三島由紀夫の『潮騒』を読んだのは中学生の頃だから、あれから数十年が経ってる。
どんな内容の小説かと言うと、三重県の歌島(現在の神島)を舞台に、若い男女がいくつもの障害や困難を乗り越えて愛を成就させる純愛物語。この小説は三島作品の中でも『金閣寺』や『仮面の告白』と並ぶ人気作品。
これまでにも5回ほど映画化されてるんだけど、吉永小百合や山口百恵がヒロインを演じてる。もちろん映画のロケ地は神島。
『潮騒』は読んだ事あるし、三重県に住んでるのに舞台となった神島には行った事がなかった。以前から一度は行ってみたいと思ってたんだけど、ここ最近の自粛ブームで仕事は暇・・・。行くなら今がチャンスだww
そんな訳で行ってみる事にしたんだけど、まずはもう一度『潮騒』を読み返すところからスタート。島には小説に登場する名所がいくつも有るし、予習していく方が良さそうだろ。
そんなこんなで一日で『潮騒』を読み終えて、いざ神島へ・・・。
これも、ある意味・・・
聖地巡礼!ww
って事で、今回は『潮騒』の舞台、神島へ行ってクタクタになった話を書いてみようか。
三重県に住むまではまさか『潮騒』の舞台となった島が実在するなんて思ってもなかったし、それが三重県にあることすら知らなかった。
そもそも神島ってどんな島かというと周囲(海岸線)はわずか4km未満、人口は300人の島。
いやぁ、300人ってのは凄い。
オレの自宅近くのイオンモールでも従業員だけで300人は居そうだけど。
でね、この神島だけど、三重県のどこら辺に位置してるのかと言うと、ここ・・・
小さすぎて見えない!ww
つか、三重県よりも愛知県の渥美半島の方が近い。
伊勢湾に浮かぶ小さな島へは、三重県の鳥羽から市営の定期船が出てるのでそれに乗って向かう事になる(本数が一日に数本しかない)んだけど、思い立ったが吉日、天気の良い日を選んでいざ出発だ。
鳥羽のマリンターミナルの駐車場に車を止めて、まずは切符の購入。
大人片道740円。高いのか安いのか分からないけど40分の船旅だとこんなものか・・・。
10時45分発の船に乗る事にしたんだけど、帰りの船の時間も確認。驚いた事に神島発の最終は15時50分。これを逃すと帰れなくなる。急いで島内を観てまわらないとだ。
乗る船が桟橋に横づけにされてるんで一枚記念に撮っておいた。
これ・・・。
けっこう大きな船で安心ww
さすがに車を乗せたりするフェリーとまではいかないけど、これなら沈没する事はないだろ。
何かの企画で神島灯台は「恋人の聖地」に選ばれてるそうで、船内には観光客らしきカップルもちらほら・・・。まっ、オレは恋人なんて浮かれてる歳はとっくに過ぎたけど(泣)
さっ、いよいよ出港。
いざ、神島へ!
みるみる鳥羽の街が遠ざかっていくぞ。
初めての神島、どんな所なのか期待でワクワクだ。
天気は快晴、風もないんで安心してたんだけどね。
海だって折り紙を貼ったみたいに穏やかだし・・・。
ところが船に乗ってみると、これがけっこう揺れる(泣)
特に怖かったのが上下動。フワ~ッと上に浮いたかと思うと、ス~ッと下に落ちるし・・・。まさか転覆する事はないとは分かっていても脈拍は上がってたハズ。
そんなこんなで40分が過ぎて神島へ到着。
船を降りてすぐに目に止まるのが、これ・・・。
大きな文学碑が出迎えてくれる。
もちろん『潮騒』の一節が書かれてるぞ。
歌島は人口千四百
周囲一里に充たない小島である。
歌島に眺めのもつとも美しい場所が二つある
一つは島の頂きちかく
北西にむかつて建てられた八代神社である。
さっ、やる気も出て来た。
さっさと島内を見て歩こうじゃないか。
まずは見どころが記載されたガイドを確認だ。
よし、だいたいの見どころは確認。
とりあえず昼飯を食べてから島内をまわる事にした。
うん、歩き回る前に腹ごしらえしておく作戦。
あらかじめネットで調べていた港近くの店へ行ってみると、入口には張り紙が貼ってあった。
現在、食事の提供はしておりません
・・・・・・
ここで新鮮な魚介類を食べてから散策する予定だったのに、出足から躓いてしまった(涙)
他に食堂なんてものは無いし、人口300人の島にコンビニなんてものが有るわけない。
空腹のまま歩けるだろうか・・・。
いろいろ不安もつのるけど、飯の一食ぐらい食べなくても死なないだろ。
出発したぞ。
これが予想外に苦難の行程になるとは、この時は想像もしてなかった・・・。
今回は島を右回りに巡ってみることにした。
その方が効率が良さそうな気がしたから・・・。
まずは時計台だ。
港から徒歩3分で到着。
昭和5年に富山の薬売り(置き薬)が島の人へ贈呈したという歴史ある時計台。
当時の神島では唯一、この時計が島の時間を刻んでいたとか・・・。
カメラを構えて写真を撮ってるとお爺ちゃんに声をかけられたぞ。神島で生まれ育ったというこのお爺ちゃんが気さくな人で、話してて楽しかった。島の事もいろいろ教えてもらった。
この時計の歴史(時計本体は三代目)だとか、戦争中の監的哨で海軍の軍人さんがモールスを打つのを見てた話、映画のロケで吉永小百合が来た話、どれも面白かったな。
お爺ちゃん、ありがと~!
さ、まずは八代神社を目指して集落の中の階段を上っていこう・・・。
時計台から2分で到着したのが洗濯場。
ここは三島作品でも出てくる場所だ。
水道が通ってなかった時代、島の人たちがここで洗濯をしてたという場所。小説の中でも女の子たちがここで談笑してる場面があるし、なんと言っても吉永小百合もここに立ったのかと思うと感慨深いものがあるww
てか、この洗濯場、思ってたよりも小さいんだよね。
最初は、ただの溝かと思って通り過ぎたぐらいだし(看板が出てたので気が付いた)。
さぁ、洗濯場を過ぎると八代神社へ向けて石段を上がっていくぞ。
この石段は214段らしいけど、普段、運動をしてないオレには拷問・・・。
途中で何度も休憩した(泣)
あのお爺ちゃんの話だと、灯台だとか監的哨に行くにはこの石段を登るしか他にルートは無いって事。
心臓はバクバク、足はガクガク、おまけに空腹・・・ホント、何度もくじけそうになったからな。
この石段の中ほどには保育園も有るらしいんだけど、島の子供たちはこの石段を毎日上がってるらしい。
そいうやお爺ちゃんに言われたんだった。
石段とか登り道が多いけど、頑張れ!
子供でも登ってるんやから!
って・・・。
3分の1ぐらい登ったところで下を見下ろすと神島の集落が一望。
ほとんどが山の神島なんで民家がギッシリと密集してる。
この集落の中、路地が入り組んでいて迷子になったし(泣)
生活感のある風景は好きだけどな!
とにもかくにも30分以上かけて八代神社に到着。
もちろん小説『潮騒』にも登場する。
主人公の新治は綺麗な花嫁をもらうように、初江は新治の航海の安全を祈る場所だ。
八代神社だけど、石段を登ってきてクタクタになったおかげで写真を撮り忘れてた(涙)
さぁ、次に目指すのは「日本の灯台50選」にも選ばれている神島灯台。『潮騒』では新治が灯台へ魚を届けに行く場面があった。
なにしろ「恋人の聖地」にも選ばれてるし、ここは外せないだろ。
てか、八代神社の石段を200段以上も上がったんだし、さすがにこれ以上は登らないだろうと思ったんだけど・・・
大間違いだった!
灯台へは延々と続く登り階段・・・。
たしかに登りが多いとは聞いてたけど、登りしか無いじゃないか(涙)
空腹に加えて喉も乾いてるけど、自販機なんて港の近辺にあるだけで、こんな山奥に有るわけもなく、ひたすら歩くのみ。
もうね、よっぽど引き返そうかと思ったぞ。
途中で何度も座り込んだけど、ヘビが出てきそうでオチオチとノンビリ座ってられない。
幸い電波は入ったのでスマホで調べてみると、この神島、コウモリも出現するらしいじゃないか。
ますます座ってられない!(涙)
なんか近くでガサゴソと物音がしたような気もするし、歯を食いしばって前進ww
すると見えて来た・・・。
神島灯台だ。
いやぁ、苦労して辿り着いた甲斐があった。
なかなか趣のある佇まいで好感。
ここが「恋人の聖地」かぁ・・・
と、恋人も居ないのに感慨にふけるww
この灯台からの景色も素晴らしかったな。
綺麗な風景を見たからといって足の痛みが無くなるわけじゃないし、喉の渇きも相変わらず。
早く港へ戻って自販機でジュースを買いたい。
というか、心配なのは・・・
15時50分までに戻れるのか!?
この船を逃すと本土に帰れなくなるww
1時間ぐらいノンビリと座って休憩したいところだけど、力を振り絞って先へ進もう。
次の目的地は監的哨。
『潮騒』のクライマックスの場所だ。
監的哨へはまだまだ上り道。
フゥフゥ、ハァハァと息を切らしながらトボトボと足を進める。
この監的哨ってのは何かというと、戦争中、旧陸軍が伊良湖からの着弾点を確認するために建てたもの。
あのお爺ちゃんの話だと、子供の頃、海軍の兵隊さんがモールス信号をここから打つ姿を見てカッコイイと思ったとか・・・。
15分ほど歩いて到着した。
こうして冷静にみると・・・
コンクリートの廃墟!ww
小説では新治と初江がここで待ち合わせ、焚火を囲んで裸で抱き合うシーンが印象的だった。
2階建ての作りで屋上にも上がる事は出来るみたいだけど、足腰がクタクタのオレは断念。まぁ、実物を見れただけでも満足だ。
これで『潮騒』に出てくる有名スポットは押さえたハズ。
あとは港へ向かって島を一周しながら港へ戻る。
その前に神島のもう一つの観光名所、カルスト地形も見ていこう。
次の目的地はカルスト地形だ。
さすがにここから先は緩やかな下り坂。
これまでの登りで足腰を酷使したオレには、この下りも歩きにくい。
一歩踏み出すごとに足がカックンカックンとなる(泣)
この時点で空腹感よりも喉の渇きの方が強烈だったな。神島に着いた時に自販機でペットボトルを買えば良かったと後悔するけど、そんなもん今さら後悔しても後の祭り。
とにかく時間までには港に辿り着かないと本土に帰れないし、今は前に進むだけww
そうこうするうちに到着したのがカルスト地形。
なかなかの絶景だけど、う~ん、山口県出身のオレとしては少々物足りない。
山口県にはカルスト台地「秋吉台」があるからなぁ、あれと比べるとどうしても規模の面で小粒感は否めない。
とはいえ伊勢湾に浮かぶ小島のカルスト地形は一見の価値はある。
下まで降りられるようになってるけど、足腰クタクタのオレは降りない。降りたは良いけど、戻る時にはまた階段を上がらなきゃいけないだろ(涙)
おっし、これで神島の観たいところは全部見た。
あとは港へ向けて歩くぞ。
でね、途中で現れたのが・・・
神島小学校と中学校!
人口300人の島だけど、こうして公立の小中学校がある事に感動だ。
wikiによると2018年時点での中学生徒数は3人・・・。
山と海に囲まれた学校だけど、勉強の面で本土より不利なことは間違いない。仕事柄、子供の学習関係にはいつも関心があるんだけど、勉強だけが学習じゃない。
帰りの船を待つ間、港の前の道で中学生か小学校の高学年らしき子が二人でキャッチボールしてたけど、あんな屈託のない表情は久しぶりに観たぞ。そりゃ勉強のテストをさせたら本土の子の方が有利なんだろうけど、子供の教育ってそれだけじないからな。
本土の中学生で彼らと同じ表情をしてる子、めったに見ない・・・。
この島の学校ではイジメなんかもないだろうし、みんなが楽しく学校生活を送ってるんだろうな。
テストの成績を上げるだけが勉強じゃない、ってのをつくづく考えてしまった(まっ、オレの仕事は成績を上げさせるための仕事だけど)。
って事で、どうにかこうにか島内を一周。
ネットの情報では2時間で一周って書いてたけど、う~ん、オレみたいに足腰の弱い人は3時間みておいた方が良いかも。
前から気になってた神島を観る事が出来て満足した(期待してた食堂が営業してなかったのは無念だけどww)。
今回は右回りで廻ったけど、これは左回りで廻った方が良さそう。八代神社→神島灯台→監的哨と続く石段、急な上り坂を上がるよりも、左回りで先に緩やかな登りから攻めて、後半は一気に下った方が足腰の負担は少なさそうな気がする。
コンビニはおろか商店もなさそうなので弁当とか水筒は必須だ。
時間の方は14時30分に港に戻る事が出来た。
最終の15時50分までは余裕。
どこで時間を潰すか・・・。
食堂もなければコンビニもない。定期船の待合室には早めに戻ってきたらしいカップルが座ってるけど、う~ん、1時間以上も待合室に居るのはキツいな。
外に出て島の子供がキャッチボールしてるのをボ~ッと眺めてたぞ。その間、5歳ぐらいの男の子(この子がまた可愛い!)が話しかけてきたり、退屈はしなかったな。
本土に比べると娯楽の少ない島だと思うけど、子供たちの表情は本土の子供たちよりも、よっぽど生き生きとして見えた。
こういう島で育つのも悪くないかもな・・・
そんな事を考えた待ち時間だ。
さっ、帰りの船がやって来た。
乗船すると往路の船では見かけなかった人もたくさん乗ってる。釣り竿を持った男性二人組、高級そうなカメラを首から下げたオジサン、何をやってるのか定かでない背広姿の中年男性と20代の女性・・・。
船が出港した。
どんどん神島が遠ざかる。
あの山のてっぺん近くまで登ったのかと思うと、急に名残惜しくなったww
今度は民宿にでも泊まってノンビリ過ごしたいぞ。
その時は、時計台の近くに住んでるあのお爺ちゃんにも会いに行こう・・・。
同居人の下書きチェック

体力が無さすぎるのだわ!

・・・・・・

私でも歩いてるのに!
すぐに帰りたいって言うし・・・

普段は運動しないからな、急に運動したせいで筋肉痛だわ

そもそも太り過ぎ!
完璧にメタボなんやから、ダイエットすればエエのだわ!

お前に言われたくない!
体重60kgのくせに・・・

・・・・・・

・・・・・・

何で私の体重の事を言うのん?

・・・・・・

謝れ!(怒)

・・・・・・
疲れてクタクタなのに謝ることを強要されたぞ(涙)
これね、体力がある人で2時間コース、オレみたいな運動してない人間にはけっこうハードな行程だ。
全国的にメジャーな観光地でもないし、三島由紀夫を読んでなかったら行く気にもならなかっただろう神島だけど、そこに生活する人の姿も見ることが出来て新しい発見もいろいろあった。
『潮騒』を読んでる人も、読んでない人も一度は行ってもみても良い島だ。
てか、鳥羽に戻ってから急激に空腹感が蘇ってきた。
いつもなら相手にしない観光客目当ての呼び込みにフラフラと付いて行って割高な定食を食べてしまった。
その話はまた別な機会に書くとしようか。










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