【読書】一人だけど一人じゃない/小野寺史宜の『ひと』は心温まる青春小説!って話

以前から気になってた本を読んだ。
ネット上でも相当な話題になってたし、本屋では目立つ場所に平積みされてた一冊。
かなり面白そうな本なので読もうとは思ってたんだけど、積読の消化に追われて延び延びになってしまった。
何の本かというと2019年の本屋大賞第2位の・・・

著者の小野寺史宜の事は全然知らなかったけど、どんな小説を書くのかも興味ある。
本の帯には「心洗われる、本物の感動で重版続々!!」とあるし、かなり期待して読み始めた。

って事で、今回は小野寺史宜『ひと』を読んでの感想を軽く書いてみようか。

 

 

いやぁ、この本を読んで学生時代の事をいろいろ思い出した。
この小説の主人公・柏木聖輔は故郷の鳥取から大学進学のために上京。この辺りは山口県の田舎から上京してたオレに重なる。
まぁ、重なるのはこの辺りまでで、小説はどういう話なのかというと・・・

女手ひとつ、学食で働きながら一人っ子の僕を
東京の私大に進ませてくれた母。
──その母が急死した。

柏木聖輔は二十歳の秋、たった一人になった。
全財産は百五十万円、奨学金を返せる自信はなく、
大学は中退。
仕事を探さなければと思いつつ、動き出せない日々が続いた。

そんなある日の午後、空腹に負けて吸い寄せられた
商店街の惣菜屋で、買おうとしていた最後に残った
五十円のコロッケを見知らぬお婆ばあさんに譲った。
それが運命を変えるとも知らずに……。

これはほんの冒頭部分だけど、たった一人になった主人公が大都会の東京でまわりの人に支えられながら成長する小説。
主人公はこの総菜屋でアルバイトとして働く事になるんだけど、う~ん、東京の下町ってやっぱり温かいな。
この小説を一言で説明すると、大学を辞めた主人公が総菜屋で働きながら、まわりの人の温かさに触れ、やがて新しい一歩を踏み出すまでの物語。

 

ちょっと脱線するけど、似たような経験がオレにもあって、学生時代のこと・・・。
オレが学生の頃はバブル景気真っ盛りでイケイケドンドンの時代。
当時「アルバイト・ニュース」という電話帳のような厚さの日刊紙がどこの書店にも置かれてた時代。
仕送りを使い果たしたオレは、何かバイトしなきゃなぁ・・・と、それこそ近所の商店街にある小さな本屋で「アルバイト・ミュース」を立ち読みしてた。
あまりに真剣な表情で立ち読みしてたからか、本屋の店番をしてたオバサンに声をかけられたわけ。

学生さんでしょ?
アルバイト探してるの?

あっ、はい・・・
何か無いかと思いまして・・・

こんな会話したんだけど、このオバサン、こんな事を言い出した。

だったら、あそこの〇〇亭ってお店がアルバイトを募集してるよ
行ってみたら?

上京して半年、大学の外では会話らしい会話をしてなかったオレだけど、あまりの展開に驚き。
東京って見知らぬ人に親切で声をかけてくれる人も居るんだ、と真剣に驚いたww
教えてもらった〇〇亭は本屋から30m先にある中華料理店。
ダメで元々、どうせ近くなんだし行ってみることにした(履歴書も何も用意してないけど)
で、即決で採用、翌日から働く事に決定(まさに『ひと』と同じ展開ww)
さらに驚いたのは、この中華料理店、オーナーをはじめ従業員がみんな善い人(これも『ひと』と同じww)
最初は皿洗いから始めたわけだけど、やがて電話で注文も受けるようになったり・・・。
小説『ひと』の中で主人公が働き始めるまでの展開だとか、店の人がんみんな善い人ってのは、何となくオレの実体験に似てる気がした。それだけにすぐに物語に入り込めたな。

 

小説の方に話を戻すと、善い人が出てくればやっぱり善くない人も出てくる。
天涯孤独となった主人公に金をたかりにくる遠縁の男、主人公の部屋をラブホ代わりに使う同級生・・・。
こういう連中が出て来るたびに、オレは心の中で主人公に声をかけてた。

聖輔、頑張れ!

高校生の時に父親が死に、大学生の時に母親が死に、経済的な理由から大学も辞めてしまった主人公は、物語の前半部分では諦めてしまってるんだよなぁ。
何を諦めてるかって、自分の人生・・・。
そんな主人公が少しずつ成長(再生と言っても良いかも)する姿はカッコイイ。
もちろん周りの助けが有るから成長できるんだけど、総菜屋の親父が言うこの言葉・・・

そんなことで礼を言わなくていい
聖輔は人に頼ることを覚えろ

カッコ良すぎるだろ!(泣)

いつもチャランポランな感じがする同僚の映樹さんが主人公をかばって遠縁の男に言う言葉も痺れる・・・

聖輔の先輩ですよ
ダメな先輩です
聖輔がこの店にいるから、おれは手を抜けるんですよ
(中略)
聖輔はウチの従業員ですよ
その従業員が理不尽なことをされたら、相手がお客さんでも許さないですよ

いやぁ、映樹さん、見直した!ww

なんかジワッと目に熱いものがこみ上げて来たぞ(こみ上げただけで泣いてない)

 

東京に実在する砂町銀座商店街を舞台に、一人の青年が再生する物語は気持ちイイ。
善い人、善くない人、総菜屋の面々、大学の同級生、高校時代の同級生、いろいろな人が出てくるけど、変にデフォルメされてない描写は好感。
小説の最後の一行、主人公の魂が再生した事を示すセリフが書かれてるんだけど、いやぁ・・・

青春だな!

すごく良いセリフだと思ってる(ネタバレになるから書かないけど)

この小説、amazonのレビューを見ると、概ね高評価が並んでる。
ただし、中には「ヤマが無い」「会話文だらけでつまらない」ってレビューも・・・。
まぁ、ヤマらしいヤマは無いけど、既に両親を亡くしてる主人公はヤマ(両親の死)を越えてるわけで、この小説が描いてるのは「ヤマを越えた後、一歩を踏み出すまで」の物語。
小説には何でもかんでもヤマが有れば良いってもんじゃないと思ってる。
とは言っても会話文が目につくのはたしか。
こういう文体が嫌いな人は居るだろうけど、う~ん、オレ的にはそこまで拒否反応を起こすようなものでもないかと・・・。
読み終わって温かな気分になる青春小説、うん、なんとなく伊坂幸太郎『砂漠』を思い起こさせる小説だった。
てか・・・

砂町銀座商店街、

行ってみたくなったぞ!

 

ちなみに冒頭でも書いたけど、この『ひと』は2019年の本屋大賞第2位。
じゃぁ、第1位は何だったのかと言うと、瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』
正直な気持ちを書くと、『そして、バトンは渡された』よりも『ひと』の方が・・・

断然良い!

以前の記事でも書いた通り、、『そして、バトンは渡された』の中身はポエムだからなww
有り得ないような設定のポエム調の小説よりは、一人の青年が再生する姿の方がオレの好み(他の人はどうか知らんけど)

 

 

いつものバイト君の下書きチェック

バイト君
バイト君

評判通りの内容でしたか?

マサト
マサト

うむ
満足したわ^^

バイト君
バイト君

☆何個?

マサト
マサト

う~ん、4個!

バイト君
バイト君

5個じゃないんですか?ww

マサト
マサト

どうしても『砂漠』と比べてしまうからな

バイト君
バイト君

・・・・・・

マサト
マサト

『砂漠』のような躍動感が足りないんだわ

バイト君
バイト君

・・・・・・

マサト
マサト

けど、この小野寺史宜は気になる
しばらく追いかけるわ^^

バイト君
バイト君

・・・・・・

 

あれこれ本を読んでると、どうしても自分の好みで好きか嫌いか分れてしまうけど、この『ひと』は好きな部類に入る小説(伊坂幸太郎『砂漠』には及ばないけど)
こういう小説を書く小野寺史宜、もう少し読んでみようか・・・。

そう言えば、この小説を読んであの事件の犯人の事を少し考えた。
あの事件ってのは安倍元総理銃撃事件。
驚いた事に最近ではこんな動きもあるらしい・・・。

山上容疑者の“減刑”を求める署名活動「宗教と政治の問題を有耶無耶にしないで」発起人の思い

オレには信じられない。
小説『ひと』の主人公に限らず、現実の世の中には不幸な境遇に置かれてる人は多いけど、ほとんどの人は置かれた境遇の中で懸命に生きてる。
この小説を読んで温かな気分になったのは間違いないけど、不愉快なニュースを思い出した事も事実。

 

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まち
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