【読書】笑いと涙の中に突き抜けた感性が光る/歌人・穂村弘のエッセイ『世界音痴』にハマッた!って話

恥ずかしながらこれまで穂村弘さんの事は寡聞にして知らなかったんだけど、現代の日本を代表する歌人でありエッセイスト、絵本の翻訳家。
普段は歌集を読まないし(若い頃に俵万智の『サラダ記念日』を読んだぐらい)、90年代の「ニューウェーブ短歌」運動なんてのも知らなかった。
そんなオレが初めて穂村弘さんの事を知ったのはNHKのラジオ。
これね、初めて穂村さんの声というか話し方を聴いた時は軽く衝撃を受けた。
穏やかな語り口、滲み出る知性・・・

この人、何者!?

って思ったからなww
バカ丸出しの(自称)芸人には絶対に真似のできない語り口。
それ以来、穂村さんの事は気になってたわけだけど、姿形を見るのはもう少し後・・・。
なんとなく眺めてたNHKの『100分 de 名著』に穂村さんがゲスト出演したのが最初。オレが観たのは再放送だけど、ラジオと同じく知性が滲み出る穏やかな語り口だ。
そして何といっても・・・

わりと男前!ww

上品な顔かたちに知性が滲み出てる話の内容・・・
いろいろ気になってきた。

この人、どんな歌集を出してるんだろ?

気にはなるけど短歌に何の素養も無いオレがいきなり歌集を読むのはキツい。他に何か書いてないのかと調べてみたら、エッセイもたくさん出してるじゃないか。
さっそく穂村さんの最初のエッセイを買ってきた。

って事で、今回は穂村弘さんの『世界音痴』を読んでの感想を簡単に書いてみようか。

 

 

買ってきたと言うのは正確じゃないな。
正しくはamazonで注文ww
本屋に行って探してみたんだけど、田舎町の本屋には置いてなかった(泣)
まぁ、無ければamazonで買うんで別に困らないんだけど・・・。
で、届いた・・・
穂村弘さんの第一エッセイ・・・

世界音痴!

文庫本で200ページ、一晩で一気読みした。
一気読みの原動力、それはもちろん・・・

面白いから!

自分と重ね合わせて「あ~、わかる!」と納得したり、「げっ、これは引くわ~!」とのけぞったり、読んでいて退屈しない。
歌人の書くエッセイっていうと、なんだか小難しい文学論でも書いてそうなイメージだけどこのエッセイは真逆ww
文庫本の背表紙に書かれた紹介文を引用すると、

末期的日本国に生きる歌人、穂村弘(独身、39歳、ひとりっこ、親と同居、総務課長代理)。雪道で転びそうになった彼女の手を放してしまい、夜中にベッドの中で菓子パンやチョコレートバーをむさぼり食い、ネットで昔の恋人の名前を検索し、飲み会や社員旅行で緊張しつつ、青汁とサプリメントと自己啓発本で「素敵な人」を目指す日々。<今の私は、人間が自分かわいさを極限まで突き詰めるとどうなるのか、自分自身を使って人体実験をしているようなものだと思う。本書はその報告書である>世界と「自然」に触れあえない現代人の姿を赤裸々かつ自虐的に描く、爆笑そして落涙の告白的エッセイ。

39歳(執筆当時)で独身、そういう自分の姿を第三者的な目線で自虐的に描いてるんだけど、オレと同世代という事もあって(ひとりっこってのも同じ)、作中、ウンウンと頷くところが随所にあった。
世の中の男性は別れた恋人の名前をネットで検索するのかどうか知らないけどww
自らも「人生の経験値が低い」と書いてる穂村さんだけど、なんだか応援したい気分になるから不思議。

 

ただ、このエッセイが自虐をネタにしただけの面白いだけのエッセイかというとNo
クスクスと笑いを誘う描写の中に、とてつもない感性が光る文章がいくつも出てくる。
およそ歌人とか何かの芸術家じゃないと感じ取る事のできないような感覚、それを文章にしてるのが新鮮。
例えば・・・

回転寿司屋の椅子にコートのままちょこんと座った自分が、宇宙の果ての止まり木にとまっているように感じられる。背後は暗黒無限の宇宙空間、目の前をきらきらと流れ続ける寿司たちの輪廻。
嗚呼、いつのまに、俺は、こんなに遠くまで来てしまったんだ。

回転寿司と宇宙!ww

回転寿司のカウンターで宇宙空間を感じる人間はそうは居ないだろうな。
この前段までに店内でコートを脱ぐか脱がないかで悶々としてる描写があるので、その超個人的などうでもよい問題から宇宙の話への展開が凄すぎるww
クスクス笑ったり、ウンウンと納得しながら読んでいる中、いきなり突き抜けた感性でハッとさせられるのがこのエッセイ。

それと、もう一点・・・。
各エッセイの最後に短歌が書かれてる(穂村さんの作品や他の人のものも)。

これが凄く良い!

オレが特に気に入った短歌があって、もう暗誦できるほど何度も読んだ。

終バスに

ふたりは眠る

紫の

<降りますランプ>に

取り囲まれて

絵画とか映画のシーンみたいで印象深い。
一日の終わり、恋人同士だろうか肩を寄せて眠ってる二人を「降りますランプ」の光が優しく包み込んでるイメージ。
この短歌はかなりインパクトがあった。
笑いと涙の自虐的エッセイの書き手が、こんな映画のワンシーンのような短歌も詠めるとは、穂村弘、ただ者じゃないと思ってる。

 

ただ者じゃないと言えば、wikiにこんな文章が載ってた。

1990年、第1歌集『シンジケート』を刊行。高橋源一郎に「俵万智が三百万部売れたのなら、この歌集は三億冊売れてもおかしくないのに」と評された。

オレは『シンジケート』を読んでは無いけど、この意見には大いに納得できる。
俵万智の三百万部売れた本ってのは『サラダ記念日』の事だけど、あの本、何が良いんだかチンプンカンプンだった。
以前もブログに書いたけど、短歌と言うよりも、ドレッシングのメーカーの「キャッチコピー」に見える。
いかにもキュー〇ーやら〇の素なんかが喜びそうな短歌だ。
こういう短歌だけどね・・・

「この味が

いいね」と君が

言ったから

七月六日は

サラダ記念日

この本がバカ売れしてた頃、商品のキャッチコピーみたいって言ったら、周りからエライ反論されたけど、あれから30年以上経った今でも自論は変わらないぞww
って事で、今度は穂村弘さんの歌集を読んでみようと思ってる(確実に『サラダ記念日』よりは良いだろうし)。

 

 

同居人の下書きチェック

同居人
同居人

別れた恋人をネットで検索・・・

マサト
マサト

何となく気持ちはわかるww

同居人
同居人

・・・・・・

マサト
マサト

ぁんだよ!?

同居人
同居人

変態っぽいのだわ!

マサト
マサト

・・・・・・

 

検索するぐらいは別に良いんじゃないか・・・。
変にストーカー行為をするわけじゃないしww
というか、「人生の経験値が低い」から突き抜けた感性が磨かれるのか、感性が突き抜けてるから「人生の経験値が低くなる」のか、どっちなんだろ。
とりあえず、穂村弘さんをしばらく追いかけてみたくなった。

 

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