【読書】夏目漱石の『坊っちゃん』は歳を重ねて読むと景色が違って見える!って話

文豪って聞いて誰を思い浮かべるか・・・こんな質問をされたら、人によって答えは様々だろうな。
森鴎外って答える人も居るだろうし、太宰治って言う人も居るだろう、芥川龍之介って言う人も居るはず。川端康成とか志賀直哉を挙げる人も居るだろうな。そもそも文豪ってのはどういう人かと言うと国語辞典によると「文学や文章の大家。きわだってすぐれた文学の作家」の事。
本屋で単独のコーナーを持ってるような現代の人気作家でもなかなか文豪とは呼ばれない狭き門ww

で、うちの学習塾だけど子供たちには毎年読書感想文を書かせてる。本なら何でも良いってわけじゃなくて、世の中で文豪と呼ばれてる人の小説を読んでの感想。子供に薦めておいて自分が読まないんじゃ話にならないので、もちろんオレも読んでるわけだけど・・・。この前、久しぶりに文豪の小説を再読したので、今回はその話を書いてみようか。

この本を読むのは何度目かな。
再読どころか再々々々読ぐらいになるはず。
読んだのは、これ・・・。

坊っちゃん!

夏目漱石の初期の代表作。
発表されたのは明治39年(1906年)だから今から100年以上も前の小説。
よほどのへそ曲がりじゃなない限り漱石の事を文豪と言って否定する人は居ないだろうけど、この『坊っちゃん』は漱石の小説群の中でも一二を争う人気作。
20年ぶりに再読してみたけど、この小説は・・・

色褪せない!

初めて読んだのはたしか小学校の5年生ぐらいだったけど、母親に無理やり読まされたんだった。とりあえず読了はしたものの、正直なところ何が面白いんだかチンプンカンプンww
その後、高校生の時、新人サラリーマン時代、脱サラして商売を始めた頃って具合に折々に読んでる。
この小説は読むたびに景色が違って見える。
つまり、読むたびに・・・

読後感が違う!

小学生の時はチンプンカンプン(読む事を強要されて嫌々だったし)、高校生の頃は坊っちゃんのように生きたいと胸を躍らせ、新人サラリーマンの頃は大人社会の縮図を見たようでちょっと怖くなり・・・って具合。
今回の再読は15年ぶり、はたしてどんな景色を見せてくれるのかワクワクしながら読んだ。

 

今さら『坊っちゃん』のストーリーを説明する必要はないと思うけど、どんな話なのかを念のためwikiから軽く引用しておくと、

主人公は東京の物理学校(現在の東京理科大学の前身)を卒業したばかりの江戸っ子気質で血気盛んで無鉄砲な新任教師。登場する人物の描写が滑稽で、わんぱく坊主のいたずらあり、悪口雑言あり、暴力沙汰あり、痴情のもつれあり、義理人情ありと、他の漱石作品と比べて大衆的であり、漱石の小説の中で最も多くの人に愛読されている作品である。

小学生の課題図書にもなるぐらいだから、非常に読みやすい小説。
松山中学で教鞭をとった漱石自身の体験を下敷きにして書かれたもので、坊っちゃんをはじめ登場人物が実に人間臭く描かれてる。
赤シャツ、山嵐、野だいこ、うらなり・・・有名な登場人物たちも「善人は善人らしく」「嫌なやつは嫌なやつらしく」「腰巾着は腰巾着らしく」実に生き生きと描かれていて面白い。
若い頃は、こんなやつが居るのかぁ!?って思いながら読んだ人物も、20代になると、あ~、こんな奴居るかもなぁ、と思い、30代になると、世の中、こんな奴の方が多いじゃん!と怒ってみたりww
あれこれと人生経験を積むと、漱石が『坊っちゃん』で描いた群像が凄くリアリティを持って浮かんでくる。歳をとればとるほどリアルに感じるから面白い。
明治時代の小説なんで今の感覚だと「?」と思うような言葉、まぁ、いろいろ自主規制に引っかかりそうな言葉もいくつか出てくるけど、それがかえって小説に血を通わせてる。行儀の良い、よそ行きの言葉で語られるよりも物語が躍動するのだ。

高校生の頃に読んだ時は、坊っちゃんのように生きたいって思ったけど、この小説は若い読者の熱を燃え立たせるような要素もある。青春小説と言っても良いかもしれない。
だけど、歳をとって読むとやっぱり景色が違う。
冒頭の有名な書き出し「親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている」、この書き出しに『坊っちゃん』の何ていうか通奏低音というか皮肉が凝縮されてるような気がする。
同級生にからかわれて校舎の2階から飛び下りたり、ナイフで指を切ってみたり、これは「小供の時から損ばかりしている」の例として書かれてるけど、大人になっても実は損ばかりしてるんだよな。
小説のラスト、赤シャツと野だいこをやっつけて意気揚々と船に乗り込んで松山を後にする坊っちゃん。
高校生の時は読了した後で思った・・・

やった!

これぞ勧善懲悪!

坊っちゃん、カッコイイ!

だけどね、この歳で再読すると思うんだよなぁ。
完璧に違う景色が見える。
どんな景色かって・・・

これ、坊っちゃんが勝者なの!?

って疑問が湧く。
直情で辞表を送り付け赤シャツと野だいこを殴ったのはいいけど、坊っちゃんは松山を出ていくハメになるし、赤シャツは以後も同じように松山で教頭を続けるんだろ。
どっちかというと・・・

坊っちゃんは敗者!

勧善懲悪どころか正義の味方は負けてるだろww
「小供の時から損ばかりしている」の冒頭の文章はラストまで一貫したこの小説の通奏低音。
もちろん坊っちゃんのような生き方に憧れるし、若い頃は「理想の人物像」と思ったけど、歳を重ねてくるとわかってくる。
ああいう生き方は凄く大変な事・・・。
今の世の中、

ほとんど無理!ww

ある種、諦念に到達してまうww
漱石が描いたのは勧善懲悪の世界じゃなく、ただでさえ難しくてややこしい人間関係の在りよう、理想と現実、そんなところじゃないかと思ってる。
軽妙な文章、ちょっとコミカルな描写の『坊っちゃん』だけど、その描いてる核心は暗く深いものなのかもしれないな。

いつものバイト君の下書きチェック

バイト君
バイト君

まぁ、『坊っちゃん』がただの勧善懲悪じゃない事はたしか

マサト
マサト

だろ!?
これ、奥が深いわ^^

バイト君
バイト君

今頃、そんな事を言ってるんですかww

マサト
マサト

・・・・・・

バイト君
バイト君

大文豪の書いた傑作小説なのに一筋縄でいくわけないでしょww

マサト
マサト

・・・・・・

 

wikiによると「井上ひさしは、『坊っちゃん』の映像化が、ことごとく失敗に終わっているとする個人的見解を述べ、その理由として、『坊っちゃん』が、徹頭徹尾、文章の面白さにより築かれた物語であるからと主張している」とあるけど、なるほど、これだけ面白い文章を簡単に映像化できるわけないのだ。
たしかに映画でもドラマでも『坊っちゃん』で記憶に残るものはないし、ことごとく失敗したんだろうな。

て言うか、ふと思ったんだけど、現代の人気作家、村上春樹は文豪と言っても良いのか迷う。本を出すたびに超話題になってるし、毎年のようにノーベル賞を獲るんじゃないかと騒がれてるだろ。
う~ん、100年後には文豪と呼ばれてるかもしれないけど、今はまだ文豪候補ってところかもしれないな・・・。

 

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