本はよく読むけど馳星周の作品は読んだ事がなかった。
もちろん人気作家・馳星周の名前は知ってるし、本屋に行けば彼の著作がズラリと並んでるのを目にする。だけど読んだ事はなかったんだよなぁ。
何故かというと、馳星周に勝手なイメージを持ってて・・・
ハードボイルドでしょ!?
って決めつけてたww
若い頃は大藪春彦とか北方謙三を読みまくってた時期も有ったけど、この歳になってハードボイルドを読む気になれなかったわけで、人気作家と知りつつも敬遠してた。
そんな馳星周だけど、ついに直木賞を受賞。
新聞でも大きく報道されていたし、テレビでも受賞作が紹介されたりちょっとしたブームの兆し。
さすがにオレも少し興味を持ち始めたところで背中を押す出来事・・・。
たまに行ってるバーのバーテンダーと話してる時、本の話題になった。彼が超オススメしてきたのが馳星周。大の馳星周ファンらしい。
1回、読んでみてくださいよ~!^^
そこまで言うなら読んでみようじゃないか。
初めての馳星周、何を読むか迷うところだけど話題になってる直木賞受賞作を読む事にした。
って事で、今回は馳星周の『少年と犬』の感想を簡単に書いてみようか。
さっそく本屋に行って『少年と犬』を買ってきた。
話題になってる本だし探す事もなくすぐに見つかった(目立つ場所に平積みされてるからな)。
さぁ、オススメされた馳星周、読んでみようか・・・。
なんの予備知識もなく読み始めたんだけど、どうやら6編からなる連作短編集らしい。
どうせハードボイルドなんだろ!?
うん、読み始めた時はそう思ってた。
いやぁ、オレが浅はかだった。
この本、なかなか読ませる内容だったな。ページをめくる手が止まらない、読む者にどんどんページをめくらせる「推進力のある小説」だった。
どんな内容の短編集か、文藝春秋のHPから引用すると、
傷つき、悩み、惑う人びとに寄り添っていたのは、一匹の犬だった――。
2011年秋、仙台。震災で職を失った和正は、認知症の母とその母を介護する姉の生活を支えようと、犯罪まがいの仕事をしていた。ある日和正は、コンビニで、ガリガリに痩せた野良犬を拾う。多聞という名らしいその犬は賢く、和正はすぐに魅了された。その直後、和正はさらにギャラのいい窃盗団の運転手役の仕事を依頼され、金のために引き受けることに。そして多聞を同行させると仕事はうまくいき、多聞は和正の「守り神」になった。だが、多聞はいつもなぜか南の方角に顔を向けていた。多聞は何を求め、どこに行こうとしているのか……
犬を愛するすべての人に捧げる感涙作!
と書かれてる。
で、読み終わってのオレの感想だけど・・・
まぁ、満足!ww
特に不満はないし、肌に合わない小説を読んだ時のような嫌悪感も抱かせない。
そこそこ泣ける描写もあるし(実際、オレも涙が滲んだ)、6編通しての読み物としては充分に及第点。
及第点なんだけど、う~ん、オレの中では☆3~4個ってところ。
手離しで大絶賛するほどの本ではなかった(正直な気持ち)。
6編を通して登場するのは一匹の犬。
タイトル『少年と犬』ってのは6編の中の最後の短編。つまり少年が登場するのは最後の1編だけなんだけど、まぁ、その辺はどうでも良い。
一匹の犬がいろいろな土地でいろいろな人に出会う物語だけど、この犬が実に素晴らしい犬・・・。子供の頃、実家で犬を飼ってたから犬の習性とかはわかるつもりだけど、
こんな犬、居るかぁ!?
ってぐらいの良く出来た犬なのだ。
躾もよく出来てるし人間には忠実、まぁ、それぐらいなら普通に居るだろうけど、この犬の凄いところは目的に向かって頑張る姿。
いつも同じ方角を見つめてる犬、そこに何が有るのか、そこに行こうとしてるのか・・・読み始めたうちは何も分からないんだけど、物語が進むうちに何となく目的地が分かってくる。ホントにこんな犬が居たらスーパー犬だな。
さすが馳星周、最初の2篇はハードボイルド臭を漂わせた短編で物語の導入としては読者を惹き込むには充分な面白さ。
6編の内容を帯から引用しておくと、
- 『男と犬』
家族のために犯罪に手を染めた男。
拾った犬は男の守り神になった。 - 『泥棒と犬』
仲間割れを起こした窃盗団の男は、守り神の犬を連れて故国を目指す。 - 『夫婦と犬』
壊れかけた夫婦は、その犬をそれぞれ別の名前で呼んでいた。 - 『娼婦と犬』
体を売って男に貢ぐ女。
どん底の人生で女に温もりを与えたのは犬だった。 - 『老人と犬』
老猟師の死期を知っていたかのように、その犬はやって来た。 - 『少年と犬』
震災のショックで心を閉ざした少年は、その犬を見て微笑んだ。
最初の2篇はハードボイルド臭がプンプン匂う内容だけど、残り4編はハードボイルドのハの字もない内容。人物描写もよく描けてるし、もちろん泣かせ所・読ませ所もある。物語としては凄く良い。
良いんだけどオレ的にちょっと不満が・・・。
何が不満って、
文章がハードボイルド調!
最初の2篇は物語がハードボイルド臭なんだから、それこそ無駄を省いた硬質な文章でも良いと思う(むしろ、その方が良い)。
だけど、他の4編は夫婦のすれ違い、年老いた猟師の矜持、震災から逃れて九州の田舎で暮らす家族の絆を描いてる。そういうものを描くのにハードボイルド調の硬質な文章はなんか情緒に欠けるというかww
けなしてるんじゃないぞ、物語は凄く良いって言ってるんだから。
ただ、物語の内容と文体がマッチしてないような気がするだけ。
ネタバレになるので詳しい結末は書かないけど、ここに登場する犬が素晴らしい事は間違いない(こういう犬ならまたオレも飼いたいぐらい)だけど、この小説で犬に関わる人たち、たいてい死んじゃうんだよなww
まぁ、この辺が馳星周らしいというか・・・。
最後には犬自身が・・・。
一つの目的のために一匹の犬が5年以上かけて旅を続ける物語だけど、物語としては充分な水準、ただ文章がちょっと物語に合ってない気がするのでやっぱり☆3個。
犬って生き物はたしかに人間にとっては最良の友だし、ノーベル賞学者のコンラート・ローレンツも『ソロモンの指環』の中で犬を絶賛してる。この小説に出てくる犬をローレンツが見たら大感激するかもしれないなww
そうそう、犬が出てくる小説でオレが泣いた本を一冊だけ紹介しておこうかな。竹内真の『ワンダー・ドッグ』は良書だと思ってる。
ついでに猫のオススメ本も挙げておくか・・・。有川浩の『旅猫リポート』。これは大号泣した小説。映画化もされてたけど小説の方が断然オススメ。
今回、初めて馳星周を読んでみたけど、概ね満足できる一冊だった。
ただ、この内容(文章)でハードカバー1,600円を出すのはちょっと・・・。
正直な気持ちだけど、
これなら文庫になるのを待って買えば良かった!ww
いつものバイト君の下書きチェック

結局、この本は面白いんですか、面白くないんですか?
どっち?ww

面白いぞ!
ただ、話の内容と文体が合ってないと思ってる

・・・・・・

もうちょっと情緒的に書いても良いと思うのだ
泣かせる内容なんだし・・・

内容は良いけど文章が硬いから泣けなかったと?

それとこれとは別!
オレは泣いたぞ(涙)

・・・・・・
ふと思い出したけど、同じように震災を扱った本でいとうせいこうの『想像ラジオ』ってのが有ったけど、あの本よりは『少年と犬』の方がはるかに好み。
動物好きなら『少年と犬』は読んでおいて損はない一冊かもしれない(買うなら文庫になってから買う方が良いかもww)
ハードカバーを慌てて買うほどじゃなかったってのがオレの正直な感想。
~マサトの本棚~
~読書関係の話~







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