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【映画】何とも言えない余韻が心地よい『善き人のためのソナタ』/東独の監視社会を描いた秀作!って話

amazonプライム・ビデオを物色してたら以前から気になってた映画が配信されてた。
『善き人のためのソナタ』というアカデミー外国語映画賞を受賞したドイツ映画。
ネットでのレビューは高評価が並んでるし、ぜひとも観たいと思ってたんだけどやっと観る事が出来た。

って事で、今回は『善き人のためのソナタ』を観ての感想を軽く書いてみようか。

 

 

今の10代・20代の人はベルリンの壁と聞いても特に感じるものは無いかもしれないけど、40代以上の人ならベルリンの壁と聞けば東西冷戦の象徴と受け止める人も多いだろうな。
ベルリンの壁が崩壊したのは1989年だから今から30年以上前の出来事だけど、この映画の舞台は壁が崩壊する前の東ベルリン。
どういう映画なのか、amazonプライム・ビデオの紹介文から引用しておくと、

1984年の東ベルリン。国家保安省(シュタージ)の局員ヴィースラー大尉は国家に忠誠を誓っていた。ある日彼は、反体制の疑いのある劇作家ドライマンとその同棲相手の舞台女優クリスタを監視するよう命じられる。さっそくドライマンのアパートには盗聴器が仕掛けられ、ヴィースラーは徹底した監視を開始する。しかし、聴こえてくる彼らの世界にヴィースラーは次第に共鳴していく。そして、ドライマンが弾いたピアノソナタを耳にした時、ヴィースラーの心は激しく揺さぶられる。

というもの。
主人公は東ドイツの秘密警察シュタージの局員。反体制派の劇作家の部屋を盗聴するうちに彼の心に少しずつ変化が・・・ってストーリー展開。
この映画、冒頭のセリフから惹きこまれる。
これ・・・。

1984年、東ベルリン。
東ドイツ国民はシュタージ(国家保安省)の監視下にあった。
10万人の協力者と20万人の密告者が、全てを知ろうとする独裁政権を支えていた。

オーウェルの『一九八四年』とかブラッドベリの『華氏451度』のような小説の中の監視社会じゃなくて、つい30年ちょっと前まで現実に存在してた社会を描いてるんだから凄い。
ヒトラーやナチス、ユダヤ人のホロコーストを描いた映画は山ほどあるけど、冷戦時代の東ドイツを描いた映画ってあまり無いように思う(『グッバイ、レーニン!』は東西ドイツ統合後の世界を描いてるので時代的には近いけど)

 

この映画の見どころは国家に忠実でゴリゴリの共産主義者である主人公・ヴィースラー大尉の心の揺れ。
冷酷で無慈悲な取り調べをする事も厭わない主人公が、反体制派の劇作家の部屋を盗聴してるうちに自覚のないままに反体制派をかばうような行動をとってしまう様が人間臭い。

「48時間眠らせず尋問を繰り返すのだ。真実を語る者は表現を変えて答えるが、嘘をつく者は同じ言葉にすがるのでわかる」

こんな事を言ってた主人公の心に変化をもたらしたものは、盗聴器ごしに聴く「善き人のためのソナタ」
反体制派の劇作家が弾くピアノを聴いてから。
ネタバレになるので細かな内容は書けないけど、当時の抑圧された東ドイツの社会を暗いタッチで描いていてちょっとした映像美にもなってる。

 

ヴィースラー大尉に「国家への裏切り行為」をさせたのは心の揺れだけど、立身出世しか考えてない上司、自分の欲望のままに大衆を束縛する政治家、それらもヴィースラー大尉の心を揺らした一因。
ラスト近く、反体制派の劇作家の部屋に突入するシュタージ。
ここでは予想通りヴィースラー大尉の「行為」によって目的のモノは見つけられない。
ただ、凄いのは・・・この裏切り行為も上司にはすべてお見通しだったって事。

「お前は一生、地下室で手紙の開封仕事だ」

4年7カ月後、ヴィースラー大尉は左遷され地下室で手紙の開封作業をしてる。
そこへ流れて来たニュースはベルリンの壁が崩壊したというもの。
ドイツ分断は終わった・・・。

2年後・・・。
反体制派だった劇作家は冷戦時代の東ドイツの大臣から自分が徹底的に監視されていた事を聞く。
なぜ逮捕も投獄もされなかったのか・・・。
資料館で当時のファイルを調べて判った事は、HGW XX7という暗号名のシュタージ局員が虚偽の報告書で自分を守ってくれていたという事実。
ヴィースラー大尉を探し出した劇作家は郵便配達をする彼を見ても声をかける事はない。(ここで声なんかかけてお涙頂戴モノにしたら映画は台無しww)

 

さらに2年後・・・。
ヴィースラーは町の本屋でかつて自分が監視してた劇作家の新刊を手に取る。
その本のタイトルは『善き人のためのソナタ』
ページを開くと・・・

HGW XX7に感謝をこめて

と献辞が書かれてる!
これはちょっとウルッときてしまったな。
ただ、ここで終わらないのがこの映画の秀逸な部分。
劇作家の書いた新刊をレジへ持って行くヴィースラー。
レジの店員が気を利かせて尋ねる。

ギフト用に包装しますか?

ヴィースラーの答えは・・・

いや、私のための本だ

凄いエンディングだった。
派手なドンパチで終わる映画も良いけど、こんなに粋でオシャレな終わり方も凄く良い。
当時の抑圧された東ドイツ、国の体制に反抗した劇作家、体制に翻弄されたヴィースラー、カチッとした映像美と洒落たエンディングで何とも言えない心地よい余韻の残る映画。

 

 

いつものバイト君の下書きチェック

バイト君
バイト君

ベルリンの壁?

マサト
マサト

ベルリンの壁も知らんのか!?

バイト君
バイト君

教科書では習いました^^

マサト
マサト

あれが崩された時は世界中が大騒ぎになったんだわ

バイト君
バイト君

東ドイツって監視社会だったんですか?

マサト
マサト

まぁ、そうなんだろうな
他の映画でもそんな風に描かれてるし

バイト君
バイト君

日本に生まれて良かった^^

マサト
マサト

・・・・・・

 

今回は期待通りの映画で大満足した。
こんな余韻に浸れる映画なら一日中でも観ていたいww
この映画のドイツ語タイトルは『Das Leben der Anderen』(他人の生活)だけど、これは邦題の方が良いという珍しいパターン。
てか、amazonプライム・ビデオではこの映画は「ホラー」にカテゴライズされてたけど、明らかに間違いだろ。

ホラーどころか人間ドラマ!

さて、今度は何を観ようか・・・。

 

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