同年代と比べて本はかなり読む方だと自負してるけど、最近は読書スピードが落ちてた。
前回の記事で書いた通り、とてつもなく推進力の無い文庫本上下2巻に手こずって、ここ1カ月はその2冊しか読んでなかった。推進力が無いってのは、「オレが夢中になってページをめくる事が出来ない」って意味だけど、要は面白くない本・・・。
せっかく買った本だから余程の事が無い限り読了するようにはしてるけど、文庫本2冊で1ヶ月とか過去ワースト記録ww
【読書】尊敬するけど近くに居たら疲れそうな偉人/山岡荘八の『吉田松陰』を読んでみた!って話
ようやく読み終えたわけだけど、苦労して自分に合わない本を読んだ後は何か口直しに爽快な気分になるものを読みたい。
いろいろ候補は浮かんできたけど、こういう時はあの作家。
誰かと言うと・・・
安定の伊坂幸太郎!
って事で、今回は伊坂幸太郎の『AX アックス』を読んでみての感想を軽く書いてみようか。
伊坂幸太郎の小説、魅力はいろいろある。
軽妙洒脱な会話、そこに含まれてる「世界とか人生の本質を突くフレーズ」、張り巡らされた伏線を回収する妙技、読み始めると止まらなくなるのが伊坂作品。
まさに推進力のある小説!
で、今回の『AX アックス』はどんな話かというと、恐妻家の殺し屋が主人公。
書き手によっては陳腐な物語になりそうな設定を見事に「心温まる小説」に仕上げてる。
どういう内容なのかを文庫本の背表紙から引用すると、
「兜」は超一流の殺し屋だが、家では妻に頭が上がらない。一人息子の克巳もあきれるほどだ。兜がこの仕事を辞めたい、と考えはじめたのは、克巳が生まれた頃だった。引退に必要な金を稼ぐために仕方なく仕事を続けていたある日、爆弾職人を軽々と始末した兜は、意外な人物から襲撃を受ける。こんな物騒な仕事をしていることは、家族はもちろん、知らない。物語の新たな可能性を切り拓いた、エンタテインメント小説の最高峰!
伊坂幸太郎の作品にはしばしば殺し屋が登場するけど、今作は『グラスホッパー』、『マリアビートル』に続く「殺し屋シリーズ」第三弾(もちろんどこから読んでも面白いし、全部読めばさらに面白い)
今作の中にも『グラスホッパー』や『マリアビートル』に登場する殺し屋が軽く登場するけど、もうね、この殺し屋たちの名前が可愛い。槿(あさがお)だとか檸檬と蜜柑のコンビだとか、妙に愛嬌のある名前の殺し屋。
で、『AX アックス』の主人公は「兜」と呼ばれる一流の殺し屋。
この殺し屋が、家に帰ると女房に頭の上がらない恐妻家・・・。
いつも女房の顔色をうかがいながらビクビク、そんな姿を見て一人息子は苦笑してる。
人殺しなどの犯罪を犯す場面と家庭でビクビクしてる場面、このコントラストが強烈。
で、思ったんだけど、
仕事は凄腕なのに・・・
何で家ではペコペコしてるんだ!?
その答えはラストまで読み進むと解るようになってる。
ネタバレしない程度で一言で書くと、
家族への愛!
ライトな筆致でちょっとコメディ的な面も見せながら、泣かせ所は押さえていてオレも目頭が軽くジーンとなるラストだった。
伊坂作品といえば、作中に散りばめられた伏線も楽しみの一つ。
この伏線が回収されていく様は伊坂作品の真骨頂。
ラストに向けて数々の伏線が回収されていく様はもはや快感。
最後になって、あ~、あれも伏線だったのか!って思う事もしばしばだけど、『AX アックス』でもいたるところに伏線が張られてる。
中でもオレがジ~ンときたのは「キッズパーク開園」と書かれた割引券。最後の1ページになって伏線が回収されるんだけど、う~ん、主人公「兜」の心情を思うと・・・
ますます泣ける!(涙)
今回は、気になった言葉、オレが勝手に「名言認定」した言葉をいくつか紹介しておこうか。
『AX アックス』の中でも一際輝きを放つ言葉だと思ってる。
頭の大きな人の絵があり、「おとうさん、がんばってくれてありがとう」とかろうじて読める字が記されていた(文庫本158頁)
「昔から、おふくろがよく言うじゃないか。『やれるだけのことはやりなさい。それで駄目ならしょうがないんだから』って」(文庫本177頁)
「いいお父さんになれそうだけどね」(文庫本364頁)
恐妻家の殺し屋が、夫として、父として生きた物語。
うん、今回は良いものを読んだ!
いつものバイト君の下書きチェック

べた褒めですねww

さすが伊坂幸太郎だわ
コミカルな筆致なのに泣かせ所は押さえてる

家族愛を描いた小説?

ちゃんと殺し屋が「仕事」をする場面もあるし、シリアスな場面もあるけど、基本は家族愛だな

で、ホントに泣いたんですか?

ジワリと涙が出た^^

・・・・・・

ぁんだよ?

子供も居ないくせにww

・・・・・・

・・・・・・

居ないからこそ、泣けるんだ!

・・・・・・
家族愛を描いた伊坂作品というと『重力ピエロ』、『オー!ファーザー』が思い浮かぶけど、どれも傑作。
ちなみに本書のタイトル『AX アックス』とはAX=斧の事。
本書の中にも「蟷螂の斧(とうろうのおの)」という言葉が出てくるけど、これは「力のない者が、自分の実力もかえりみずに強い者に立ち向かうことのたとえ」。
読み終わって思うのは、たしかに内容に沿った上手いタイトルって事。






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