令和元年の大晦日から正月にかけてだけど、やる事も無く暇になった。
日本の大晦日なんて紅白歌合戦を観る人が多いだろうし、オレだって一昨年まではテレビの前に座って紅白を観てたからな。
だけど、今年は観ない事に決めてた。その理由はブログにも書いたんだけどね・・・
2019年 今年の紅白は観ない!裏番組の『年忘れにっぽんの歌』の方がよほど琴線に触れる番組だろ!って話
令和元年を締めくくる日に、何が悲しくてアホ丸出しの学芸会を観なきゃアカン!?ってのが理由なんだけどww
紅白を観ない事に決めたのは良いけど、これまで何十年も観続けてきた紅白を観ないとなると、その時間に何をすれば良いかちょっと考えてしまう。
で、Amazonプライム・ビデオを漁ってみた。もしかして面白い映画が配信されてるかもしれないだろ。
そこで見つけたのが今回の『レディ・ジョーカー』。もちろん高村薫の大ベストセラーが原作。詳細を確認すると全7話のドラマになってる。7話もあるなら紅白を観ない寝正月にはピッタリ。万が一、面白くない時には他を探せば良いだけの話だww
って事で、今回は高村薫原作『レディ・ジョーカー』のドラマを一気に観たって話を書いてみようか。
ドラマに触れる前に原作の方に少し触れておこう。
以前、高村薫の小説を読み漁ってた時期が有るんだけど、この小説の他にも『マークスの山』、『照柿』、『黄金を抱いて翔べ』なんかを読んでる。でね、これらの作品に共通する事があるんだけど、どれも・・・
暑苦しさを覚える小説!
高村薫の技なんだろうけど、この暑苦しさはもはや現実世界を超えるほどの描写。町工場の熱気、埃っぽさなんかが紙面を通して伝わってくる。なのでオレは夏は彼女の小説を読まないww
まぁ、それだけ超リアルに描写されてるんだけど、そのリアルの中に幾重にも織り込まれた複雑な構造・・・どの作品も読みごたえは充分。
『レディ・ジョーカー』を読んだ時の感想をブクログに残してるんだけど、こんな事を書いてた。
1995年6月から1997年10月まで「サンデー毎日」に連載されたものを大幅に改稿したものが本書。
さすがに長かったが、なかなか読ませる。
国内シェアNo.1のビールメーカー、日之出麦酒の社長が誘拐され・・・。ある事情から、社長の城山は警察とマスコミを欺き犯人と裏取引をするが・・・。明らかにグリコ・森永事件から着想してるとおもわれる内容は、当時の事件(警察捜査やマスコミ報道)を知る自分としては、非常に面白く読めた。
(中略)
犯罪小説であるから、当然、犯人グループ、警察関連は登場するのだが、これにマスコミ関係や総会屋などの地下金融グループなどが多々登場している。
日之出麦酒内の人間関係や警察内部の人間関係など、奥行きを感じささせる作品だが、登場人物それぞれにスポットを当ててるためか、読後に若干、消化不良の感じがした。
事件後のそれぞれの感情などを、もう少し描いてくれれば・・・。
(中略)
ただ、物語が動き出してからは、読みやすい小説。リアルタイムでグリコ・森永事件を知ってる自分には、ドキュメンタリーと言うか、ノンフィクションを読んでいるような感覚にさせられた。実際のグリコ・森永事件でも犯人は捕まってないが、本書でも、本当の悪党が捕まっていないのは、自分の好みに合わず。
2011年の11月に書いた読後の感想だけど、ちょっと辛口だなww
辛口だからと言って、この小説がつまらないかと言うと答えはNO。充分に水準を超えてる小説なのは間違いない。ただ、高村薫が書くとなると、勝手にハードルが上がってしまうのだ。読者はみな期待するだろ、高村薫がどんな物語を書くんだろう?って・・・。
充分な力量を持った小説家の宿命だなww
さて、今回のドラマ化された『レディ・ジョーカー』だけど、これは2013年にWOWOWの「連続ドラマW」で放送されたもの。主演は柴田恭兵、上川隆也。
このドラマの出来をさっさと書いてしまうけど、
クソ面白い!
原作にも忠実に描かれてるし、役者陣の演技にも妥協が無く、とにかく無駄な描写が無い。下手に冗長じゃないのだ。
原作の持つ暑苦しさ、埃っぽさも上手く表現していて、犯人グループの生活を描いてるシーンなんかは、観ているこちらが息苦しくなるほど。それぐらい泉谷しげる、豊原功補の演技が凄い。それに対して誘拐される側の日之出ビールの描写は暑苦しさも埃っぽさも無く、この対比が強烈なコントラストになってドラマに深みを与えてる。
全7話だから正月の三が日の間にかけて観ようと思ってたけど、結局、大晦日の夜から一気に全7話を通して観てしまった。
それぐらい面白い!
Amazonプライム・ビデオに書かれてる紹介文を引用しておくと、
1984年の「グリコ・森永事件」から着想を得たと言われる、髙村薫の同名小説が待望のドラマ化。原作は単行本と文庫を合わせた累計発行部数が100万部を越えるという大ベストセラー小説で、ビール会社社長の誘拐に端を発し、大企業の舞台裏や社会問題などに切り込んだ社会派サスペンスだ。
犯行グループを追う合田刑事を演じるのは上川隆也。企業のトップとして事件に直面するビール会社社長を柴田恭兵が演じる。また、監督・脚本など制作スタッフには、2010年に放送され好評を博した連続ドラマW「マークスの山」のメンバーが集結し、髙村薫ワールドに再び挑む。社会的強者と弱者、それぞれが抱える問題を全7話にわたり丁寧に描いていく。2012年11月には映画『黄金を抱いて翔べ』も公開されるなど髙村薫作品に、今注目が集まっている。
この紹介文は上手く書かれてるな。
原作を読んでない人でもこの紹介文を読めば、ちょっと観てみようか、って気分になりそうな文章。
だけど、ここで強く言いたいのは・・・
先に原作を読むべき!
そりゃ、原作を読んでなくても話の筋は伝わってくるし、もちろん面白く観る事は出来るけど、原作を読んでから観る方が確実にドラマの深みが伝わってくる。
犯人の鬱屈した心理、主人公の刑事の葛藤、誘拐された社長の苦悩・・・原作を読んでから役者の演技を観た方が画面から伝わる濃度が濃い。
ちょっと蛇足だけど、例えば主人公の合田刑事と同級生で元義兄の加納祐介との関係。高村薫の「合田雄一郎刑事シリーズ」では有名だけど、この合田刑事と義兄との間に流れるBL感・・・。
30を超えてる人物を相手にBLってのもアレだけど、この二人の間に流れる微妙な空気感。高村薫ファンの間では有名な関係だ。
原作を読んでドラマを観ると、刑事役の上川隆也と義兄役の石黒賢が揃って出てくるシーンはドキドキww
さすがにドラマではあからさまに描写はしてないし、それらしい匂いも極力消す方向で撮られているけど・・・。
聞くところによると、腐女子と呼ばれる人の間ではこの「合田雄一郎シリーズ」はかなり人気らしい(そういう意味でもオススメww)
まっ、原作を読んでからドラマを観ると、いろいろ比較できて面白い。
原作とは似ても似つかないモノに成り下がっていて失望する事も多いけど、今回のように忠実に作られていると好感。
犯人グループの豊原功補が演じてる「狂気」なんか、原作を超えてるだろ。画面から伝わってくる「嫌な奴」感が半端ないからな。
それに対して誘拐される社長を演じる柴田恭兵のスマートさ・・・。1980年代に放送された『あぶない刑事』は毎週観ていたけど、舘ひろしとのコンビでハチャメチャぶり全開だった柴田恭兵が社長を演じてるんだもんなぁ。
しかも、それが・・・
サマになってる!
観ててカッコイイ。
1980年代に『あぶない刑事』を観てた人は、柴田恭兵がこんな役者になるなんて想像できなかったんじゃないか。
実際に起きた「グリコ・森永事件」を想起させる原作、それを忠実にドラマ化・・・。
これが面白くないわけがない。面白くて当然だ。
夢中になって一気に通して観てしまったけど、これは何度も観たいと思わせるドラマ。
こういうドラマは原作だけが良くてもダメ。ドラマ化に当たるスタッフの腕、役者陣の演技力、それらが揃ってはじめて「もう一度観たい」と思わせる映像になると思ってる。
いやぁ、今年は正月から良いモノを観た。
『マークスの山』もドラマ化されてるそうだし、こちらもAmazonプライム・ビデオで配信される事を心待ちにしてるぞ。
いつものバイト君の下書きチェック

全7話、一気に観たんですか?

おう!
夢中になりすぎて眠気も吹っ飛んだぞ

・・・・・・

ぁんだよ!?

どうせ原作に出てくるBL的な場面を期待してたんでしょww

・・・・・・
なんか凄い誤解されてるww
そういうのを期待するなら比留間久夫の『YES・YES・YES』とか柴田よしきの『聖なる黒夜』、貫井徳郎の『空白の叫び』の方がストレートに描写されてるのだ。
今回は純粋に原作の良さを忠実に再現してるドラマを楽しんだぞ。
そうそう、柴田恭兵の演技に驚いたのは今回が初めてじゃない。
2007年のNHKの「土曜ドラマ」で連続放送された『ハゲタカ』で驚いたのが初めての事だ。外資ファンドと戦う敏腕の銀行マンを演じてて、こんな役をこなせるようになったのか!とビックリした。
もちろん、この『ハゲタカ』も観ておいて損はない名作ドラマだ。









コメント