【読書】耐えがたいほどの気持ち悪さ/柚木麻子の『BUTTER』は背筋が寒くなる!って話

10年ぐらい前かな、ワイドショーを騒がせた事件があった。
何かと言うと「首都圏連続不審死事件」というもの。この名称だけだと、どんな事件かは思い出せないかもだけど、木嶋佳苗って聞くと思い出す人も多いだろうな。
若くもなく、たいして美人でもなく(スタイルだって一般ウケしそうにない)木嶋佳苗って女が起こした連続不審死事件。
婚活を利用した事件であることから、「婚活殺人事件」「婚活大量殺人事件」「婚活連続殺人事件」などとも呼ばれているものだけど、殺人の他にも窃盗やら詐欺等々、ロクでもない事件を起こして逮捕されたのが2009年。
2017年5月、最高裁は上告棄却の判決に対する木嶋の訂正申し立てを棄却し死刑が確定、木嶋は死刑囚(死刑確定者)として、東京拘置所に収監されている。
この女が逮捕された時、ワイドショーの加熱ぶりはすさまじかったな。
誰もが薄々は感じてたであろう気持ちは・・・

何でこんな女に!?

まぁ、男性目線から見てのものだけど、若くもないし、一般的に美人と呼ばれるような容貌でもない。スタイルだってオレよりも体重がありそうなスタイル。
オレも思ったもんな・・・

何が良くて・・・

こんな女に貢いだんだ?

ワイドショーなんてのは大衆が喜ぶものを放送するわけだけど、いろんな意味で世間の注目を集めた事件だった。
この事件を下敷きにした小説が柚木麻子の『BUTTER』

って事で、今回は柚木麻子の『BUTTER』を読んでの感想を軽く書いてみようか。

 

 

事件の事は知っていても、この小説の事を知らない人も多いだろうから、文庫本の裏表紙に書かれてる紹介文を引用すると、

男たちの財産を奪い、殺害した容疑で逮捕された梶井真奈子(カジマナ)。若くも美しくもない彼女がなぜ──。週刊誌記者の町田里佳は親友の伶子の助言をもとに梶井の面会を取り付ける。フェミニストとマーガリンを嫌悪する梶井は、里佳に〈あること〉を命じる。その日以来、欲望に忠実な梶井の言動に触れるたび、里佳の内面も外見も変貌し、伶子や恋人の誠らの運命をも変えてゆく。各紙誌絶賛の社会派長編。

読み始めてすぐにわかる事だけど、明らかに「首都圏連続不審死事件」が下敷きになってる。
主人公の週刊誌記者(女性)は梶井真奈子に独占インタビューする事を目的に何度も拘置所に足を運ぶわけだけど、梶井真奈子と何度も面会してるうちに外見も内面も変化してしまう。変化というよりも狂っていくと言った方がニュアンスは近いかもしれない。
で、いつものようにこの小説の感想を先に一言で書くと・・・

不気味!

いや、不気味というよりも・・・

気持ち悪い!

梶井真奈子と面会を重ねていくうちに、どんどん変化(狂っていく)主人公。
自分でその変化に気がついた時には、後戻りもできない、抜き差しならない状態。主人公だけじゃなく、その友人までもが狂っていく。
もちろん拘置所の中の梶井真奈子が直接何かをするわけじゃない。
ただ、〈あること〉を命じるだけ・・・。
この女の底知れない魔性が不気味であり気持ち悪い。

 

物語も中盤まで進むと、新しい面が見えてくる。
不気味で気持ち悪いのは拘置所の中の梶井真奈子だけだったのに、主人公の週刊誌記者やその友人まで気持ち悪い面を見せ始める。
もうね、梶井真奈子と関わった人間は全員狂っていくような・・・。
新潟の実家で暮らす梶井真奈子の母と妹、逮捕時に梶井真奈子が身を寄せていたアニメオタクの男、梶井真奈子が通っていた料理教室の面々、いやはや、よくぞここまでドロドロした描写ができるもんだと背筋がうすら寒くなった。
タイトルが『BUTTER』となってるだけに、作中でバターを使った料理が数々出てくる。料理のレシピや素材についても丁寧に書かれてるけど、この物語の持つ雰囲気のせいか、まったく美味しそうに感じられないのも凄い。
むしろ胸やけを起こしそうになるような重さ。

 

 

自分がおかしくなってる事を自覚しながらも梶井真奈子から離れられない主人公。
気持ち悪いと感じつつも、物語から離れられずにとうとう最後まで読んでしまったオレ・・・。
主人公と同じように梶井真奈子の魔性に憑りつかれたような気分になってしまった(泣)
小説中の「首都圏連続不審死事件」の真相は何なのか、その辺りは何も明らかにされてないけど、この女が犯人で間違いないと思わせる粘ついた嫌らしさを感じさせる人物描写。
でね、よくよく考えてみると、この梶井真奈子に似た女性って、案外と身の回りにも居るような気がしてくる(そこが一番怖いww)
600頁に迫る長編だけど、退屈させない進行なのでほとんど一気読みだった。
まぁ、退屈させない進行だからといって、それがオレのお気に入りになるかどうかは別問題。
こんな気味の悪い小説、もう読みたくないぞ(映像化されたら観るけど)
てか、この小説のせいで、しばらくバターを食べたくないww

 

 

いつものバイト君の下書きチェック

バイト君
バイト君

実話が下敷きなんですか?

マサト
マサト

かなり実話に沿ってるぞ
獄中結婚とか細かい所まで実際の事件に寄せて書かれてるわ

バイト君
バイト君

これ、何が気持ち悪いんです?

マサト
マサト

拘置所の中の梶井真奈子はもちろんだけど、この女に関わった人間が変化する過程が恐ろしいわ

バイト君
バイト君

・・・・・・

マサト
マサト

おかげでバターも食いたくない

バイト君
バイト君

かなり重症ww

マサト
マサト

それぐらい強烈な小説だったわ

バイト君
バイト君

・・・・・・

 

巻末の解説には、「この小説は女性同士の友情も描かれてる」ってような事も書かれてるけど、う~ん、そういう部分もあるのかなぁ。
オレには友情云々よりも、女性の持つ嫌らしさみたいなものが強烈すぎて、ほとんどそこにしか目がいかなかった。
これ、作者が女性だから書けた小説だろうな。
男の作者なら、とてもじゃないけどこんな小説は書けないんじゃないかと思ってる。

 

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