10年近く積読の山の中に埋もれていた本を読んだ。
友達に勧められて買ってみたものの、他に読みたい本が何冊もあったし、次から次に新しい本を買ってくるし、この本を読まないうちに時間だけが経過・・・。
先日、積読の山を整理してる時に底の方から出てきたわけだけど、さすがに10年も放置したままでは本に対して申し訳ない。
そんな訳でさだまさしの『アントキノイノチ』を手に取ってみた。
さだまさしの曲はよく聴くけど、彼の小説を読むのは初めて。
オレが中学生の頃には既に日本の音楽シーンで活躍してたさだまさし、彼の音楽を聴いてると周りから「ネクラ」って言われてた時代。
ネクラだろうが何だろうが、良いモノは良いんで周りの声なんか気にせずにLPレコードを買ってたけど、さだまさしの曲の何が良いかって・・・
彼の曲には・・・
物語がある!
惚れた腫れたを連呼するような曲も悪くは無いけど、さだまさしの曲には日本人の心に沁みる物語があるのが良い。『案山子』とか『主人公』とか『親父の一番長い日』の描く物語はオレの琴線に触れまくりww
そんなさだまさしが書いた小説をようやく読んでみた。
って事で、今回はさだまさしの小説『アントキノイノチ』を読んでみての感想を軽く書いてみようか。
小説の主人公は遺品整理会社で働く21歳の杏平。
この主人公の成長物語とも言える小説。
で、どんな小説なのか、この小説の描く世界を端的に言うなら・・・
重い!
内容はすこぶる重いんだけど、文章はラノベのようなライトな文章なのでスラスラ読めてしまうのが不思議な感じ。
胸くその悪くなるような人間も出てくるし、お花畑的な明るい小説じゃないけど、未来に希望を抱かせるようなラストは暖かさもあってさだまさしの曲と共通するような気がする。
ラノベのような文章で重い内容(ラストは希望がある)ってのが、この『アントキノイノチ』の特徴。
どういうストーリーなのかを文庫本の背表紙から引用すると、
杏平はある同級生の「悪意」をきっかけに二度、その男を殺しかけ、高校を中退して以来、他人とうまく関われなくなっていた。遺品整理会社の見習いとなった彼の心は、凄惨な現場でも誠実に汗を流す会社の先輩達や同い年の明るいゆきちゃんと過ごすことで、ほぐれてゆく。けれど、ある日ゆきちゃんの壮絶な過去を知り‥‥。「命」の意味を問う感動長篇。
たしかに感動作なのは間違いない。
ズシンと心に響くというよりも、じわじわと効いてくる感動作。
この小説は主人公の高校生時代と現在を交互に描いてるんだけど、この高校生時代の同級生が超ムカつく。
程度の差はあるけど、こういう胸くその悪い人間ってたしかに居るww
で、杏平はその同級生を殺しかける・・・。
まぁ、殺す前に自分の心が壊れてしまって高校を辞める事になるんだけど、こういう感情って誰でも抱く事があるんじゃないかと、かなり主人公に感情移入。オレなんかも「あいつ殺してやりたい!」って存在は居たし(今でもww)
心を壊してしまった主人公が働き始めたのは遺品の整理を行う会社。
孤独死なんかで亡くなった人の部屋の遺品を整理(要は掃除)する仕事だけど、こちらの描写もなかなか強烈。事件や事故、自殺なんかで亡くなった人の部屋の後始末をする様子は、実際にさだまさしが遺品整理会社に取材して書いたというだけあって妙にリアリティを感じさせる。
ただ、凄惨な描写だけを書いてるんじゃなくて、それぞれの現場で「ドラマ」を描いてるところがさだまさしの技。若い頃に子供を捨てた一人暮らしの老女性の部屋から出てきた「子供に宛てた手紙」なんかは涙腺が崩壊しそうになった。
こういう市井の人にも温かい目を向けるのは、さだまさしの曲に通じるものがあるな。
高校の同級生に胸くその悪い奴が出てくるけど、その他の登場人物は善い人ばかり(この辺りは若干現実離れしてて好みが分かれるかも)
遺品整理会社の社長や先輩の佐相さんも凄く良い味をだしてるけど、中でも一際光るのが主人公のお父さん。
息子に向かって何気に心に響く事を言う。
このお父さん、いろいろ深い事を言うんだけど、ふとした場面でさらりと言うから危うく読み飛ばしそうになるww
この小説のタイトル『アントキノイノチ』って、なんだかプロレスラーを想起させるようなふざけたタイトルだと思ってた(それもなかなか読まなかった理由の一つww)
いやぁ、このふざけたようなタイトルにも立派な意味が込められてた。
さだまさしの曲を聴かない人にもこの小説はオススメ。
凄く重い話だけど軽い文体なので読みやすいし、暖かな気持ちになれる読後感も秀逸。
いつものバイト君の下書きチェック

さだまさしって本も出してるんですね~

小説の他にエッセイも出してるぞ
この本しか読んだ事ないけど

積読で10年は長いww

たしかにな
この本はもっと早く読めば良かったわ
お前も読め!

・・・・・・
何で強制するんですか!

マンガばっかり読んでるからだ^^

・・・・・・
さだまさしの曲には物語があるって書いたけど、小説にも暖かな血が流れてた。
今夜はさだまさしを聴きまくりたい気分になったぞ。






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