【読書】誰もが開けられる事のない箱の中に居るのかも!?/村上龍の『コインロッカー・ベイビーズ』

村上龍の『コインロッカー・ベイビーズ』が発表されたのはオレが中学生の頃だった。
当時、コインロッカーの中にに生後間もない子供を置き去りにするという事件がたて続けに起こっていて、その鬼畜のような犯行に世間がざわついていた。
明らかにそういう事件を題材にしたと思われるタイトルなので、この小説は発表後たちまちベストセラーになった。
オレも単行本を買って読んだけど、あの時の衝撃はそうとうなものだったと今でも記憶してる。

凄いものを読んだ!

ってのが一番の感想。
その『コインロッカー・ベイビーズ』を数十年ぶりに再読してみた。

って事で、今回は村上龍の『コインロッカー・ベイビーズ』を再読しての感想を軽く書いてみようか。

 

 

再読のキッカケはウチに通ってる子供が持ってたからww
最近、どんな本を読んでるか・・・そんな話題の中で彼がカバンから取り出したのが本書。
中学生にはちょっと早いような気もするけど、まぁ、本人が気に入って読んでるんだからオレがとやかく言う事じゃない。
それよりも気になってきたのは、大学生の頃に衝撃を受けた小説をこの歳になって読むと何か違った感想を持つかもしれない。すぐに読み終わるような小説じゃないけど、再読してみたくなった。
さっそく子供に借りて再読開始(4日かかったww)

大ベストセラーとはいえ、あれから40年以上も経ってるし、どういうストーリーなのか知らない人も居るかもなので文庫本の背表紙に書かれてる紹介文を引用すると・・・

1972年夏、キクとハシはコインロッカーで生まれた。母親を探して九州の孤島から消えたハシを追い、東京へとやって来たキクは、鰐のガリバーと暮らすアネモネに出会う。キクは小笠原の深海に眠るダチュラの力で街を破壊し、絶対の解放を希求する。毒薬のようで清々(すがすが)しい衝撃の現代文学の傑作が新装版に!

コインロッカーに捨てられた二人の主人公の幼少期~青年期を描いてる小説。
初読の時もそうだったけど、今回も最初の1ページ、1行目の強烈なインパクトに頭がクラクラしそうになった。

女は赤ん坊の腹を押しそのすぐ下の性器を口に含んだ。

いろいろな小説を読んでるけど、この書き出しはオレの中ではかなり強い印象を残してる(数十年経過しても印象が薄れることはなかった)
別々のコインロッカーで発見された二人は乳児院で兄弟のように育てられ、やがて九州の炭鉱島に養子として迎えられる。
高校時代までを炭鉱島で過ごすわけだけど、この小説を1部と2部に分けるとするなら、この炭鉱島での生活までを1部とする事が出来そう。
閉山してしまった炭鉱の島で暮らす二人だけど、この島の描写が陰鬱で読んでいると気分がドンヨリするほどの迫力。閉山した炭鉱跡、ボロを着た乞食、気の狂った老婆、潰れた映画館に住むヒッピーのような若者・・・

陰鬱すぎる!ww

この島で「何かの衝動」を抱えながら暮らす主人公の二人。
再読なのでストーリーの流れはわかっていても、孤島という逃げ場のない場所で息苦しさに懸命に立ち向かおうとする主人公には拍手を送りたくなる。

 

雰囲気が変わるのは主人公の二人が別々に東京に出てから。
薬島という東京のスラムで男に体を売って生活してるハシ、そのハシを探してるキク・・・。
この薬島の描写も強烈。
麻薬中毒者や犯罪者が集まる事で、周辺の治安が良くなったというほどの極悪エリア(なにしろ金網で囲まれていて周囲は自衛隊が警戒してるという半ば治外法権のような場所)
れっきとした現代の東京を描いてるはずなのに、薬島の描写は何だかSF小説を読んでるような気分になる。炭鉱島の住人に輪をかけて強烈な薬島の人々。
じゃぁ、薬島の外側の人間は普通なのかというと、これも違うような・・・。
もはや価値判断の基準が曖昧になってしまう。
何が正しくて、何が正しくないのか、読んでいて頭が混乱。

 

紆余曲折の末、歌手として成功するハシ、自分を捨てた母親を射殺して少年刑務所に入れられるキク。
成功を掴んだものの「何かの衝動」にだんだんと耐えられなくなっていくハシ。
少年刑務所でじっと「その時」をまつキク。
この二人のコントラスト、幼少期は単に性格の違いかと思わせるボンヤリとしたコントラストだったものが、この頃になるとハッキリと輪郭を持って現れる。
だんだんと壊れていくハシ、ある目的のために淡々と日々を過ごすキク。
コントラストははっきりしてるけど、この二人を動かしてるというか「苦しめているもの」は共通だろうな。
二人とも「何かの衝動」に苦しめられ、突き動かされてるんだけど、その衝動とは何かというと、オレの考えでは・・・

破壊衝動!

表現の方法は違うけど、二人が追い求めてるのは「平穏を得るための破壊」と言えるんじゃないか。
ラストまで書くとネタバレになるので詳しくは書かないけど、まぁ、ハッピーエンドと言えるようなものじゃない。
読み終わっっても清々しい気分になるどころか、胸の中に鉛でも飲みこんだような気分になる(初読よりも今回の方がキツかったかもww)

この小説は主人公の他にも癖のある登場人物がたくさん出てくる。
鰐を飼う女だとか、金の事しか頭にない実業家だとか・・・。
そもそも主人公二人の養父母からして、なんだか変な人。
ただ、冷静になって考えてみると、デフォルメされているとはいえ、鰐を飼う女や金儲けの事しか頭にない実業家とか、この養父母にしても・・・
似たような人は、

まわりにたくさん居そう!

まわりに居そう、というか、まわりから見たらオレ自身がその似てる人間に見られてるかもしれない。
キクとハシはコインロッカーで発見されたわけだけど、九州の閉山した炭鉱島に住む養父母たちも「島というコインロッカー」に囚われてるのかもしれないし、薬島に住む有象無象の人間も「薬島というコインロッカー」に囚われてるのかもしれない。
そう考えれば、オレも含めた我々だってオインロッカーのような「何かの箱」に囚われてるのかもしれない・・・。

そんな事を考えた再読だった。

 

 

いつものバイト君の下書きチェック

バイト君
バイト君

凄そうな小説ですね

マサト
マサト

これ、発表された時は凄いブームだったわ

バイト君
バイト君

コインロッカーに赤ちゃんを捨てる事件って多かったんですか?

マサト
マサト

実際の事件の時は小学生だったけど、あまりの残酷さに日本中が大騒ぎしたのを子供心に覚えてるわ

バイト君
バイト君

・・・・・・

マサト
マサト

もう一つ、忘れられない事件があって・・・

バイト君
バイト君

どんな?

マサト
マサト

猫の飼い主がな、猫を風呂で洗った後な、乾かそうと思って

バイト君
バイト君

・・・・・・

マサト
マサト

電子レンジに猫を入れてスイッチを入れた事件があったんだわ

バイト君
バイト君

・・・・・・

マサト
マサト

今でも強烈に覚えてるわ

バイト君
バイト君

・・・・・・

 

あの頃から、何か煽情的な事件が起きるたびにテレビのワイドショーでは面白おかしく大騒ぎして伝えてたけど、何十年経っても全然変わらないな。
本題とは違うけど『コインロッカー・ベイビーズ』の中にこんな趣旨の記述があったのを思い出した。

テレビから聞こえてくる音は、

まるで豚の鳴き声だ。

少なからず同意してるぞww

 

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