以前から気になってた本を読んでみた。
2019年の本屋大賞受賞作、瀬尾まいこの『そして、バトンは渡された』。受賞直後はどこの本屋でもハードカバーが平積みされていたし、その時に買って読めば良いんだろうけど、う~ん、オレの場合はよほど好きな作家じゃないとハードカバーで買う事はない。
だって・・・
いずれ文庫になって出てくる!ww
内容が面白いかどうか(オレの好みに合うかどうか)判らないのに、千円以上出してハードカバーを買う気になれないだけ。もちろん瀬尾まいこの名前は知ってるし、彼女の『あと少し、もう少し』も読んでる。とても良い小説なのは間違いないけど、その一冊だけで「ハードカバーを買ってまで読みたい作家」とはならなかった(『あと少し、もう少し』の感想はブクログの本棚に記録)
話題になってる本屋大賞受賞作、文庫になるのを待ってたんだけど予想外に早く文庫になってくくれた。
って事で、今回は瀬尾まいこの『そして、バトンは渡された』を読んでみての感想を簡単に書いてみようか。
この小説が本屋大賞を受賞した時、陸上競技の話なのかと思ったぞ。タイトルには「バトン」って言葉が入ってるし、高評価の多い『あと少し、もう少し』も中学生の陸上競技(リレー)を描いたものだったから・・・。
ところが『そして、バトンは渡された』は陸上競技とは全然関係のない話だった。じゃぁ、どんな話なのかと言うと文庫本の背表紙に書かれてる紹介文から引用すると、
幼い頃に母親を亡くし、父とも海外赴任を機に別れ、継母を選んだ優子。その後も大人の都合に振り回され、高校生の今は二十歳しか離れていない「父」と暮らす。血の繋がらない親の間をリレーされながらも出逢う家族皆に愛情をいっぱい注がれてきた彼女自身が家族を持つ時━。大絶賛の本屋大賞受賞作。
つまりバトンってのは・・・
子育てのバトン!
って事。
これだけだと何だか重苦しいストーリーを想像しがちだけど、はたしてこの小説はどうなのか。
いつも通り、先にオレの感想を書くと・・・
ポエムのような小説!ww
正直に書くと、な~んか違和感の残る小説だった。違和感が残るから良くないのかと言うと、う~ん、答えはNoだ。「間違いなく良い小説だけど、なんか違和感が残る」、そんな小説だった。
違和感の正体、すぐに分かった。
この小説には基本的に「良い人」しか出てこない。高校時代の同級生に二人ほど意地の悪い女子が出てくるけど、それ以外はみな善人。
今の世の中、テレビをつければロクでもないニュースが連日のように流されてるのに(子供の虐待とかほとんど毎日のように報道されてた時もあった)、ここまで善人しか登場しないと、それこそ違和感を感じてしまう(オレだけかもしれないけどww)
その違和感を現実離れしたものとして受け止めるか、理想の人間関係として受け止めるか、そこは読む人によって変わって来るんだろうけど・・・。
オレは『そして、バトンは渡された』をどう受け止めたかというと・・・
ポエム!ww
現実にはなかなかあり得ないような話だけど、だからと言って「つまらない小説」と切り捨てるには内容が良すぎる。
そういう小説って・・・
ポエムみたいなもんだろ!
って思ってるしww
リアリティ有りまくりの悲惨な内容の小説が良いって言ってるんじゃないぞ。
ポエムにはポエムの良さが有ると思ってるし、そこにしか描けない世界もある。ただ、この小説は変なところで中途半端なんだよなぁ。
幼い頃に実の母親を事故で亡くした優子(主人公)、幼稚園に通ってる時に父親が再婚。小学校の入学直前に父親がブラジルに転勤・・・。物語の導入部分だけど、うん、この辺りは在りがちな話だし、違和感はないんだけど・・・。この父親、実の子供と継母を日本に残して単身ブラジルに行ってしまう。う~ん、この辺りで微かに違和感なんだよな。オレが父親なら実の子と再婚相手(継母)を日本に残して行かないし。まっ、この辺は人によって様々だろうけどww
物語が進むにつれて違和感(現実離れした話)はどんどん膨らむ。
細かい事を書くとネタバレになるから書かないけど、ちょっとオレには真似のできないような登場人物たちが次々に出てくるww
これね、普通の善人ばかりを書いてたらつまらない小説に成り下がってるんだろうけど、ここに出てくる善人って魅力的に描かれてるから嫌味がない。
特に現在の父親・森宮さん。東大を出て一流企業に勤めてるエリートサラリーマンなんだけど超絶善人ww
やる事なす事、すべてが娘のため、娘のためならどんな事も厭わないって描写。こんな人が友達に居たら楽しそう、って思わせる人物描写だけど、ふと冷静になって考えてみると・・・
結婚した相手は子持ちの女(この母子も血は繋がってない)。高校生の娘も含めて3人の生活が始まるけど、すぐに結婚相手の女は居なくなってしまう。あげくに離婚届を送り付けられる。残されたのは結婚相手が連れて来た血の繋がらない高校生の娘・・・。
愛情を注げるか!?
オレには無理だな。
現実感の無い話だ。
だけどなぁ、この森宮さん・・・
魅力的!
この人物描写で現実感のない話がポエムに昇華してる。
泣かせるようなセリフもいくつか有るんだけど、例えばこういうやつ・・・
自分の明日と、自分よりたくさんの可能性と未来を含んだ明日が、やってくるんだって。親になるって、未来が二倍以上になることだよって。明日が二つにできるなんて、すごいと思わない?
もちろん凄いことだと思うけど・・・。
血の繋がらない子にこういう感情を持てる人間ばかりだとは限らない。実の子でも虐待とかしてるニュースが溢れてるのに。
う~ん、やっぱり・・・
現実感に乏しい気がするww
本屋大賞ってのは公式HPによると・・・
新刊書の書店(オンライン書店も含みます)で働く書店員の投票で決定するものです。過去一年の間、書店員自身が自分で読んで「面白かった」、「お客様にも薦めたい」、「自分の店で売りたい」と思った本を選び投票します。 また「本屋大賞」は発掘部門も設けます。この「発掘部門」は既刊本市場の活性化を狙ったもので、過去に出版された本のなかで、時代を超えて残る本や、今読み返しても面白いと書店員が思った本を選びます。
って書かれてる。
書かれてるんだけど、ここ最近の本屋大賞はおかしな事前運動も噂されたりしてるし、受賞作には「?」と思うものが有るような無いようなww
まぁ、本屋大賞受賞ともなれば本の売れ行きは約束されたようなもんだし、出版各社・作者の意気込みもわかるけど、変な噂が出る事じたい本屋大賞の質が変わってきてる証拠かもしれないな。
思えば初期の受賞作には記憶に残る名著と呼べるものが多いだろ。『博士の愛した数式』(第1回)、『夜のピクニック』(第2回)、『一瞬の風になれ』(第4回)・・・うん、この辺りの受賞作にはハズレは無かった。
この『そして、バトンは渡された』が数年の後、オレの記憶に残ってるかどうか、う~ん、どうだろうな。
同居人の下書きチェック

これってポエム?

現実感が無いって意味ではポエムだな

けど、出てくる人は良い人ばっかり?

まぁ、善人しか出てこないww

それなら読んでみたいのだわ!^^

・・・・・・

変な人が出てくる話は嫌なのだわ^^

・・・・・・
なるほどな、そういうモノを求めてる人も居るのか。
まぁ、それはそれでOKだけどな。
人が何を読もうが、何を読んで感動しようが・・・
オレはオレ!ww
まっ、ラノベみたいなものを読んで感動するほどオレは純真無垢な心じゃなくなってる事はたしかだ。
それはそれで悲しい事かもしれないww






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