先日、馳星周の直木賞受賞作『少年と犬』を読んだ。
もちろん馳星周の名前は知っていたけど彼の小説を手に取ったのは初めて。行きつけの店の子に勧められて読んだんだけど、これが予想外に良かった。
その辺りの話は以前の記事にも書いた通り・・・。
【読書】初めての馳星周。直木賞受賞作『少年と犬』を読んでみた!率直な感想を書いてみる!って話
直木賞を受賞するだけあって、なかなか読ませる内容に大満足したんだけど、こうなると他の作品も読んでみたくなるのが読書家の性(サガ)。
何を読もうかいろいろ思案、やっぱりあの小説を読んでみたい。
って事で、今回は馳星周のデビュー作を読んでの感想を簡単に書いてみようか。
馳星周といえば一番に思い浮かぶのは、やっぱりこの小説じゃないだろうか。
デビュー作にして吉川英治文学新人賞の受賞作であり、1996年の「このミステリーがすごい!」、「週刊文春ミステリーベスト10」で共に1位になった小説。
これ・・・
不夜城!
中学、高校の頃は大藪春彦なんかのハードボイルド小説を読み漁ってたけど、あれから数十年、かなり久しぶりのハードボイルド。
どんな内容の話なのかワクワクしながら本を開いてみた。
で、いつものように先に結論から書くと、この小説・・・
強烈!
暗黒小説(ノワール)ど真ん中、ハードボイルド一直線、ものすごい疾走感のある小説だった。
文庫本の背表紙に書かれてる紹介文から内容を引用すると、
アジア屈指の大歓楽街――新宿歌舞伎町。様々な民族が巣喰うこの街で、器用に生き抜いてきた故買屋・劉健一。だが、かつての相棒・呉富春が戻ってきたことから事態は一変した。富春は、上海マフィアのボス元成貴の片腕を殺し逃亡を続けていたのだ。健一は元に呼び戻され、三日以内に富春を連れてこいと脅される。同じ頃、謎の女が、健一に仕事を依頼してきた。彼女が売りたいと口にした意外なものとは――。生き残るために嘘と裏切りを重ねる人間たちを濃密な筆致で綴った危険な物語。
歌舞伎町を舞台に繰り広げられる様々な人間・組織の虚々実々の駆け引き、生きるために平気で人を売る人間、どこか頭のネジが抜け落ちてるような人間、簡単に人を殺す人間・・・この小説に登場するのはどいつもこいつもクソみたいな人間だ。一般常識が通じるようなまともな人間はほぼ出てこない。
中高生の頃に読んでいた大藪春彦よりも更に「人間臭さ」を描いてる。
人を裏切ったり殺したりするだけの小説じゃないぞ。
印象に残るシーンもいろいろ有る。
ハードボイルド、ノワールなのにゲイ的な描写もあったりして、これはなかなか興奮させられるww
もちろん小説としての推進力も備えていて、主人公に与えられた時間はわずかに三日、その三日の間に目的は達成されるのか、ハラハラドキドキの連続。
小さな謎が幾重にも折り重なってモザイク状になった中間部、最後のちょっとしたどんでん返し・・・。いやぁ、強烈だったな。
で、何が一番強烈だったかというと、この小説は・・・
愛の物語!
この本を薦めてくれた子は「これは愛の物語なんですよ~!」って言ってたけど、読み終わった今ならわかる。
たしかに愛の物語だった。
どんな愛かというと・・・
いびつな形の愛!
最後の最後、物語の土壇場で「いびつな愛」が結実するというか、強烈すぎる幕引き。
中国人マフィアの中で器用に生きようとする主人公(日本と台湾のハーフ)、否応なしに三日の期限を切られ必死にもがく姿が超ハードボイルド。
この小説はたった三日間の物語だけど、テンポ、謎解き、どんでん返し、どれもが高い水準で凝縮されてる。
大満足な一冊だった。
そうそう、この小説は金城武の主演で映画化もされてる。
こんなに面白い小説、どんな映画になってるのか気になったので読後すぐにAmazonプライム・ビデオで観てみた。
概ね原作に忠実に作られているけど、う~ん、印象としては・・・
香港映画を観てるような気分!ww
まぁ、大半が中国人の出演者だし、喋ってる言葉も中国語、監督も中華系となると香港映画の雰囲気になるのも仕方ないか。
映画のデキの方は・・・
普通に映画だったww
この映画、原作を読んでないと「?」な部分が目につくんじゃないだろうか。話を端折ってるし、展開に無理がある進行だからなぁ。
まぁ、こういう映画を観ようって人は原作を読んでる人が多いと思うけど、原作の良さを出しきれてるかというと、答えはNoだ。
原作を読んでればそれなりに楽しめる映画だけど、読んでない人にはちょっと辛いかもな・・・。
いつものバイト君の下書きチェック

ハードボイルドですか・・・

ハードボイルドは数十年ぶりに読んだけど、これは強烈だったわ

人を殺す場面とか?

そういうのはサラ~ッとしてるんだけど、他の描写がハード

例えば?

子供時代の話とかクスリの話とか・・・

けっこうキツそうww

何気にゲイ要素もあって、そのシーンもなかなか興奮させられるぞ

そこはキツいシーンじゃなくて、好きなシーンなんでしょww

・・・・・・
ゲイ的要素のあるノワール小説っていうと柴田よしきの『聖なる黒夜』が有名だけど、あれに勝るとも劣らない強烈さ。
今回、数十年ぶりにハードボイルドを読んだけど、またハードボイルド沼にハマりそうな予感。
って言うか、こういう小説を読むと主人公に感情移入しすぎて、読後、「自分が強くなったような気」になってしまうのがアカンなww







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