嫌だ。一緒に住む事を納得させるのに時間かかったけど、これからは親孝行したいと思ってる。
あまり知られてないけど面白いミステリーを紹介してみる!って話
あまり有名じゃないけど、なかなか面白いミステリ―をいくつか紹介してみる。定番の「十角館の殺人」やら「葉桜の季節に君を想うということ」以外にも、面白いミステリーはたくさん有るって話。

 

Blue
光文社
¥1,870(2020/06/04 08:03時点)
冤罪者
文藝春秋
¥897(2020/06/04 08:03時点)



コメント

リンク

にほんブログ村 オヤジ日記ブログ 戦うオヤジへ

f:id:masa10t:20181113062414j:plain